第59話 まずい飯

 エリート・ヘドロ・アカデミーの闇をスマホ一台で葬り去った変美だったが、休む間もなく次の依頼が舞い込む。今度の潜入先は、宇都宮郊外の工業団地にひっそりと佇む食品加工会社**「デリシャス・カオス食品」**。

​ 表向きは「地産地消の安心お惣菜」を謳っているが、その裏では、派遣労働者を使い捨てにしながら、とんでもない「禁じ手」を使っているという。

 ■ 潜入:防護服の監獄

 ​変美は大手派遣会社『スタッフ・セントラル』の新人として工場に送り込まれた。

 白い防護服、マスク、キャップに身を包み、目元しか出さない姿。

​「……最悪。この防護服の中、**『自分の吐息と、洗剤のきつすぎる塩素の匂い』**が充満して、逃げ場がないわ」

 ​工場内に一歩足を踏み入れた瞬間、変美の鼻が異常を検知した。

 ベルトコンベアから流れてくるのは、特売用のハンバーグ。しかし、そこから漂うのは肉の香ばしさではなく、**「鼻の奥を刺すようなアンモニア臭」と、それを強引に上書きしようとする「過剰な人工香料の甘い匂い」**だった。

 ■ 異常:賞味期限の「錬金術」

 ​変美の配属先は、出荷直前の商品をパック詰めする最終ライン。

 そこで彼女は、工場長の**「ドブネズミのような濁った目をした男」**が、古いラベルを剥がし、新しい日付のラベルを貼り直すよう指示している現場を目撃する。

​「……信じられない。この肉、**『一週間前に死んだはずの食材が、化学の力で蘇生させられたようなゾンビの臭い』**がするわ」

 ​変美は作業の手を止めず、ポケットに忍ばせたスマホで位置情報ゲームを開くフリをした。

「……マサ、見て。ここで『ドラクエウォーク』の回復スポットに触れるフリをして、ラベル貼り替えの決定的瞬間を録画するわ。……ついでに、この工場の隅にある廃棄物置き場……そこから漂う**『劇薬指定の防腐剤』**の匂い、これも証拠になる」

 ■ 激突:異物混入の真実

​ 休憩時間、変美は給湯室で工場長と鉢合わせた。

「新入り、お前、さっきからスマホばかりいじって何してる? ……お前、いい匂いがするな。この工場の消毒液の匂いとは違う……」

​ 工場長が卑猥な笑みを浮かべて近づいてくる。彼の口からは、**「腐った卵と、安物の栄養ドリンクが混ざったような悪臭」**が放たれた。

​「……触らないで。あなたのその手、**『産地偽装した書類をシュレッダーにかけた時の紙の粉』の匂いが染み付いているわ。……このハンバーグ、肉じゃないわね? 期限切れのパン粉と、大量の添加物、それに……『家畜の餌にするはずのクズ肉』**を混ぜて作っているでしょう」

​ 工場長の顔が引きつる。

「……何だと? 派遣の分際で!」


 ​■ 逆襲:ポケモンを追うフリをして

​ 工場長が変美の胸ぐらを掴もうとした瞬間、彼女は鮮やかに身を翻した。

「……あら、残念。今ここに、**『レアポケモン』**が出現したの。捕まえるのは……あなたたちの罪よ!」

​ 変美がスマホの送信ボタンを押すと同時に、工場のゲートが蹴破られた。待機していた武尊と、通報を受けた保健所の職員たちが一斉に突入する。

​「……武尊、遅かったわね。この工場の空気、私の鼻の寿命を3年は縮めたわ」

 ■ エピローグ:本物の「食」を求めて

​ 工場は即日操業停止。宇都宮のスーパーから、偽りのハンバーグが消えた。

 変美は工場の外で防護服を脱ぎ捨て、大きく深呼吸した。

​「……マサ。帰りに本物の餃子を食べに行きましょう。ニンニクとニラの、**『正義のパンチが効いた匂い』**を嗅がないと、やってられないわ」

​ 武尊が差し出した水を飲み干すと、変美のスマホが震えた。

 ドラクエウォークの画面に表示された新しい目的地。それは、父が最後に立ち寄ったとされる、**「日光の湯波ゆば職人の家」**を示していた。

​ 食品工場の闇を暴き、父の謎がいよいよ日光へ。

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