こちら妖怪新聞社!

藤木稟

妖怪記者ミラ、誕生

プロローグ


 ホウホウ、とフクロウが鳴く月夜のこと。

 まるでお伽話にでてくるような小さな村の、かやぶき屋根の家から、扉をそっとあけて、みょうに手足の長い人影があらわれた。

 ひょろりとした人影は、本人とおなじぐらい大きな荷物を背中におぶっている。

 しばらくすると、またひとつ。

 合計四つの人影が、猫のように足音をしのばせ、だんだん畑のあぜ道を走っていく。

 四つの影は、里山の細道をかけぬけ、村からはなれた川辺へたどりついた。

「タカよ、ついにこの夜がきたんじゃな」

 ひとつの影が興奮しながら言った。

「おう。リヨウ、カズ、ヒロ、みなもぶじだったか?」

「おれはだいじょうぶじゃ。村の衆にも気づかれておらん」

「ああ、おいらはもう、ドキドキしっぱなしじゃった」

「おいらもだ。だが、きちんと荷物も持ってきたぞ」

 キラリ、キラリと月明かりを反射する川辺で、四人はたがいの大きな持ち物を確認しあった。

 それは彼らにとって、なくてはならないものだった。

 タカはにやーりと笑った。

「いよいよ、おいらたちの真価をためすときがきたんだ」

 その言葉に、三人も大きくうなずいた。

「おうよ。おれは人間などこわいものか」

「そうよ。いつまでも、村の年寄りどもの言いなりになってたまるか」

「そうじゃ、これからはおいらたち、妖怪の天下じゃ。人間界で、うまいものをたらふく食って、いいもんを着て、そうしておいらたちは個性を手に入れるんじゃ!」

 三人もおのおの、こぶしを強くにぎりしめた。

「いざ、東京へ!!」

 四人が声をそろえてさけんだときだ。

 ガサリ、ガサリ。と、草むらをかきわける物音がきこえてきた。

「村の追っ手かな。リョウよ、ちょっと様子を見てこい」

 タカが命じると、リョウは草陰にかくれながら、物音のするほうへと近づいていった。

 リョウが見たものは、生まれてはじめて見る人間の姿であった。

 ――その夜、村のはずれの小川のほとりで、すべてははじまった。

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