赤いとんがり帽子のシンシャ
春野 一輝
第1話 最初の街 ロッテ
「ようこそ。始まりの街、ロッテへ」
門衛はそう言って、エルフの青年を呼び止めた。
青年は肩幅が広く、赤いとんがり帽子に、赤い吟遊詩人風の服を着ていた。
「この町には初心者の冒険者が沢山やって来る」
門衛さんは、初めて訪れるその旅人に言った。
「へぇ、冒険者?」
赤い帽子を目深に被り、目線を合わせないままエルフは言った。
「あんたも、冒険者登録するなら、入り口付近の初心者用冒険者の宿”マーメイド”に行くといいよ!」
旅人は頷くと、背負い袋を持って、街に入っていった。
冒険者の宿、マーメイドは青い屋根に白い壁をした清潔そうな宿だった。
内装も白で固められ、青い砂を中に入れた砂時計が貝殻の上に落ちて行った。
「ようこそ、冒険者の宿。マーメイドへ!」
中に入ると、ギルト員らしき青年が手招きして迎え入れてくれた。
エルフの青年が、冒険者の宿をきょろきょろしながらカウンター前に行くと青年は羊皮紙を前に出した。
「見ない顔だね? 冒険者登録かな。紙を上げるから書いてね」
少し考えた後、エルフの青年は頷いた。
「最近は魔法で冒険者登録を行う所もあるが、うちは筆記でね。この羊皮紙に、君の性別と職業を書いてほしい」
羽ペンを貰い、エルフの青年はカリカリと書き込んだ。
「えーと。シンシャさんね。おや、君は女性なのかい?」
「まあ、一応?」
羊皮紙に書かれた、性別のところを見てギルド員が言った。
シンシャというエルフの女性が何か少し意味深に答えると、うんうんとギルド員は頷く。
「最近は男女の境も薄くなってね。冒険者やってる女性も多いよ」
「はは、そうだね」
冒険者証を発行してもらうために
「ところで、君の職業はなんだい?」
シンシャがなんて帰そうか悩んでいると、ギルト員が言った。
「ま……旅人でいいか」
彼女はその言葉にうなずく。
ポンっと冒険者証に旅人の印を押してもらうと、シンシャはまじまじと手に持って冒険者証を眺めた。
「はは、そんなに物珍しいかい? 大事なものだから、しまっておくといいよ」
そう言われて、胸ポケットに大事そうに冒険者証をしまった。
「依頼書なら、そこの掲示板だよ」
指を刺されて、ふらふらと言われたままに彼女は掲示板の前に立った。
赤い帽子で目が隠れたまま顔を上げて、掲示板を眺める。
・学校にオーガがいるという伝説を調べて!
・ゴブリンが発生する村を1週間護衛してほしい
・古代のワープ装置を修理できる達人募集!
・泉を清らかにできる魔法使いが欲しい!
ワクワクしてくるような依頼文に、赤い帽子のシンシャの口元が上がる。
「こんなことを人々は頼むんだ」
一つ、依頼紙を取ろうと手を伸ばした時。
ぞろぞろと二階から冒険者たちが下りてくる。
「マスター! 朝ごはんー!!」
6人の冒険者たちがぞろぞろと二階から下りてきていた。
黄金の髪をトルネードにしたお嬢様の騎士や、魔法の杖をもったウサギの獣人や、青い新品の鎧を着こんだ青年、小さいオッサンが炎の精霊を連れている、竜人の斧使いがいた。
「ギルド員さんに任せっきりで宿に居ないのか」
それぞれが口々にマスターという人を探して話している。
「まあいいじゃない。さっさと仕事しましょ」
お嬢様の騎士が掲示板に貼られた依頼紙を1,2,3,4,と剥がし。全部持っていってしまう。
赤い帽子のシンシャは目が点になって、その様子をずっと眺めているだけだった。
驚いたのではなかった、ただあまりにも物珍しく思えて好奇心が勝ったのだ。
だから彼女は怒る事もなく、静かに冒険者たちを観察していた。
「こぉらーーーー!!!!」
突然大きな声が、カウンター奥から響き、 びっくりした冒険者達がドタドタと外逃げ出てしまった。
「あいつら、また勝手に依頼紙を全部剥がしていったな」
カウンター奥から、ぷんぷんと怒るマスターと呼ばれるオジサンが出てくる。
「なんだ。アンタ」
マスターと呼ばれる男性は、ぎろっとした目つきでエルフの方を見た。
赤い帽子のエルフのシンシャは、小首をかしげて見つめ返した。
「新人か。依頼紙が無くなったなら、宿に金払えるのかね?」
まあまあ、と主人をなだめようとするギルド員を他所に、ムッとしてマスターの男性が彼女に言う。
「初心者用の常備された張り紙なら、外だ。アンタにはそれが一番だろ」
親指で入り口のドアの向こうを差す。
ちょっと肩を竦めて、シンシャが外に行くと。
『街の壁をペンキだらけにするスライムを倒して!』
という依頼紙が、冒険者の宿の前に貼られている。
「これだ!」
シンシャは天運が自分に味方したことを喜んだ。
彼女の影まで小躍りするように揺れる。
初めて請ける依頼ととしてふさわしく感じたのだ。
ぺりっと最初の依頼を剥がすと、マスターへと持って行った。
宿で依頼を請けることを伝えると、ほいっと部屋の鍵を放り投げて渡してくれた。
「ちゃんと、宿代を払うんだぞ」
そう言って、マスターは仏頂面をしながら皿を吹き始めていた。
二階に上がって、部屋を開けると、最初に見えたのは壁に大きな窓が設あった。窓の外までくっきりと見えた。
外は青々しい屋根がたくさん並び、日航の光を受けて綺麗に輝いていた。
部屋の隅にはベッドが置いてあり、綺麗にメイキングされている。
「ベッドか。久しぶりに見るなあ」
テーブルがベッドの近くに設置され、その下に水桶があった。
水が溜まっており、赤い帽子のシンシャはふきんを荷物から取り出す。
「よいしょっと」
水桶にふきんを浸して濡らすと、顔に着いた汗を拭きとる。
すると白粉が落ち、シンシャの顔半分が黒くなっていった。
彼女の顔は半分がダークエルフの褐色をしていたのだ。
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