最終話 …六年後

私は25歳になっていた。


祖父から久しぶりに電話がかかってきて、むーこーの結婚式に参列しろと命令された。


相手はどっかのお金持ちのお嬢様で、祖父が強引に進めた縁談らしい。


「新婦はな、美人とは言い難いが、とにかく箱がいい。むーこーも将来安泰だ」


祖父は誇らしげに私に自慢してきた。


大きなチャペルでの挙式、それから広い会場での披露宴。

参列者もかなり多く、私も最初から参列した。

 

むーこーは緊張して真面目な顔をしていた。

花嫁は祖父が言った様に決して美人ではなかったけど、人の良さそうな顔をしていた。


披露宴の席で、私は祖父の兄、それからむーこーの両親、むーこーにとっては叔父や伯母と同席した。


祖父は隣のテーブルで相手のご両親と花嫁の兄妹であろう人達と一緒に座っていた。

ずっとニコニコして上機嫌だった。


参列者による余興も多く、会場は盛り上がっていた。

ふたりの馴れ初めは驚くことに高校の同級生で、そこでは当時から親密な関係と話されていたがそれは嘘だろうなと私は思った。


司会者がサプライズ発言として

新婦が現在妊娠中だと言葉を濁して話した。

はっきりと妊娠を公言しないのは何故かわからないが、それを聞いて場内から喜ばしい歓声があがった。


テーブルに並べられた料理はどれも綺麗な盛り付けで豪華だった。


むーこーと花嫁さんが私たちのテーブルに来てマイク越しに実の両親に向けて言葉を伝えた


「私は養子という形で父さん達だけの息子ではなくなったが、二人は変わらず私の大事な親です。孫を楽しみにしていてください」


そんな事を言って、花嫁の方をみた。


私はむーこーをじっとみつめていた。

その視線に気がついて

むーこーは気まずそうに目を逸らした


私は満面の笑顔で


「睦公さんは、私が8歳の時からエッチなことして、13歳から五年も抱いたけど、私たちに一度も子供できなくてよかったですね。ご結婚おめでとうございます」


そう、大きな声でむーこーに伝えた。


私の声はむーこーの持っていたマイクを通して会場全体に響いた。


むーこーは真っ青な顔になり、はっきりとわかるぐらい身体が震え出した


花嫁はしばらく理解できなかった様で立ちすくんでいたがやがて、その場で座り込む様に崩れ泣き出した。


会場は当然、どよめきで騒然となった。


私は鬼の形相で杖をついてこっちに来た祖父に

杖で数回殴られながら喚かれていた。


それを止めたむーこーの両親も、私に罵声を浴びせていた。



別に、殴られた痛みも、怒鳴られた恥ずかしさも何もない。


ずっと笑顔のまま、むーこーをみつめていた


「プロレスごっこしようって誘われてたの、ずーっと嫌だったわ!」


係員らしき人に引きずられて会場から出される前に大きな声でそうも言った。


あぁ、やっと言えた。


ただ、そう思っただけだった。



ーEND

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プロレスごっこをしよう @Glory821

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