第16話 ギャンブル依存症の女
鉄心が放った剛速球の余韻が残る中、その背後から、ボロボロの部活ジャージを羽織り、焦点の定まらない目で虚空を見つめる一人の少女が現れた。
■ 迷い込めるマネージャー:沢村 サキ(通称:ギャンブラー・サキ)
所属: 大谷石切高校野球部・マネージャー
特徴: 清楚な美少女に見えるが、重度のギャンブル依存症。部費を握りしめ、宇都宮から県境を越えて群馬の競艇場へ遠征を繰り返している。
現在の匂い: 爽やかな部活の匂いは皆無。代わりに**「群馬の乾いた赤城おろし」と、「パチンコ屋の濃厚な煙草の副流煙」、そして「桐生競艇のハズレ舟券」**のインクの匂いを纏っている。
「鉄心……あんた、そんなところで石投げてないで、ちょっと一万貸しなさいよ。今日の桐生(競艇)の12レース、絶対『1-2-3』で決まりだったのよ……風を読み間違えたわ……」
サキは納豆の海に膝をつき、力なく笑った。彼女の指先は、スロットのレバーを叩きすぎたせいで真っ赤に腫れている。
「サキ! また群馬に行ってたのか!」
鉄心が呆れたように叫ぶ。
「お前、部費のレモン牛乳代まで突っ込んだんじゃねえだろうな!?」
変美は、サキから漂う**「群馬特有の焦げたソース(焼きまんじゅう)」と「負け犬の酸っぱい汗」**の匂いを嗅ぎ取り、眉をひそめた。
「……待って。サキさん、あなた、群馬のギャンブル場で誰に会ったの?」
「……え? ああ、なんか『矢田亜希子に似たお姉さん』がいたわよ。競艇場のVIP席で、銀色のケースを抱えて……『明日の宇都宮は、大穴(爆発)が出るわよ』って笑いながら、全レースに100万ずつブチ込んでたわ」
現場に凍りつくような沈黙が流れた。掃除屋の女が、サキを鋭く睨む。
「……私のプライベートを嗅ぎ回るなんて、不潔な小娘ね」
「不潔? 笑わせないでよ。こっちはね、三連単を外して、伊勢崎オートから宇都宮までヒッチハイクで帰ってきたのよ! 魂の汚れ方が違うの!」
サキは懐から、負けが込んでヤケクソで盗んできた(本人談:拾った)という、**「群馬の組織が隠し持っていた特殊な電磁波ジャマー」**を取り出した。
「これ、パチンコの台を狂わせるのに使えるかと思ったけど……あのアジトの機械にぶつけたら、面白いくらい火花が出るんじゃない?」
「サキ、お前……!」
唐桶刑事が絶句する。宇都宮の命運は、ついに「野球馬鹿」と「ギャンブル狂い」の手に委ねられた。
変美は確信した。
この街を救うのは、論理的な捜査ではない。
宇都宮の粘り強い納豆、チンピラの悪あがき、怪物の剛速球、そして依存症の執念……。この「混ざりすぎた匂い」こそが、掃除屋の無機質な計画を完膚なきまでに破壊するのだ。
「鉄心君、サキさん! そのジャマーを石に括り付けて、プルトニウムの冷却塔の排気口へ……センター返しよ!」
クライマックス:宇都宮の夜明け
逆転満塁ホームラン: 鉄心がジャマー付きの石を投じ、アジトの機能を完全停止させる。
掃除屋の最期: 計画が破綻した女は、サキに「次は競艇場で勝負よ」と告げられ、絶望と共に連行される。
エピローグ: 事件後、サキが懲りずに「今度は栃木市で蔵巡り(という名の裏カジノ探し)」に出かけようとするのを、変美が匂いで察知して止める。
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