第68話 邑楽帝国
砂漠の戦場を生き延びた変美が、次なる活動拠点に選んだのは、宇都宮でも東京でもなく、群馬県東端の要衝、**「
「……宇都宮は少し騒がしくなりすぎたわ。ここ邑楽の、**『広大な畑が放つ土の匂い』と、『工業団地の油の匂い』**が混ざり合う境界線……。ここなら、CIAも新田の残党も、私の鼻を簡単には撒けない」
変美は古い邸宅を改造し、**「匂坂特命捜査事務所・邑楽ベース」**を設立。そこで彼女を支えるのは、かつて各地の事件で「匂い」の才能を見出し、自ら引き抜いた5人の精鋭たちだった。
■ 邑楽ベース:五人の「指先」たち
変美は、最深部の執務室でドーナツクッションに深く腰掛け(座薬のケアは欠かさない)、部下たちに命を下す。
■ 始動:邑楽の「見えない侵略」
「……山田、報告を」
「所長。邑楽の農地に建設予定の巨大物流センター、あそこから漂う**『新築の木材の匂い』の裏に、『強烈な洗浄剤の匂い』**が混じっています」
変美は鋭く目を細めた。
「……わかるわ。それは、かつて私が潜入した悪徳食品工場で嗅いだ、**『消費期限を改ざんするための薬剤』**の匂いね。……火村、風見。今夜、現地を叩くわよ」
■ 逆襲:邑楽の闇を嗅ぎ取れ
夜、邑楽の静かな田園地帯に、黒塗りのバンが停まる。
「……雲野、風向きは?」
「北北西。あと3分で、**『近隣の養豚場からの匂い』**が現場を包みます。突入のチャンスです」
変美は部下たちを引き連れ、建設現場へと忍び込んだ。
そこには、反抗期をこじらせ、家を出たはずの息子・慎の姿があった。彼は、新田一族の残党と手を組み、邑楽を拠点に「世界中の毒物を流通させるハブ」を作ろうとしていたのだ。
「……慎。あなたの体から漂う**『母親への反抗心という酸っぱい匂い』。……そして、その奥にある『本当は愛されたいという、泣き出しそうな金木犀の匂い』**……。母さんの鼻は、騙せないわよ」
慎の手元にあるバズーカが、変美を狙う。しかし、海崎と火村が瞬時にその射線を逸らした。
■ エピローグ:邑楽に降る「浄化の雨」
事件は未遂に終わり、慎は再び闇へと消えた。
変美は、邑楽の夜空を見上げ、スマホの「ドラクエウォーク」の画面を閉じた。
「……マサも武尊もいなくなったけれど。今の私には、この5人の『鼻』がある。……慎、いつかあなたの『本当の匂い』を取り戻してあげるわ。……たとえ、この邑楽の地が火の海になってもね」
変美は、傷跡が疼く鳩尾を押さえ、邑楽ベースへと戻っていった。
邑楽を拠点に、変美の「帝国」が築かれ始めました。
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