第49話 年始はネットプライムで龍が如く(竹内涼真版)

 ビッグ・ディアマンテの残骸を巡るハイエナたちの宴は、変美の嗅覚によって一掃された。しかし、次なる潜入先は、札束の匂いとは程遠い、淀んだ悪意と体臭が充満する**「絶望の印刷工場」**だった。

 ■ 新たな潜入:インクと怒号の監獄

​ 宇都宮郊外に佇む、古びた町工場「楠木印刷」。そこは、過酷な労働環境と、社長の息子である**楠木くすのき**による横暴が支配する、現代の奴隷船だった。

 変美は、経営不振の裏で囁かれる「違法な裏帳簿の印刷」の証拠を掴むため、派遣作業員として潜入した。

​ 

 現場を支配する「悪臭」

​「おい! もたもたしてんじゃねえぞ、この増えすぎた粗大ゴミが!」

 工場内に響き渡る怒鳴り声。変美の鼻を突いたのは、安っぽい溶剤の匂い、そして——。

「……うっ。胃が腐り落ちたような、強烈な**『不潔な口臭』。それに混じる、部下をいたぶることで分泌される『嗜虐的な汗の臭い』**……」

​ 現れたのは、脂ぎった顔をした楠木だった。彼は作業の手を止めた変美を、品定めするように執拗に眺め回した。

 ■ 蹂躙:楠木の牙

​「お前、新入りか? 派遣の分際で、いい体してんじゃねえか……」

 楠木が距離を詰める。彼が口を開くたび、ドブ川のような悪臭が変美の顔を直撃する。

​「ちょっと、近すぎ……」

「黙れ! ここじゃ俺がルールなんだよ!」

 楠木は威圧的に変美を機械の影へと追い詰め、逃げ場を奪った。そして、あざ笑いながらその卑劣な手を伸ばす。

​「……っ!」

 強引に掴まれたのは、胸元。薄い作業服越しに伝わる、粘着質で暴力的な感触。

「へへっ、いい匂いがするなぁ。この工場のインクの臭いより、お前の方がよっぽど高く売れそうだ」

​ 変美の瞳が、怒りで氷のように冷たく研ぎ澄まされる。至近距離で、彼女の鼻は「真実」を捉えた。

■ 逆襲の宣告:口臭の裏に隠された「毒」

​「……ねえ、楠木さん。あなたのその吐き気のする口臭、ただの不摂生じゃないわね」

 変美は、揉まれた胸の不快感に耐えながら、静かに、だが致命的なトーンで告げた。

​「……あ? 何を言ってやがる」

「あなたの歯茎から漂う、独特の金属臭。それと、指先に染み付いた特殊なインクの成分……。あなた、会社に内緒で、劇物指定されている**『違法な洗浄剤』**を裏で横流しして、ドラッグの精製グループに卸しているでしょう?」

​ 楠木の顔から血の気が引く。

​「この工場の経営難を装って、備品を横流ししている証拠……。その口臭こそが、あなたが違法薬剤を日常的に扱っている動かぬ証拠よ」

 ■ 結末:掃き溜めの掃除

​ 工場の外に待機していた武尊が、変美の合図とともに突入する。

「変美さん、無事か!」

「ええ……。でも、早くこの男を連れて行って。この匂い、一秒でも早く記憶から消し去りたいわ」

​ 楠木は、自分の悪事が「口の臭い」から露見したことが信じられない様子で、武尊によって床に叩き伏せられた。

 エピローグ:清算の雨

​ 工場の外に出ると、宇都宮の夜空から冷たい雨が降り始めていた。

「……胸の感触、消毒しても消えない気がするわ。最悪の現場だったわね」

 変美は、借りていた作業服を脱ぎ捨て、武尊から渡された清潔なタオルで首筋を拭った。

​「変美さん、次はもっとマシな仕事を選びましょう。例えば……」

「そうね。でも、次はどんなに汚い場所でもいいわ。**『父さんの秘密』**に繋がる匂いがする場所なら」

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