好きな相手を射止めるにはまず胃袋から
広井すに
好きな相手を射止めるにはまず胃袋から①
──あれ、これ私の家か……?
朝。
目を開いて、白い天井を見る。私──宮本カオルは考えた。
つーか今日って、何日だっけ……?
昨日が金曜日、だったはずだから……。ああ、今日は土曜日か。それで今の時刻は……。
ベッドの備えつけの棚に立てかけてある、グレーの目覚まし時計を見る。朝の八時半過ぎた頃か……。休日の私が起きる時間にしては早い。
ん……?
待って、私の家って壁に時計がかかってたはず。
じゃあここはどこだ……。昨日の記憶を思い出していこう。
昨日は仕事帰りに自宅から遠いバーに寄って、お酒を飲んで……。そういや、誰かに話聞いてもらったんだ。そもそもそこに行ったのだって、失恋したからむしゃくしゃしたんだった。
そこから記憶がまっったくない。くだを巻きながらおいおい泣いて、普通ならうざがられるはずなのに、隣に座っていた人があまりにも親身に聞いてくれるもんだから、気をよくしてペラペラ喋ったことしか覚えてない。
そういや、さっきからなんか寒い。全身がスースーする。
私は視線を布団の中の身体に向けた。
……何も着てなかった。上も下も。
……つまりはそういうことである。
待て待て待て待て!
やらかしたってこと!?
今更慌て始めた私は、ぼやけた記憶の中で昨日の相手の言動を思い出す。
『大丈夫? 何かあったの? あ、初めまして、オレ──』
『カオルさん、飲み過ぎじゃない? 今日はもうその辺にしておこ? え、吐く!? 待って、ここはやめよ! ちょ……立って! トイレ、トイレ行こ!?』
『ああ……ほら。だから飲み過ぎだよ、ってオレ止めたのに……。ねえ、カオルさんの家どこ……? え? 全然ここと逆方向じゃない? こんな状態で危ないよ。オレんちこのバーから近いんだ。よければ、泊まっていいよ』
『あっ……カオルさんって上手いね。うん……カオルさん、可愛いよ。もっとこっち来て……。好き……』
うん、うんうんうん……。いや、あのさ……最後の何!?
完全にやっちゃってんじゃん!? しかも思い出せるほとんどの記憶がゲロ吐いてる場面ってなんなの……!?
私、相手に迷惑かけた上に尻軽女に成り下がったわけ!?
私はベッドの上で、黒歴史を思い出し悶え苦しむ。ゴロゴロとのたうち回った。
ともかく……相手には謝ってさっさと帰ろう。
本当はシャワーを浴びたいんだけど、それは家に帰ってからにしよう。そうしよう。
気を取り直した私はベッドの下に散らばった……目を逸らしたくなる事実なのだが、下着や服をかき集めて着始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます