第3話【エピソード3】炎上必至?パンティーズ・ピザ事件



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### 【エピソード3】炎上必至?パンティーズ・ピザ事件


オフィス街のランチタイムを彩る、新感覚カフェのCM撮影。

白を基調としたオシャレな店内には、柔らかな自然光が差し込み、まさに「キラキラした世界観」を演出するには完璧なロケーションだった。


主役は、若手人気タレントのハルカさん。清潔感あふれるオフィスウェアに身を包み、ターゲット層である20代OLの憧れを体現している。


最初のシーンは、看板メニューのふわふわパンケーキ。

「はーい、本番いきまーす!」

監督の合図で、ハルカさんはパンケーキを一口、愛おしそうに頬張る。そして、カメラに向かって最高の笑顔で一言。


**「ウ~ン、おしちい♡ うふっ」**


完璧だ。監督もクライアントも、満足げに頷いている。

「OK!じゃあ次は、店長イチオシのメニューをお願いします!」


自信満々の笑みを浮かべた店長が、恭しく運んできたのは一枚のピザだった。

「お待たせいたしました! 当店オリジナルの**『バンティス・ピッツァ』**でございます!」


「バンティス…?」

スタッフたちが首をかしげる中、テーブルに置かれたそれを見て、全員が言葉を失った。


熱々のチーズとトマトソースの上。そこにあるべきサラミやピーマンの代わりに、トッピングされていたのは、**色とりどりの、小さな、布製の…パンツだった。** レース、水玉、リボン付き。丁寧に一枚一枚、具材として配置されている。


スタジオは水を打ったように静まり返った。

照明アシスタントが、持っていたレフ板をカラン…と落とす。

ハルカさんは、プロとして笑顔を維持しようとしながらも、その目は完全に泳いでいる。フォークに一切れ乗せて、口元まで運ぶが、その距離が永遠のように遠い。


(…これを…食べるの…?)


彼女の心の声が聞こえたかのように、モニターを凝視していたプロデューサーが、静かに、しかし地獄の底から響くような声で呟いた。


**「……おい! 店長呼んでこい!」**


その声は、撮影中止の合図なのか、それとも新たな伝説の始まりを告げるゴングだったのか。

何も知らない店長だけが、「お気に召しましたか?」と晴れやかな顔で駆け寄ってくるのだった。


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### 【読者視点からの解説】理解不能な物体Xとの遭遇


このエピソードの面白さは、**「常識」と、常識のはるか斜め上をいく「狂気のクリエイティブ」との衝突**にあります。読者は、タレントやスタッフと共に、理解不能な物体Xに遭遇したかのようなパニックと笑いを同時に体験します。


#### ■ 笑いのメカニズム


* **視覚的インパクトの破壊力:** まず、このエピソードは画像の力が絶大です。「ピザにパンツが乗っている」という、一度見たら忘れられない光景。このビジュアルショックが、全ての笑いの源泉となっています。


* **店長の「正気」と「狂気」のギャップ:** この店長は、ふざけているわけではなく、本気でこれを「オシャレで新しいメニュー」だと信じているであろう点が、最高のスパイスになっています。「バンティス・ピッツァ」という謎のネーミングセンスも含め、彼の純粋な狂気が、状況の異常さを際立たせています。


* **プロたちの「思考停止」:** CM撮影という、計算され尽くした「作る側」のプロたちが、想定外すぎるブツを前に完全に思考停止してしまう様子が、非常にコミカルです。特に、笑顔を保ったまま固まるタレントのハルカさんの姿は、読者の「いや、無理でしょ!」というツッコミと完璧にシンクロします。


* **プロデューサーの怒号という「ツッコミ」:** 読者を含む、その場にいる全員の心の声を代弁してくれるのが、プロデューサーの「店長呼んでこい!」の一言です。この一言があることで、カオスな状況に一つの句読点が打たれ、読者は安心して笑うことができます。これは物語における「最高のツッコミ」と言えるでしょう。


#### ■ 結論:誰も悪くないのに、なぜか面白い地獄絵図


この物語は、「良かれと思って」やった店長の暴走クリエイティブが、プロの現場を大混乱に陥れるという、一種の放送事故ドキュメンタリーです。誰も悪意はないのに、なぜか地獄のような光景が生まれてしまう。その**「噛み合わなさ」**こそが、このエピソードの面白さの核であり、読者は「こんな現場、絶対イヤだ(笑)」と思いながら、そのシュールな悲劇を心から楽しむことができるのです。

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