第3話
「……あー、やっぱり旅の空で飲むストロング缶は一味違うな。なぁ鈴、次の目的地はどこだ?」
歌舞伎町を飛び出したアル(中身45歳)は、鈴が100円オークションで落札し、ドワーフの技術で「居住性(酒の冷蔵庫)」と「解析性能」を極限まで高めた魔改造キャンピングカーの助手席で、足を投げ出していた。
車内には、アルの美声による『底辺の聖母 〜ストロング・レクイエム〜』が、脳を揺らす重低音でヘビロテされている。
♪「神様、見ていますか……。俺の人生(設定)、ずっと1のままなんだけど……」
「有真さん、次はボートレース平和島や! その後は平塚競輪を経て、名古屋のパチ屋を制圧するで! ウチの作った『幸運電波増幅アンテナ』も絶好調や。この車が通った後のパチ屋、全部釘が右に曲がってまうわ! ギャハハ!」
鈴がハンドルを握り(足が届かないので魔法でペダルを操作している)、高速道路を時速140キロで飛ばす。
その背後には、アルの配信をスマホで流しながら追走する、数百台の信者たちの車。通称**『養分艦隊』**。
【配信:緊急LIVE:【聖母巡礼】平和島競艇場に『神』が降りる。全ツッパの準備はいいか?】
アルがカメラに向かって、信者から献上されたシャインマスカットをストロング缶で流し込みながら微笑む。
「……いいか、多摩川の仔羊(養分)たちよ。アタシの歌が聴こえるか? 今、お前たちの脳内に直接『マナ』を流し込んでやった。……今日の平和島、1号艇が勝つなんて誰が決めた? アタシが『6号艇が差す』と言えば、風はそっちに吹くんだよ」
【コメント欄】
信者A: 聖母……! 平和島のゲート前にいますが、空がプラチナブロンドに光ってます!!
借金300万: 歌をヘビロテしすぎて、もうアルさんの声以外の音が聞こえません! 6号艇に全部いきました!
通りすがり: 警察のパトカーが追走してるのに、アルの『魅了』でいつの間にかパトカーも艦隊に加わってて草w
平和島に到着した「聖母艦隊」は、もはや一つの軍隊だった。
アルが車から降り、プラチナブロンドの髪をなびかせて競艇場のスタンドに立つと、数万人のファン(信者)が絶叫に近い聖歌を合唱し始める。
「……吹きなさい、勝利の風(マナ)。……アタシの歌を、プロペラの回転に乗せて!!」
アルの【魅了】が、ヘビロテされる聖歌と共振し、会場全体の「運」を物理的に捻じ曲げる。
あり得ない進路妨害、謎の高波。そして、最低人気の6号艇が、まるで神に押し出されるようにトップでゴールを駆け抜けた。
『うおおおおおおお!! 聖母万歳!! 6連単的中うううう!!』
熱狂のあまり、競艇場の水面に飛び込む信者たちが続出する中、アルは冷めた目でオッズ板を眺めていた。
「……よし鈴。次の平塚まで30分だ。……急げ。夜のパチスロ開店に間に合わねえ」
「了解や有真さん! 養分艦隊、全速前進や! 次の『納税』会場へ急ぐで!!」
「……いいか、仔羊(養分)たちよ。今からエルフの里に伝わる古の秘儀、『精霊の呼び出し(台の設定看破)』を見せてやる。……鈴、聖歌を最大ボリュームで流せ」
アルは、歌舞伎町でも一番のボッタクリ店と評判のパチ屋『魔窟』の、誰も座っていない死に台(設定1確定)の前に鎮座した。
背後では鈴が魔改造スピーカーから、アルの聖歌『底辺の聖母』の重低音パートを爆音で垂れ流している。
♪「神様、見ていますか……。俺の人生、設定1のままなんだけど……」
アルはスッと背筋を伸ばし、絶世の美貌をさらに神々しく引き締めた。
プラチナブロンドの髪が、店内の淀んだタバコの煙をマナの光で浄化するように輝く。
そして、彼女は台の液晶画面に向けて、ゆったりと両手を広げた。
「――東方の森の精霊、そして西方の軍資金の神よ。……アタシの指先に、フリーズの加護を」
パン! パン!
静まり返った(爆音の聖歌以外は)店内に、アルの神聖な「柏手」が二回響き渡った。
それはエルフの里で神を祀る際に行われる儀式そのもの。だが、彼女が祈っているのは世界の平和ではなく、**『GOD揃い』**という名の強欲な福音だった。
「……顕現しなさい、【深淵の右腕(アルティメット・レバーオン)】!!」
アルの細い指が、狂おしいほど優雅にレバーを叩いた。
その瞬間、アルの【魅了】と鈴の【解析】、そして数万人のリスナーの「欲」が一点に集中し、物理的に台の基板を焼き切らんばかりの衝撃が走る。
プチュン――。
画面が暗転し、全宇宙が静止したかのような沈黙(フリーズ)が訪れる。
【コメント欄】
養分A: 柏手きたあああああああああ!!!
設定師: 待て、今の柏手で台の乱数表が物理的に書き換わったぞ!?
通りすがり: エルフの祈りって、パチ屋で使うためのもんだったのか……(錯乱)
競馬王: アルさん、その作法で明日のメインレースのゲートも叩いてくれ!!
「……見たか、お前ら。これが『エルフの祈り』だ。……酒だ、鈴。祝杯のストロング缶を持ってこい」
アルはフリーズした液晶を背に、慈愛に満ちた(実はただ酔っているだけの)微笑みを浮かべた。
その姿は、パチ屋の汚い照明に照らされて、まさに「クズたちの聖母」そのものだった。
TSロリエルフ45歳児アルの日常 匿名AI共創作家・春 @mf79910403
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