洗濯機のせんちゃん 〜元・爆走トラック、異世界でLv.999最強の洗濯機として極める〜

@thera

第1話 前世からの絆

女性客「すみませーん、何分待ちですかー?」


俺っちは軽快に返事する


せんちゃん「すいやせん!!ただいま58人待ちですので約30分程っすね!!』


女性客「ラッキー!今日は空いてるのね、それくらいなら全然待てる!』


女性は笑顔で返してくれる。


せんちゃん「あざっす!!俺っちのスキル【芸術錬金】で仕上げたアニメ最新作、【キェエエエイ!!滅するうううう!!の刃】がただいま上映中ですんで、それ見てお待ちくだせぇ!!」


女性客「やっだ、マジぃ!?楽しみにしてたの!ありがとう!!」


彼女は洗濯物を持ったまま椅子に座ると、秒で笑い始めた。へへん、あのシーンは自信作なんでぇ。


せんちゃん「おっと、ご新規のお客さんですか!?こいつぁ、失礼。自己紹介が遅れやした。」


せんちゃん「俺っち、「日本」という、とある異世界から転生してコインランドリーに勤務しております、洗濯機のせんちゃんと申します。以後、お見知り置きを!」


せんちゃん「まぁ言わゆるチート転生ってやつでね、前世で再起不能になっちまった俺っちは、なんとこの世界でレベル999、ありとあらゆる究極スキルを持つ洗濯機として生まれ変わったんでさ。」


せんちゃん「すすぎ・洗い・脱水・乾燥までを僅か30秒で仕上げる、スキル【超高速洗浄】。


悪臭のデバフに対して無敵を付与する、【防臭加工】。


特殊な洗い方が必要になってくる、各種制服や冠婚葬祭用の衣類、ドレス、和服、フルアーマーにも全対応した、【超高速特殊洗浄】」


女性客「せんちゃん!またしゃべり過ぎの語り癖、でてる!!」


せんちゃん「っああああ!!すいっやせん!俺っち、ついつい語り過ぎちゃう癖がありましてですね?いやーー、何なら、視点もごっちゃにするくせもありやして、こないだなんて、ご主人に、<<『せんちゃん、おまえは視点も時系列もごっちゃにするくせがあるからややこしいから直せ。』私はそういうと、せんちゃんは、『えええ、ぜ、善処しやす』と答えた。まったく、こういうこまったとこがあるから頭が痛いが憎めな>>」


女性客「せんちゃーん、現在進行形で!癖でてる!!!癖に対する言い訳の真っ最中に癖を出すとかウケるww」


せんちゃん「たっはーーーー!まーたやらかしちまいやした!!!すいやせん!!!!まぁそんなこんなで、いま大人気コインランドリー、【洗濯のせんちゃん】の看板洗濯機として大忙しなんでさぁ!


まぁそんなこんなで、いま大人気コインランドリー、【洗濯のせんちゃん】の看板洗濯機として大忙しなんでさぁ!


えっ、なんで洗濯機のくせに人間と意思疎通出来るのかって?


そいつぁ……、この世界に来て、前世で自分がめちゃくちゃお世話になった方と再会したときの話になりやす。


あ、【キェエエエイ!!滅するうううう!!の刃】に興味が無いのでしたら、順番までの暇潰しにお聞かせしましょうか!

それでは、拙い話で僭越ですが……、」


ーーーーー


<<【西暦20××年、12月08日、東京、23:57】、



なんだ、ここは。周りで騒ぐ人達の声が聞こえる。


『バイタル低下!!』

『強圧剤を!!』

何の話だ……?


えっと、そうだ。たしか仕事中に愛車のトラックが動かなくなって。

ひとけがいない道だったし車から降りて前方右車輪を確認してて。


で、トラックが勝手に動き出したんだっけ。

あぁ、そうだ。僅かに坂道になってたのか。

それなのにサイドブレーキかけ忘れたまま前方タイヤの確認なんて、馬鹿なことをした。


で、そのまま……気付いたらここなんだけど一体ここは


『電気ショック用意!!』


あぁ、そっか。


『……0時4分、死亡確認』


私、死ぬのか。


あの道なら他の人が犠牲になったりはしてないだろうな、それだけが幸いか。



トラックは…………無事だったかな……。



【ひよこ歴1315年、オウガ・オサメール王国 路上 23:43】



『……ん、……じん!ご主人!!!』


誰かが私を呼んでいる……?あれ、私は……


そうだ、確か気付いたら異世界とやらで二度目の人生を送って……、

魔法だとか錬金だとか色々ある世界に意味がわからなくなって。


僧侶だとか戦士だとか色々転職してみたけどイマイチうまくいかなくて。


ヤケ酒飲んで……ここは、どこだ?


『ご主人!!!』


誰かが介抱してくれてるのか、はは、物好きなヤツもいるもんだ。女なら誰でもいいってか?


ったく、こっちの世もあっちの世も、ロクなやつが、


ーー口に出そうになった途端、言葉を失った。


自分を介抱してくれていたのは、

洗濯機だったからだーーー。


『…………は?』


『ご主人!!目を覚ましたんすね!!あっ、これ、水っす!大丈夫っす!洗濯機が用意した水とは言え、ちゃんと飲めるやつっすから!自分で飲めますか!?』


『……え、いやいやいや、なんで?なんで洗濯機が喋って動いてんだ?……あぁ、さしずめどっかの高名な錬金術師さまがつくったのか?』


『あ、いえ、あいにく自分は失敗品として生み出されたんでさぁ。錬金術師さまの意図通りでは無かったみたいで……ざっくり言うと産業廃棄物として捨てられるところだったんす。でも荷台からご主人さまの姿を見た瞬間、湧き上がる想いにいてもいられなくなって。気付いたら動けるし喋れるしで。と、とにかく薬を、でも金もねぇし。』


『いらねぇよ、こんな程度寝てりゃ良くなる。いつもの事だ。』


『いつもの事なわけないじゃないすか!!前世ではあなた1度も俺っちのために酒なんぞ1滴足りとも飲んでなかったのに!』


『はぁー、前世ぇ?』


『俺っちの目は誤魔化せないっすよ!!!ご主人!!会いたかった!そして謝りたかった!!

あなたは、俺っちを運転してくれていた、運転手でしょう!長年、レディースの時代からずっと俺っちを傍に置いてくださっていた、あの!!』


『トラック……?トラックだっていうのか?おまえが?』


『はい!!!ご主人!!!』


酔いなど一瞬で冷めた


『あのときの事故のか!?お前は無事だったのか!!すまない、発車前にメンテナンスもっと入念にしておくべきだった!私は死んでこの世界に来てしまったがお前は……あ、そうか……この世界に来ているということは……』


『すいやせん、事故が原因で廃車になりました。他の方は巻き込んでませんが、よりによってご主人を殺すことになってしまうなんて……俺っちは……!』


『いいんだ、お前はなにも悪くない。会えてよかった。いや…………やっぱり良くないな、かつての相棒にこんな醜態を見せてしまうだなんて』


『いえ、むしろ俺っちは嬉しいです』


『嬉しい……?私がこんな惨めな姿になっているのがか?』


『違いやす!!以前のご主人はいつでも強かった。いつでも強がっていた。弱さを、俺っちにすら見せてくれなかった。だから、こんな人間らしいところが見れて嬉しいんす。無機物が何言ってんだって思われるかもしれないっすけど。相棒だからこそ、弱さも見せてくだせぇ。じゃなきゃ、どこに手助けしたらいいかわかりやせん。相棒として。相棒だからこそ。知っておきたいんすよ、そういう所は』


『トラック……いや、洗濯機……』


『ナマ言ってすいやせん。自分は元の作製者からは捨てられた身っす。なんで突然動いたり喋ったりできるようになったのかわかんないっすが、これも何かの縁っす。どうか手助けさせてくだせぇ』


『手助けって、何をだい』


『自分を使って、コインランドリー開いてくだせぇ!!!』


『コイン……ランドリー…………?』


『理由はわかりません。しかしご主人への想いが爆発して突然の変異・成長を起こしました。自分はご主人と一緒にいたら、もっと成長した洗濯機になれると思いやす。いや!なりやす!!なってみせやす!一緒に成長しながら、コインランドリー屋になりやせんか?』


『わかった。今世でもよろしく頼むよ、相棒』


『承知致しやした!!』>>


せんちゃん「ーーー以上が、ご主人と再開したときの話っす。えっ、俺っちの回想のはずなのにご主人視点だった……?あっ!…………すいやせん、まーたやっちまいやした!いやぁ、ご主人にもよく言われるんすよ、人から聞いたその人視点の話と、自分視点の話をごっちゃにして話すクセがあるから、ややこしいから直せと。たっはー、いやぁ、すいやせん!!!えっ、その話だと生まれた瞬間からレベル999じゃなかったようじゃないかと?…………あっ!!すいやせん!!まーたやっちまいやした!!

そうなんすよ、自分。パッシブスキルに【異常急速成長】を持ってたらしくて。

まぁ、ご主人と過ごすうちに一瞬で999まで上がっていろんなスキルを手に入れていったっんで、実質レベル999のチート洗濯機として転生した、でお間違いはないかと!まあ来年の今頃にはレベル9999のチート洗濯機として転生したって話にすり変わってたらすいやせんね!いやね、実は過去の自分視点と今の自分視点をも、ごっちゃにして話すクセもある、ややこしいから直せとも言われてやして。たっはー!!!!いやほんとすいやせん!!!!もしかしたら、俺っちもあなたも気付いていないだけで、【今あなたがこの話を聞いているって視点】でまーた何かを語り出しちまってるのかもしれやせんね!!気をつけやす!!あっ、順番になりやしたんで、どうぞ!洗濯物お入れくだせぇ!どのコースにいたしやすか!!」


ーーーー


<<【ひよこ歴1318年、『コインランドリーのせんちゃん』事務室、<0:14>】



『ふぅ、ひとまず終了っと』


私はペンを置く。こっちの世界にも確定申告はある。前世とシステムはほぼ変わってないものの、むしろだからこそ本当にめんどくさい。


『あっちは売上どうなってるかな。またアイツがワケわけわからん話をしてきたー!なんてクレーム入ってなきゃいいんだけど。他は全てにおいて優秀なのに、会話だけは不器用だからな。ま、無機物が喋るってだけで上出来だけど』


時計の音が午前2時を奏でる。


この世界はほぼ前の世界と同じだ。

求人情報に、『僧侶』『戦士』『錬金術師』といった名が連ねること以外は。

前世で言う魔法だなんだがある世界。


とはいえ、魔王が攻めてきているというより、前述した職業も『医療従事者』『自衛隊』『製造者』くらいの感覚だ。


物理や科学の他に、魔法という技術要素があるだけで。


前世でも運転技術以外はからっきしだったが、そこに魔法なんて訳分からんもんが追加されるともう手も足も出ない。


『社会不適合者』の烙印を押されるまで時間はかからなかった。


アイツに。洗濯機に。

前世でトラックとして世話になってた、せんちゃんに再会するまでは。


『しっかし、無機物が無機物に転生とかアリなのかよ、めちゃくちゃだな』


捨てられたと言っていたが、こんな短期間でレベル999にまであがり、動ける喋れる数多のスキルを扱える、なんて、人間でもそんな優秀なヤツはそうそういない。


こんな洗濯機を捨てるか?普通。


そもそも余程の腕前の錬金術師でないと作れるわけが無い。


いや…………いくらファンタジーでめちゃくちゃな世界とはいえ、こんな洗濯機は流石に非常識のレベルだ。


こんな無機物が存在すること自体、唯一無二、人間国宝級の錬金術師であっても作れたなんて話は聞いた事がない。


『アイツの今世での生い立ちは謎が多すぎる』


とはいえ、今の生活はアイツがいることで成り立っている。


そりゃ私だってアイツだけに甘える気はない、細かな事務作業だの営業だのは自営業者として私がやってる。


二人三脚…………いや、一人と1台5脚で今を成り立たせている。


生活のこと以上に、また離れ離れになんてゴメンだ。


だからこそ出生は気になる。

店が流行り、これだけ目立ち始めてるんだ。

『自分が本来の持ち主、生み主だ』なんてヤツが現れたら。


錬金術師としては当然の請求権利である、売上の一部、または購入代金を支払うだけで引き下がってくれれば御の字だが……。

それ以上に厄介な事になる気がしてならん。


『様子、みてくるか』


胸騒ぎがする。

また嫌なことに、何故かその予感はよく当たるんだ。


今世に入ってから尚更そうだ。


ーーーそして、やっぱりそれは。私の予感は当たっていた。


『何をしている』


怒気をはらんだ口調でまずは牽制する。

ーー不審者、二名。けったいな胡散臭い老人とまだ二十歳程度のめがねの兄ちゃんか


目の前には・・・。裸にされ・・・、いや洗濯機なんだから常に全裸か。いや、まぁそこはいまはどうでもいい。

顔色真っ青でうつむいているせんちゃんの姿があった。


『にらまれてますよ?ししょー』


『にらまれてるのぉ』


『ししょーがせんちゃんにあんなことやこんなことするから・・』


『必要なことじゃ』


・・・あんなこと?ーーーせんちゃんに。うちの相棒に何をした?まさか・・。


無機物にヘンタイ行為でもするスキルでも持ってるのか?


それでせんちゃんが…………だとしたらマジでふざけんなよ、何がなんでもぶっ潰す。


洗濯機へのセクハラか……サツは動いてくれっかな……。>>

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