妖乱花乱

@Neonpi

プロローグ

夏の風が頬をなでる。

あの日姉が眠った土を踏みしめる。昨日辺り雨降ったのだろうかやけに泥濘んだ泥がスニーカーに粘りつく。

丁度今日で十年がたつ。当時5歳だった僕は姉の顔をまともに覚えていない。

死因も姉の人物像も何故かタブーのように誰も話そうとしないこともあり、僕は自分には亡くなった姉がいるということにいまいち実感が持てていない。

一体彼女はどのように歳を重ね、散っていったのだろう…それを少しでも知りたくて彼女の死に場所を訪れたが変な気分になるだけでなにも収穫を得ることはできなかった。

人里を少し離れた木々に囲まれたこの場所は、これといって特に特徴のある場所ではないし野生動物の目撃情報も何故かほとんどない。

なら何故姉はこんなところで死んでしまったのだろうか。

姉について考えているうちになんだか少し薄気味悪く感じてきてしまった。なんともいえない焦燥感に襲われ、僕は急ぎ足でこの場所から離れることにした。


その時___

どこからともなく木々がざわめく音が突然聞こえてきた。遠くの方から徐々にこちらの方へ近づいてきているような…………。

「っ!!!!」

気がつけば走り出していた。

僕の中の生存本能が危険をしらせているのだろうか、ばくばくと心臓がうるさい。

焦燥感のせいで縺れる足を無理矢理動かして我武者羅に音から逃れようと走っていたが日頃の運動不足が祟ったようだ。ついに足が落ちていた小石にぶちあたり、そのまま地面に倒れこんでしまった。

ああ、もうダメだ。

焦りと心音のせいでほとんど機能してなかった耳に、僕の真上あたりの木からガサガサと激しい音が聞こえてくる。

そして、どしんという鈍い音によりその音の正体不明が僕の目の前に落ちてきたことを察してしまった。

つい、反射的に顔をあげる。


そこにいたのは_________________

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