好きなものだけの世になった?!

あっぴー

第1話 私の好きなものだけの世界

粟瀬あわせこのみは兼業主婦。

今日はお正月、夫・そうの実家へ。

おせちとお雑煮を用意していただいたのはありがたいけど、

何が悲しくて、おせちってやつは、酸っぱいのとか、しょっぱいのが多いのよ。

というか、どうしてこの世にそれらや、苦いのか辛いのがあるのよ。

味なんて、甘みとうま味だけで充分でしょ。

栄養バランスが、と言うなら、今時なんだから、後からその2つで味付けすればいいのよ。


街を歩けば、下手な歌や演奏、悪声、耳障りなメロディや幼稚すぎる歌詞のミュージシャンの音楽ばかりが流れている。

なによ。

ミュージシャンはね、実力と美声と楽曲の質を備えたバンド、Onlyだけが流れていればいいのよ。

なんでJ-pop10番人気ぐらいで、天下獲るまでいってないのか、不思議だわ。

顔だの、大手事務所のゴリ押しだのに騙されている、レベルの低いリスナーばっかりね。



次の日、会社の昼休みにいつものファミレスに入り、メニューが薄くなっているのに違和感を覚え、中身を凝視して驚いた。

カレーやコーヒー、定食のシャケや梅干し、紅茶についていたレモンまでもが、なくなっている。

更に、この店は有線放送のはずなのに、さっきからOnlyばかりが流れている。

思わずスタッフさんに聞いてしまった。

「今日からOnlyだけをエンドレスで流すようにしたんですか? センスの塊ですね」

「えっ、だって、いわゆるJ-popって、この人達しか売れてないじゃないですか?」

やった!

これから街中でもOnly以外聴かなくて済むのね!


案の定、家に帰ると、若者向け歌番組がOnlyの冠番組になっていた。

耳が幸せ〜!

あらっ、五大ドームツアーが発表されてるわ。

ファンクラブに入ってるのにそんな話は初めて聞いたから、初出し情報ね。

よーし早速、一番近い東京ドームに申し込もっ


……と、スマホで公式サイトを開いて、驚いた。

いま発表されたばかりなのに、全てsold outになっていた。

「な、なんで……

 去年は札幌ドーム、スッカスカだったのに

 ……しかもこれ、平日だし、3月だから北海道はまだ寒いわよ?!」

思わず総に愚痴を言うと、

「そりゃそうでしょう。

 少年から中年辺りまでが喜ぶようなカッコいいミュージシャン、この人らしかいないもん。

 47都道府県全部平日ツアーだとしても、そうそう取れないんじゃないの?」

当然のように言われてしまった。



次の日。

吐き気からの妊娠検査薬で、このみの妊娠が発覚した。

「おめでとう!」

総は大いに喜んでくれた。

「ありがとう。

 最近イライラしてたの、これが原因だったのかもねえ」

「まあ、赤ちゃんに栄養取られちゃうからねえ。

 身体を大事にしてね、今日みたいな休みはできることは何でもするから」

「だ、だったら……

 スッキリしたいから、酸っぱいもの買ってきてくれない?」

「えっ、さすがにそれは……

 だって最近、第一次産業や食品会社の人も不景気や資源有用活用からの合理主義で、人気ある食べ物しか作りたくないってことで、甘味かうま味の食べ物しか作ってないじゃん」


と、いうことは……

この子は、産まれた時からミュージシャンはOnly、食べ物は甘味かうま味しか知らずに育つのか……!

たくさんある中から好きなものを選び取ることもないままに育つのか……!

みのりは深く頭を抱えた。

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