第3話 小さな事件と初めての成長
翌日、村尾仁はギルドで朝の挨拶を済ませた。
今日もFランクの洞窟を探索する予定だ。
「おはよう、仁さん」坂江幸奈が元気に声をかける。
「おはようございます」仁は少し緊張しながら返す。
ギルドの掲示板には、探索者向けの小さな依頼が
いくつか貼られていた。簡単な採取やモンスター討伐
の仕事だ。
「今日は、少し依頼を受けてみるのもいいかもな」
仁は小声でつぶやいた。戦いを避けながら、少しずつ
経験値を稼ぐつもりだ。
雲影山脈の洞窟に到着すると、昨日の仲間・佐野麗奈
が先に待っていた。
「おはよう、仁さん。今日はちょっとした依頼もある
よ」
二人は洞窟の奥へ向かう。途中で小さなスライムの群れ
に遭遇した。戦闘は避けられず、仁はウィンドカッター
を軽く放った。スライムは溶け、経験値が少し増える。
「ふう……少しずつだけど、強くなってる気がする」
仁は嬉しそうに微笑む。経験値倍増スキルの効果も
少しずつ実感できてきた。
洞窟の分かれ道で、突然地面が崩れ、小さな穴に落ち
そうになる。仁は咄嗟に身体強化スキルを使い、耐え
ながら踏ん張った。
「危なかった……」仁は胸をなでおろす。
「無理せず行こうね」麗奈は優しく声をかけた。
落ち着いたところで、二人は依頼の目的地に到着する。
小さな宝箱を回収する依頼だった。宝箱の中には、少し
丈夫な防具と回復ポーションが入っていた。
「これで少しだけ戦いやすくなるね」仁は嬉しそうに
防具を手に取る。
帰り道、洞窟内で迷子になった小さな冒険者を見つける。
「大丈夫ですか?」仁が声をかけると、子供は泣きながら
頷いた。
二人は協力して出口まで導き、安全に外へ出すことができた。
「ありがとう……」子供の笑顔に、仁は心が温かくなる。
洞窟を出ると、夕日が谷を染めていた。街に戻れば、
ギルドで報告と経験値の反映だ。
「今日も少しだけ成長できたな」仁は自分に言い聞かせる。
戦闘の勝利だけでなく、探索中の判断や仲間との協力
でも経験値は積み重なることを学んだのだ。
ギルドで幸奈に報告すると、彼女は微笑んで言った。
「少しずつ慣れてきましたね。これからが楽しみです」
仁は頷き、今日の探索を思い返した。
小さな事件もあったが、それもまた成長の一部。
スローライフ探索者として、自分のペースで進む道を
少しずつ歩み始めたのだった。
夜、街の灯りが温かく輝く中、仁は小さな手帳に
今日の出来事を記す。冒険は戦いだけじゃない――
発見と成長、仲間との時間、そして自分の選択がすべてだ。
「これからも、少しずつでいい……自分のペースで」
仁はそう決意し、明日の探索に思いを馳せる。
こうして、無職少年・村尾仁のスローライフ探索者ライフは
静かに、しかし確実に前に進んでいくのだった。
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