第2話 転生
目を開く 眩しい なんて、眩しい
俺は 死んだはずだ この世界から身を投げ出し 遠い 遠い世界に行ったはずだ
「――――、――――――」
「――、――――――」
なのに なんで こんな場所がある?
地獄? 天国? 煉獄? 冥界? 極楽浄土? ヴァルハラ? 黄泉? ミクトラン?
そんなのあるはずがない。
あるとしたら、俺は自分自身の命を殺したのだから、地獄で永遠に焼かれ続けないといけないはずだ。
「――――、――」
「――――、――――――」
だから、意味が分からない。こんな輝きは、俺に届かないはずなのに。
……待て。さっきからなんだ? 誰が話している?
「この子の名前は何がいいかな?」
「そうね、元気に育つように、シスにしようかしら」
「いいな、それにしよう」
なっ、まさか――。
体が軽い、手が小さい、言葉を発することが出来ない。
歯も生えておらず、満足に体を動かすことすら出来ない。
もしかして、これは――
「それじゃあ、よろしくなシス。お前は、今日から俺たちの息子だ」
転生してしまったのか――
――――――――――――――――――――――――――
怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ
神は、もう一度
全身から血が引いていく寒気。意識がどんどん暗闇に引き込まれるような感覚。
もう二度と、経験したくない。死にたくない……死にたくない。
死を経験するくらいなら、生まれたくなかった。
「なぁ、シス。俺たちの間に生まれてよかったか?」
よくない。絶対に良くない。何で、父さんたちは俺を生んだの?
俺じゃなくてよかったでしょ。もっと、転生したいと思っていた人物はいたはずだ。
なのに、なんで……。
「ちょっと、お父さん。シスに話しかけるのもいいけど、ちゃんと仕事をしてよ」
「あっ、悪い。そうだった。じゃあ、俺は畑に行ってくるから、ちゃんといい子にしてるんだぞ」
生まれたばかりの子供に「いい子にしてろ」は無茶だろ。
赤ん坊なんて、ろくに動くことすら出来ないし、できることと言えばせいぜい泣くことくらいだ。
いい子もくそもありゃしない。
(それにしても、ここはいったいどこなんだろうか?)
俺が生まれたこの家は、近代的な日本の建物では無く、ヨーロッパ付近の古い木造の家で、日本で生まれ育った俺には少しばかり違和感がある。
……もしかして、これは異世界転生というものではないだろうか?
妹がそのような物語が好きで、何度も俺に話してくれたから、少しだけ知識がある。
(……転生したのが妹なら、きっと喜んだんだろうな)
胸の奥が、じわりと痛む。
思い出したくないのに、思い出してしまう。
あの部屋の静けさも、紙の匂いも、全部。
泣き声が漏れた。
赤ん坊の喉は勝手に震え、俺の意思とは関係なく声が出る。
「シス、お腹すいたの? はいはい、今ミルク用意するからね」
この世界の母親が俺を抱き上げる。
温かい。
その温かさが、逆に怖い。
生きているという実感を俺に与えないでくれ。
怖い。……本当に怖いんだ。
生を感じるということは、死も一緒に感じてしまうということなんだ。
(植物がうらやましい。だって、こんな思考をしなくていいんだから)
生まれ変わるなら、植物が良かった。
風に揺れて、雨に濡れて、ただそこに立っているだけでよかった。
でも俺は、また“考えられる”存在として生まれてしまった。
また、感じてしまう。怖さも、痛みも、失うことも。
母親の腕の中は温かいのに、胸の奥だけが冷たい。
神様は俺に、生きろと言っているのか。
それとも――また、終わりを味わえと言っているのか。
神様なんて、くそくらえ。
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