ただの高校生、生き残るために魔王と合体する。
獣乃ユル
プロローグ
なんでもない日
十数年前に起きた「
門のような出入口を抜けると、海中にいた。
そんな話は珍しくなく、何の対策もせずにダンジョンに入った多くのものがそれで失踪した。
ダンジョン混乱の発生から数日後、次の大波乱が起きた。
ダンジョンの内部から、化け物が現れたのだ。二足歩行する狼や、口から炎を吐き出す蜘蛛、ふわふわと浮いて移動するタコなど、現実ではありえなかったはずの怪物が出てきた。
それらは銃や爆弾といった現代兵器が一切効かず、逆にそれらが攻撃をすれば簡単にコンクリートが砕け、戦車さえも鉄くずと化した。
人類は絶望した。
魔物はどんどんと数を増やし、人間は簡単に絶滅する──はずだった。彼らが、「覚醒者」と呼ばれるものが現れるまでは。
◆
朗らかに響くチャイムの音を聞きながら、俺は急いで席へと座った。若干遅刻だが、先生が来ていないんだからバレやしないだろう。
「おぉ
「おはよう、今日も元気だな」
息を切らしていたところで、隣席の少女が話しかけてくる。
彼女は「
夕陽のような橙色の髪が特徴的で、金色の瞳は吸い込まれそうなほどにまぶしい。こんなに特徴的な見た目をしているが純日本人だし、カラコンも染色もしていない。
この見た目は、彼女が「覚醒者」である証だ。
「元気になっちゃいますよ。だって見てよこれ!」
「あー、そうか。昨日配信してたもんな」
彼女が見せてきたのは、今話題のイケメングループの配信だった。彼らはファンタジーな鎧で身を包み、森林の中をずかずかと歩いていく。
「覚醒者」は、簡単に言えば魔物と戦える人間のことだ。
生まれつきの場合もあれば後天的にそうなることもあるが、彼らは魔法が使えたり、使ったこともないのに剣術を極めたりしている。俺からすると、ゲームのキャラクターみたいだと思った。
「剣士」に選ばれた人は、練習もせず剣が使える。
「魔法使い」に選ばれたら攻撃的な魔法を、「僧侶」に選ばれたら仲間を癒す魔法が使える。
そんな風に、ある無差別で不公平に彼らは選ばれる。
「かっこよくて強いとか、まじでさいきょーじゃない!?」
「ま、だから人気なんだろう」
「なんか冷めてる~」
そして、今流行っているのが覚醒者たちによる「ダンジョン配信」と呼ばれるものだ。その名の通りダンジョンに挑んで攻略する様子を配信するもので、今動画配信サイトはこれしか見られていないといっても過言ではないだろう。
単純に、面白いのだ。
昔は映画でしか見られなかったようなド派手でファンタジックなバトルが、毎日更新されていく。その上ダンジョンからは金銀財宝や、持っているだけで英雄になれるような武具が見つかることがある。
そんな掘り出し物を一緒に見つけるような感覚が、楽しくてたまらない。
「テスト近いだろ?ほどほどにしとけよ」
「はいはい、芥お母さん」
「お前の親になった記憶はない」
仕方がない、といった風に響花はスマホを仕舞った。
彼女も、少し前まではダンジョン配信をしていた。幼馴染の贔屓を抜いても彼女は可愛いし、実力もあったので人気だったが、家庭の事情で辞めざるを得なかった。
「……まだ、やりたいって思うことはあるか?」
「ふふ、まだ気にしてんの?だいじょーぶだって、芥は全然悪くないし、親との関係もいい感じになってきてるから」
「ダンジョンなんて危ないだけだしね」と彼女はおどけて笑って見せる。
なら、なんでダンジョン配信をずっと見てるんだろう。なら、なんで偶に悔しそうに、辛そうにスマホを眺めているんだろう。そんな言葉は、口から出ることはなかった。
「ういうい、ホームルーム始めるぞー」
「はぁ」
溜息を吐きながら、外を眺める。
朝日は俺の気持ちを知りもせずにまぶしく輝いて、鳥は自由に空を駆けまわっていく。雲一つない快晴も、少し鬱陶しく思えてしまうくらいには気が重かった。
でも、一日は変わらず進んでいく。
今日も何事もなく学校を過ごし、ただ何もせずに一日が終わる……
「なんだ、あれ」
「ん、どした?」
そんな時だった。
俺が指さした先には、光があった。ステージで使うようなスポットライトが、学校に向けられているくらいの光量。普段なら気にもしないそれが、何故か目に留まった。
木々の隙間から差し込んだそれ。
光を見た瞬間に、俺を押し倒しながら響花が叫んだ。
「みんな伏せて!!!!!!!!!」
轟音と、はじけ飛ぶような衝撃。
真っ白に染まる視界の中で、俺は意識を落とした。
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