エリートサバイバル「執着する少女の心理ゲーム」
@Villegas
第1話
東洋高校に入学した後、俺は人にアドバイスをする才能があることに気づいた。時として、人は正しい方向へ背中を少し押してほしいだけだったり、ただ誰かに話を聞いてほしいだけだったりする。だから、俺はSNSで匿名の相談アカウントを作り、無料でアドバイスを始めた。
登校中、スマホを取り出しSNSをチェックする。まずは個人のアカウント、それから相談用のアカウントだ。
[新しいリクエストが来ているな]
夜の間に届いたメッセージを開く。
「みんな、あなたならどんな悩みも解決できると言っています。私を助けてくれることを願っています」
[おいおい、ずいぶん評判が広がってるな。どんな悩みも解決できる? それはさすがに大げさだろう……]
それ以来、かなり注目を集めている。キャンパスでも時々その噂を耳にすることがある……。もちろん、それが俺だとは誰も知らないが。
[さて、この人は何に困っているんだろうか]
「自分の人生に希望が持てません。私には才能もスキルも何もないんです」
[自己肯定感の問題か。これは慎重に扱わないといけないな]
「孤独でなければ、まだましだったかもしれません。でも、頼れる人が誰もいないんです。誰も私のことなんて気にかけてくれない。一生このまま、愛されることも価値もないまま生きていくのが怖いんです」
[うわぁ、これは手ごわそうだ] 深呼吸をして、返信を書き込む。[誰にも頼れないと感じているのは深刻だ。孤立は大きな問題になりかねない]
「身近に話せる人はいますか? 家族や友人、クラスメイトや近所の人でも。 『迷惑をかけてしまう』なんて思わなくて大丈夫です。きっと、あなたと話したいと思っている人はたくさんいますよ。相手も、あなたが声をかけてくれるのを待っているだけかもしれません。まずは簡単な会話から始めてみてください。何が起こるか分かりませんよ」
まだ完璧な解決策ではないけれど……。でも、正しい方向への一歩にはなるはずだ。
メッセージを送信し、いつもの決まり文句を添える……。『いつでも相談に乗りますから、遠慮なく連絡してくださいね。』 返信はすぐに返ってきた。
「ありがとうございます! 早速やってみます!」
[おっ、もう元気が出たみたいだな!]
俺は微笑んだ。勇気づけることができたようだ。スマホをロックしてポケットにしまい、不思議な高揚感を感じながら校舎に入る。
席に座ると、クラスメイトたちのひそひそ話が聞こえてきた。
「ねえ、あのネットの相談役の話、聞いた?」
「え? 先週トレンドになってたやつ?」
「そう! 実は、あの運営者ってこの高校の生徒だって噂があるんだよ」
「まさか! 本当に?」
「あのスキャンダルの時に、妙に具体的なアドバイスをしてたのはそのせいじゃないかって……」
彼らは絶え間なくおしゃべりを続けている。手のひらに少し汗をかいたが、奥歯を噛みしめ、一言も聞いていないふりをしてノートを取り出す。
どこにでもいる普通の学生を装う。この仮面さえ壊れなければ、俺の私生活と相談ネットワークは別々の世界のままでいられる。
そして、それが俺にとって都合がいいんだ。
[匿名でいる方がずっと楽だ。もし俺が運営者だとバレたら、面倒なことになる……。これがみんなにとって一番いいんだ]
しばらくして授業が終わり、荷物をまとめて部活へ向かう。
そこは、本の静寂が噂の騒音を消してくれる唯一の場所だ。古い本棚に囲まれたあそこなら、何の支障もなく相談役の管理者でいられる。
ドアを開けると、聞き慣れた元気な声が迎えてくれた。
「やっほー、レンジ!」
「よお、サキ! 授業はどうだった?」
「バッチリだよ、最後のテスト合格したもん!」
彼女は誇らしげに笑う。
[普通のテストに受かったくらいで、そんなに威張ることかな……]
サキとは小学校からの親友で……。彼女はどうしても俺と同じ高校に入ると言い張った。
彼女がどれだけ必死に勉強していたか、今でも覚えている。……俺が勉強を教えるのに何日費やしたことか。
「覚えることが多すぎて……。成績優秀な人たちがどうやってあんな点数を取ってるのか不思議だわ」
「次のテストも、勉強教えてあげようか?」
「えっ?」
「クラスは違うけど、力になれると思うよ」
「うーん……迷惑かけたくないしなぁ」
「迷惑なんて思ってないよ。助けるのは嫌じゃない」
彼女は笑ってウィンクした。
「あはは、じゃあその提案、乗っちゃおうかな。あなたの『付き添い』としてね。他になんかあるわけじゃないけど……。あなたって、いつも言うべきことを分かってるわよね。人気者なのも納得だわ」
俺は笑って後頭部をかいた。
[キャンパスで人気があるわけじゃない。でも、もちろん彼女が言いたいのはそういうことじゃない]
サキは、俺が相談ネットワークを運営していることを知っている唯一の人間だ。親友として、これまでずっと俺を支えてきてくれた。
ちょうどその時、部室のドアが開いた。
部活の3人目のメンバーであるアオイが、いつもの無表情で静かに入ってきた。
「遅れてごめんなさい……」 [彼女の声はとても小さくて、聞き取るのがやっとだ]
「でも、遅刻じゃないよ……」
「そうなの……?」
彼女は時計を見て、顔を赤らめた。
「よかった……」
[クールな振る舞いに反して、彼女はちょっとしたことで動揺してしまう]
アオイはとても静かで内気だが、かなり可愛らしい。
部活に入ってしばらく経つが……まだ時々、居心地が悪そうにしている。
もっと彼女のフォローをしてあげたいが、そうすると俺が知るはずのないことを知っていると漏らしてしまうかもしれない。
アオイが知る限りでは……。
俺たちは彼女が文芸部の見学に来て、入部したいと言った日に出会ったことになっている。
でも本当は、彼女はまずSNSの相談ネットワークを通じて俺のところへ来たんだ。彼女は自分の趣味を恥じていた。
周りにバカにされたくない、と。
自分の心に従って、本当に好きなことを追求すればいいと励ましたら、数日後に彼女はこの部活に入ってきた。
[運がいいんだろうな。今、俺の周りには二人の可愛い女の子がいる]
「アオイ、今日の授業はどうだった?」 サキが尋ねる。
「普通……。書かなきゃいけないエッセイがあるの」
「もしかして、他の宿題はもう終わらせたの?」
「まあ、ええ、一応……」
二人が話している間に、他の部員たちも集まってきた。
「よし、始めよう!」
文芸部の集まりは和やかで、終わる頃には俺もとても上機嫌になっていた。
本当にいいグループだ。
アオイはおそらく、俺たちの誰よりも外国語が得意だ。まだそれを表に出すには内気すぎるけれど。それでも、彼女は前進している。
しばらくして荷物を持ち、家に帰ることにした。校舎を出ようとした時、後ろから声がした。
「よう、レンジ!」
「お疲れ、アラタ。調子はどうだ?」
「悪くないぜ。これから練習だ。お前は部活が終わったところか?」
「ああ」
「へへ、相変わらず本ばっかりだな、中学の時から。お前は変わらないな」
「ただ『遊んでる』わけじゃないよ」
彼は両手を上げて一歩下がった。
「おいおい、分かってるって。悪気はなかったんだ」
「ごめん。時々、ちょっと過剰に防衛的になっちゃうんだ」
中学時代、本やゲームへの興味のせいで、いじめっ子たちに目をつけられたことがあった。でも、アラタと友達になってから状況は変わった。
人気者のスポーツマンの親友に手を出そうとする奴はいない。
「さて、急がないと遅刻しちまう。じゃあな!」
「楽しんでこいよ!」
アパートに戻ると、静寂が古い友人のように迎えてくれた。ため息をつきながら本をテーブルに放り出し、スマホを取り出す。
まずは、普通の学生としての顔を保つためにサキとアラタのグループメッセージに返信する。それから、親指を素早く動かして相談ネットワークのアカウントに切り替える。
[新しいメッセージがあります]
心臓が少し速く脈打つ。あ、今朝のあの子からだ! 少なくとも、誰かに話しかけるという俺のアドバイスはうまくいったらしい。
「先ほどは本当にありがとうございました。あ、私の名前はキラリといいます。あなたに相談して本当によかったです」
満足感がこみ上げる。結局のところ、彼女を殻から連れ出すことに成功したようだ。だが、指をスライドさせてメッセージの続きを読んだ瞬間、俺の笑顔は凍りついた。
「それで……いつかお会いできませんか? 直接会ってお礼がしたいんです。どこかでコーヒーでもどうですか?」
画面を見つめたまま、言葉を反芻する。
[うわぁ……。確かに元気にはなったみたいだけど、これは予想していた方向とは全然違うぞ]
著者からのメッセージ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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