第61話 唐桶刑事飛躍!
兄の遺体と新田への決別を胸に、変美は日光へと向かっていた。しかし、いろは坂の深い霧の中で、彼女を待ち受けていたのは「父の真実」ではなく、制御を失った暴力の連鎖だった。
■ 蹂躙:いろは坂の深い闇
日光の峻険な峠道を登る変美の前に、夜間演習中を装った自衛隊車両が立ち塞がった。
「……おかしい。自衛官の制服を着ているけれど、漂ってくるのは**『規律ある硝煙の匂い』じゃない。これは……『理性を焼き切った破壊衝動の、焦げ付いた臭い』**!」
車から降りてきた数人の男たちは、極秘裏にビッグ・ディアマンテの残党と結託していた「はぐれ自衛官」のグループだった。
「変美……お前の鼻が、俺たちの裏金の匂いを嗅ぎつけたらしいな」
多勢に無勢、変美は逃げ場のないいろは坂のガードレール際で、男たちに組み伏せられた。冷たいアスファルトの上で、彼女の誇りは踏みにじられる。
「……やめて……! あなたたちの体、**『金のために魂を売った腐敗した鉄の匂い』**がして反吐が出るわ!」
抵抗も虚しく、卑劣な暴力によって変美の意識は遠のいていく。絶望の底で彼女が嗅いだのは、自分の流す血の匂いと、降り始めた雪の無機質な冷たさだけだった。
■ 救世主:唐桶刑事の執念
男たちが変美にさらなる追い打ちをかけようとしたその時、霧の向こうから一台の覆面パトカーが猛スピードで突っ込んできた。
「そこまでだ、この人間のクズども!」
現れたのは、宇都宮中央署の敏腕にして、変美の父の代からの付き合いである**
彼は手に持った拳銃を迷いなく空へ放ち、その鋭い眼光だけで男たちの動きを止めた。
「唐桶……刑事……」
「変美、よく耐えた。あとは俺に任せろ。お前の鼻がなくても、この悪臭は俺の刑事の勘でも十分すぎるほど嗅ぎ取れる」
唐桶は、鍛え上げられた格闘術で自衛官たちを次々と制圧し、手錠をかけていく。彼は倒れた変美に自分のコートをかけ、優しく抱き起こした。
■ 真実の断片:唐桶の告白
「……変美。お前が追っている父親の失踪……。実は、俺もずっと追っていた。あの男たちが探していたのは、日光の地下に眠る『新田一族が隠した化学兵器のデータ』だ」
唐桶の服からは、『何年も吸い続けている安タバコ』と、『現場を歩き回った泥の匂い』、そして……変美を安心させる**『正義の熱い体温の匂い』**がした。
「兄さんが死んだのは、そのデータの鍵を握っていたからだ。変美、これ以上は一人で行くな。俺が……俺が、お前の鼻の代わりになってやる」
■ エピローグ:氷結する決意
唐桶の腕の中で、変美は震えながらもスマホを握りしめた。
ドラクエウォークの画面には、日光東照宮の「奥社」を指し示す強力な光が放たれている。
「……唐桶さん。私の鼻は、まだ死んでいないわ。……犯された体も、傷ついた心も……この**『父を殺した犯人の、冷徹なインクの匂い』**を嗅ぎ分けるまでは、絶対に屈しない」
雪は激しさを増し、すべてを白く染めていく。変美と唐桶の二人は、凍てつく闇を切り裂き、ついに父が待つ(あるいは父の亡霊が彷徨う)日光の最深部へと足を踏み入れた。
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