第58話 エリート・ヘドロ・アカデミー事件

 鉄二という「最悪の匂い」を人生から排除した変美。しかし、シングルマザーとしての生活費と、父の謎を追うための調査費用を稼ぐため、彼女は次なる潜入捜査を引き受けた。

​ 今回の舞台は、宇都宮駅東口に拠点を構える、合格実績を水増ししていると噂の進学塾**「エリート・ヘドロ・アカデミー」**。

 ■ 潜入:炎天下と極寒のポスティング地獄

​ 変美に与えられた役割は、新規生徒獲得のための**「訪問販売セールスマン」**。

 塾の裏帳簿が保管されている金庫の場所を特定するため、彼女は「営業成績トップ」を狙うフリをして、宇都宮の街を駆けずり回ることになった。

​「……何よ、この異常気象。アスファルトが溶けるような**『焼けたゴムの匂い』がしたかと思えば、冷房の効きすぎたビルの中は『氷河期のような冷たい湿気』**……。鼻が物理的に破壊されそうよ」

​ スーツ姿でパンフレットの束を抱え、高級住宅街から団地までを歩き倒す。あまりの過酷さに、黄金の座薬で完治したはずの「聖域」が再び疼き始める予感がした。

 ■ 逃避:スマホの中に広がる「癒やしの匂い」

​ 心身ともに限界を迎えた変美が、唯一の気を紛らわす手段としたのが、位置情報ゲームだった。

​「……ふぅ。このままじゃ怒りで周囲の家を全部嗅ぎ回ってしまいそう。……マサ、今のうちに**『ポケモンGO』のレイドバトルを。……あら、このジムの周り、『課金に命をかける大人たちの執着の匂い』**が充満しているわね」

​ 彼女は営業の合間に、宇都宮二荒山神社周辺で**「ドラクエウォーク」を起動する。

「……メガモンスター出現。今の私の怒りを、このゴーレムに叩きつけてやる。……このゲームから漂う、無機質な『電子の波と達成感の匂い』**。これだけが、今の私の精神安定剤よ」

​ スマホ画面の中でスライムをなぎ倒し、希少なポケモンを捕獲することで、変美はかろうじて「人間としての正気」を保っていた。

 ■ 核心:塾長の部屋から漂う「腐ったカンニング」

​ 営業成績を爆上げし、ついに塾の深部への立ち入りを許された変美。

 塾長室の前に立った瞬間、彼女の鼻が「真実」を捉えた。

​「……嗅ぎつけたわ。塾長が愛用している高級芳香剤の裏に隠された、**『大量の修正液』と、『他校の模試試験の問題用紙のインク』**の匂い。……合格実績を偽造するために、入試問題を事前に盗み出しているわね」

​ さらに、部屋の隅からは**「新田一族が使う、あの特殊な葉巻」**の香りが微かに漂っていた。

​「……新田、あなた。私に黙って、また裏で糸を引いているんじゃないでしょうね?」

 ■ エピローグ:スマホを武器に

​ 変美は、ポケモンを捕まえるフリをしながら、スマホのカメラで偽造書類の数々を激写した。

「……証拠は掴んだわ。あとはこの『不正の匂い』を、宇都宮中の教育委員会にバラまくだけ」

​ 塾を飛び出した変美は、冷えた缶コーヒーで火照った顔を冷やしながら、ドラクエウォークの画面を見つめた。

「……さて、武尊。明日は息子を連れて、この公園に『ルギア』を捕まえに行きましょうか。……もちろん、仕事抜きでね」

​ 塾の不正を暴き、次なるステップへ。

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