第3冊 キリンの子(鳥居)

2歳の頃に両親が離婚。小学5年生の時には目の前で母親に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験した女性歌人「鳥居」さんの歌集です。


義務教育もほとんど受けていないなか、拾った新聞で文字を覚えた、短歌についても独学で学んだ、とのこと。


彼女が詠む短歌は、生々しく、鮮やかで、入水したあとの病棟生活や、自殺した母を描いた歌は刃物を突き付けられるような鋭さがありました。

ただ、私が一番引き付けられたのは『野菜の呼吸』の章でした。


南瓜を半分に切り並べれば棚一面に金が輝く


を、はじめ、八百屋で働く人たち、店先の野菜たちに対する情がこもった眼差しがとても良いです。この人がきちんとした教育を受けて、愛のある家庭に育ったなら、どんな短歌を詠んだのでしょうか。今の、ぞくりとするような切り口の短歌は詠えないかもしれない。ただ、あたたかな幸せを湛えた短歌を沢山生み出したでしょうに。


慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです


叫び出したいような思いを、鳥居さんは31字に託しています。

言葉というものの力を確かに感じさせられる、そんな歌集でした。

そんなに分厚くないので読みやすいです。

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