大半の科学がなくなった未来の日本で緩めな冒険譚 [雷禍の落日]
@so14
第1話: 非日常への扉
かつて仙台と呼ばれていたエリアの郊外にある小さな村。
そこには、古びた旧文明の施設跡が点在し、どこかそれでいて のどかな風景が広がっていた。
山々に囲まれた俺の村は、外界から隔絶されたような静けさを持ち、時間が止まったかのような錯覚を覚える場所だった。
杜の都とはよく言ったもんである。
村の中心には叔母の瑞稀が管理する修理工房があり、村人たちの生活を支えている。
「迅斗、そっちの工具箱取ってくれる?」
瑞稀の声が工房内に響く。彼女の声は落ち着いていて、どこか安心感を与える響きを持っていた。
俺は作業台の上に置かれた工具箱を手に取り、瑞稀に手渡した。瑞稀は村で数少ない機械技師であり、迅斗の保護者でもある。
彼女は雷禍によって "使えなくなった" 機械を分解・再利用し、乗り物やモーターなどの ”使えるタイプの” 文明の遺産の修理をしている。
壊れたモーターや配線を巧みに扱う彼女の手は、まるで魔法のように機械に命を吹き込む。
もはやゼロから旧文明レベルの機械を作ることは難しく、補強や修理はとても重要だ。
俺はうちの家で代々管理している神社の掃除や修理が主な仕事だ。元々じいちゃんが管理していたんだが、その代理って感じだ。
「この神社は、これからも村を守る場所であり続ける。瑞稀、迅斗、お前たちならきっとこの役目を果たしてくれると信じている。」
爺さんなのに筋肉隆々な掌で俺の頭をぐりぐりなでて、そう言ってじいちゃんは旅立っていった。
その言葉は、俺とねえさんの心に深く刻まれた。何しろ、その時は珍しく酔っ払ってなかったし、目が真剣だったから。
旅立ちの理由については、誰も詳しくは知らない。
普段は昼から酒を飲んだり夕食の酒を飲んだり夜通し朝まで酒を飲んだりしていたから、日本中の酒を探したいのかもしれない。
村の人から妙に慕われていたじいちゃんのおかげで、俺たちも村の皆から目をかけてもらえていて、特に不自由のない生活を送れている。
神社が立派で入り口から境内までの階段も多くて、掃除とか大変なんだけどね...。いいんだけどね...。
「ねえさん、これでいい?」
「うん、ありがとう。今日はもう終わりにしようか。」
瑞稀が迅斗にしか分からないくらいに微かに微笑んで、思わず俺もにっこり笑顔を返す。
年齢は近いものの、関係としては叔母だし、落ち着いた雰囲気の瑞稀は母親のような存在なのだが、呼び方は「ねえさん」だ。
おわかりだろうか。いや、これは実際に体験してみないとわからない。間違っても、おばさん、などと呼んではいけない。
スパナの錆になりたくなければ。まあ、それはいいんだが。
工房を出ると、迅斗の足元に一匹の猫がすり寄ってくる。
「シロ、また首輪を外したのか?」
迅斗は苦笑しながら、シロを撫でる。シロは嬉しそうだ。その隙に首に手を伸ばした。しかし、シロは素早く身を翻し、逃げてしまった。
「まったく、首輪がそんなに嫌いなのかよ。」
シロは神社に昔から棲みついている猫で、その癒し効果は絶大だ。実質は我が家の飼い猫なのだが、首輪をつけるのは断固拒否してくる。
機嫌がよいときはお腹や肉球を触らせてくれるのに、首輪は絶対に嫌のようだ。隙を見つけてつけても、どうやってか外してしまうし。
別になくてもいいと言えばいいのだが、なんとなくお互い意地になっている感じだ。
---
その日の昼過ぎ、剣の鍛錬を終えた俺は神社から川を挟んで向こう側の裏山を歩いていた。
裏山の小道は木々に囲まれ、鳥のさえずりや風の音が心地よい。
川の向こう側は人の住むエリアではないが、この辺りの危険な動物は夜行性なので、この散歩の時間は一日の中で最もリラックスできるひとときだ。
「シロ、どこに行ったんだ?」
裏山に入ると、シロの姿が見えなくなっていた。まあ、いつものことだ。進むのに邪魔になる枝を刀で切り落としながら獣道を進んでいく。
シロは好奇心旺盛な性格で、よくどこかに行ってしまう。俺はため息をつきながらも、その自由奔放な性格にどこか憧れを抱いていた。
やがて、彼の目の前に古びた建物が現れた。と言っても、裏山にある放棄されたいつもの旧文明時代の研究所だ。
雷禍の影響で放棄されたと思われるこの建物は、村人たちの間で「危険な場所」として知られていた。壁にはひびが入り、窓ガラスは割れ、
内部は薄暗く不気味な雰囲気を漂わせている。しかし、研究所に転がっているものが、時々ねえさんの仕事の素材になるのだ。
ついでに先日の土砂崩れで新たな入り口を偶然見つけてしまったのだ。なんで城の石垣っぽいところに遺跡が出てくるのかは分からない。ただ、そんな細かいことより、これはもう、冒険っぽくて正直わくわくする。
仕方ない。ワクワクするのは仕方ない。
「シロ、また勝手に中に入ったのか?」
ため息をつきながら、開きかけの扉に力を籠める。重い音を立てて何とか扉を最後まで開くと、埃っぽい空気が彼の鼻をついた。
中に入ると、薄暗い空間が広がっていた。壁には古い機械が並び、床には埃が積もっていた。
機械の一部はまだ形を保っていたが、多くは壊れており、まさに過去の遺物だ。今回の発見は、残念ながらちょっと期待外れなのかもしれない。
「シロ、どこだ?」
声をかけると奥の方からかすかな鳴き声。俺はその声を頼りに進んでいく。足元の床板が軋む音が、静寂の中でやけに大きく響いた。
やがて、一つの扉の前にたどり着いた。その扉は他のものとは異なり、奇妙な模様が刻まれていた。
模様はまるで生きているかのように複雑に絡み合い、見る者を引き込むような不思議な力を持っていた。
「なんだ、この扉……?」
扉をじっと見つめ、俺はその不思議な存在感に圧倒されていた。
自分の心臓の音が頭に響き、手のひらに汗が滲む。何かがこの先にある――そんな予感が胸に広がっていった。
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