第48話 強敵、新田登場!

 ビッグ・ディアマンテの崩壊後、その巨大な利権を巡って、宇都宮と東京の経済界は「死肉を喰らうハイエナ」たちの戦場と化していた。

 ■ 再建という名の争奪戦

​「……匂うわ。再建支援なんて綺麗な言葉の裏で、札束で相手の首を絞め合うような、強欲な**『インクと札束の匂い』**が」

​ 変美は、高級ホテルのスイートルームに呼び出されていた。

 ビッグ・ディアマンテの残骸から切り離された、超優良資産――大手クレジット会社の株式。その取得を巡り、一次入札を勝ち抜いた面々が、最終的な二次入札に向けて牙を研いでいた。

​「所長、今回のスポンサー候補、異様ですよ。大手消費者金融が、クレジット会社の顧客データを狙って本気で買収に動いています。ライバルグループも対抗馬として名乗りを上げ、まさに争奪戦です」

 ​マサが資料を広げる。その時、部屋の奥から一人の男が姿を現した。


​■ 依頼人:中居正広似の男の狂気

​「……お待たせ。君が、あの有名な『鼻利き』の探偵さん?」

​ 現れた依頼人の新田厚にったあつしは、人気タレントの中居正広に瓜二つの顔をしていた。端正な顔立ちに、茶目っ気のある笑顔。だが、その瞳だけがガラス玉のように冷たく笑っていない。

​「僕はね、この買収を絶対に成功させたいんだ。でも、僕のグループの中に**『裏切り者』**がいる。情報をライバルに流しているネズミを、その鼻で嗅ぎ分けてほしい」

​ 変美は、新田が近づいた瞬間、背筋に冷たいものが走った。

「……あなたの匂い、不思議ね。高級な石鹸の奥に、**『獲物を追い詰める前の猛獣の体臭』**が混ざっている」

■ 豹変:襲いかかる偽りのアイドル

​「……鋭いね。でも、鋭すぎる鼻は、時に邪魔なんだよ!」

​ 新田が豹変した。爽やかな笑顔が消え、格闘家の動きで変美の喉元へ手を伸ばす!

「ぐっ……!」

 変美は瞬時に身を翻したが、新田は中居正広のような軽妙なステップで距離を詰め、彼女をソファへと押し倒した。

​「裏切り者を見つけるのは君の仕事だ。でも、君が僕を裏切らないという保証が欲しい……。ねえ、探偵さん、僕に『服従の匂い』を嗅がせてよ」

​「……離しなさい。あなたの指先、**『株式を操作するために握りつぶした他人の人生』**の苦い匂いがするわ!」

 ■ 逆襲の「鼻」:裏切り者の正体

​ 武尊がドアを蹴破って突入しようとしたが、変美は片手でそれを制した。彼女は新田の耳元で、静かに囁いた。

​「……探す必要なんてないわ。裏切り者は、あなた自身よ」

​ 新田の動きが止まる。

「……何だって?」

​「あなたは、消費者金融のスポンサーとして参入するフリをして、実はライバルグループと裏で繋がっている。このクレジット会社をわざと共倒れさせ、休眠状態の**『架空の株式』を市場に流して、自分だけが利益を得る計画でしょう?

 あなたの襟元から漂う『ライバルグループが使う、特注の葉巻』**の残り香……。それがすべての証拠よ」

 ■ エピローグ:争奪戦の終焉

​ 新田は力なく笑い、変美から離れた。

「……参ったな。中居君みたいな好感度で乗り切れると思ったんだけど。……君の鼻には、演技も、偽装も、買収工作も通用しないってわけだ」

​ 亮と明が男を拘束し、二次入札の会場へ連行していく。

 買収争奪戦は、主役の自爆という形で幕を閉じた。

​「……マサ。結局、金が動く場所には、いつも同じ汚物(ヘドロ)の匂いがするわね」

​ 変美は乱れた襟を直し、武尊が差し出した水を飲み干した。

「……武尊くん。父さんの貸金庫を開けるのは、もう少し『綺麗な空気』の場所に行き着いてからにしましょうか」

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