不完全者達の悠久論──空白のダンジョンで僕は──

白黒めんま

第1話 死のうと決めた日

chapter01

世の中は理不尽だ。

 不公平だ。


 ただ人より少し醜いだけで、見下され、排斥される。



「──そぉれ、もういっちょ!」

「グハッ!」



 私立龍ヶ崎高等学校。

 県内でも有数の進学校であり、多くの著名人を輩出している名門私立である。

 ここはその体育館裏だ。


 僕はそこで毎日のように陰湿ないじめにあっていた。

 殴られ、蹴られ、少ない金を毟られる。


 何故僕がこんな目に遭わなければならないのか。


 見た目は確かに良くないのだろう。

 デブだし、不細工だし。


 ──しかし、それだけだ。


 誰かに迷惑をかけているわけじゃない。

 こんなことをされる謂れはないのだ。


 だからといって抵抗しようにも、僕の力ではどうしようもない。

 学力だけなら連中にも負けない自信がある。


 だが、身体能力は違う。

 圧倒的に劣る。


 何せ、連中の中には"探索者"もいるのだ。

 一般人にさえ勝てない僕では到底手も足も出ない。


 何もせず、大人しくしているのが賢い。


 もっとも、それが一番マシな選択というだけで、やり返せるのならやり返してやりたいものだが。



「──ハァッハァッ、今日の所はこの辺にしておいてやるか」

「しかしこいつ、ホントに金ねぇな!」



 連中は良いストレス発散になったのか、満足気な笑みを浮かべて去っていく。


 今日もしこたま殴られた。

 あちこちが痛い。



「クソどもめ……僕はサンドバックじゃないんだぞ」



 連中に聞こえないように呟く。

 それが僕に出来る精一杯の抵抗。


 今は放課後。

 見上げた空は赤く染まっていた。

 もうじき夜が来る。


 しかし、身体が痛くて動けそうにない。



「ハハッ……」



 情けない。

 この上なく惨めだ。


 一体僕は、いつまでこんな生活を続ければいいのだろうか。

 なんだか、とても疲れてしまった。



「……死のう」



 世の中、僕よりも辛い想いをしている人間は大勢いるだろう。

 そんなことは分かっている。


 ──でも、それはそれ。


 これ以上は耐えられない。

 僕はそんなに強い人間じゃないから。


 よろよろと立ち上がり、投げ捨てられた鞄を拾って帰路に就く。


 学校を出る途中で擦れ違う教師は、明らかに暴行を受けている僕を一瞥してすぐに視線を逸らした。


 何も言わない。

 いつものことだ。


 ここは実力至上主義の学校。

 力ある者が正義であり、弱者は淘汰される。

 最底辺である僕を気に留める教師は一人もいなかった。


 今の僕に価値は無いのだ。


 悔しくてひたむきに勉強を頑張ったが、それだけじゃ足りないらしい。


 学力も武器には違いない。

 だが、この学校でいうところの"力"とは、ありとあらゆる力のことである。


 それは魅力であったり、権力であったり、身体能力であったり。

 あるいは、暴力も力の一つとして評価される。


 多少勉強が出来るだけの僕の評価は最底辺のG。

 頑張ってもそのレベルでしかない。


 もう一度言おう。

 世の中は理不尽だ。


 こんな理不尽な世界、こっちから捨ててやる。



 ──この日、僕──夜明ヨアケ 一星イッセイは自殺を決意した。


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