『無能として追放された俺のスキル【フラフープ】が、実は世界のバグを修正する唯一の神権でした〜回すたびに理不尽な世界が再起動される〜』
@furafupu
第1話:円環のデバッグ・コマンド
「——佐藤カイト。お前は今日限りでクビだ。この役立たずが」
豪華なギルドの応接室。かつて俺を「期待の新人」と持ち上げたS級パーティ『天光の剣』のリーダー、アリオスが冷たく言い放った。
彼の背後では、仲間だった聖女や魔術師が、ゴミを見るような目で俺を見ている。
「待ってくれ、アリオス。俺の鑑定スキルに不具合があったのかも……」
「不具合なのはお前の頭の方だよ。もう一度鑑定結果を見てみろ」
空中に浮かぶステータス・ウィンドウ。そこには残酷な一文字が刻まれていた。
【固有スキル:フラフープ】
「フラフープだと? 腰で輪っかを回して、魔王とでも遊ぶつもりか? そんなふざけたスキル、冒険者ギルド創設以来の『ハズレ』だ。……さっさと失せろ。二度とそのツラを見せるな」
装備も、貯金も、仲間の信頼も。
すべてを奪われた俺は、街の外にある「最果ての断崖」へと放り出された。
そこは、この世界の「終わり」の場所だ。
空はひび割れたガラスのようにノイズが走り、地面はところどころテクスチャが剥がれたように漆黒の闇が覗いている。
人呼んで『バグ地帯』。一度足を踏み入れれば、存在そのものが消滅すると言われる禁忌の領域。
「……はは、笑えないな」
目の前には、バグによって異形化した魔物『バグ・ウルフ』が迫っていた。
体の一部がデジタルノイズのように点滅し、物理攻撃が透過する無敵の怪物。
逃げ場はない。
手元にあるのは、追放される際に投げつけられた、安っぽい木製の「フラフープ」が一本だけ。
「どうせ死ぬなら……一回くらい、試してやるよ」
俺はヤケクソで、その輪っかを腰に通した。
かつて元の世界で、ダイエットのために必死に回した記憶を呼び起こす。
シュッ、と風を切る音。
フラフープが、俺の腰を中心に綺麗な**「真円」**を描き始めたその瞬間。
『——システム異常(エラー)を検知。座標修正プログラムを起動します』
脳内に、無機質な声が響いた。
「え……?」
キィィィィィィィィン!!
激しい電子音と共に、俺が回すフラフープから「真っ白な光の輪」が放たれた。
光が触れた瞬間、ひび割れていた空が修復され、漆黒だった地面に青々とした草が生え変わっていく。
迫っていたバグ・ウルフが光に呑み込まれ、悲鳴を上げた。
ノイズが消え、ただの弱小モンスターへと「書き換えられた」ウルフを一撃で粉砕する。
そして、魔物が消えた跡には——。
『デバッグ完了。報酬:純金貨10枚を付与します』
チャリン、と。
この世界では見たこともないほど輝く金貨が、俺の足元に転がった。
「これ……もしかして、回せば回すほど世界が直って、金が稼げるのか……?」
追放された無能な男と、世界を修正する「円環」の物語が、ここから始まった。
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