老いたギルドマスターの後継ぎ:候補者にもっとましな奴はいないのか? ~Sランクの問題児に振り回されるのがオチじゃろ~
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第1話 ギルドの凄腕 ― 1
「ギルドマスター、僕はこのギルドから追放されるのですか?」
「いやしないぞ? 何言ってるんじゃ?」
目の前の青年は追放されない事がビックリだったのか、キョトンとした表情を儂に向けた。
彼はエイブ=オネスト。儂のギルド『
ギルドは色々な依頼を受けて、ギルドメンバーが組んだパーティーにその依頼を割り振っている。
クエストと呼ばれる依頼のほとんどは人を襲う魔物の討伐クエストが多い。
最近、エイブは魔物との戦闘で片腕を失った。
俺に呼び出されて、「もう使い物にならないからクビ」とか言われる覚悟をしていたらしい。
「エイブ、確かに君は弓の扱いが一流じゃ。その弓が使えなくなったのは非常に惜しい。でものぅ、儂は君の本当の力は他にあると思うんじゃ」
「僕の本当の力…? でも、僕、魔法とか使えませんよ?」
「君はAランク・パーティー『ホットなドッグズ』のパーティリーダーじゃろう? 結成から3年、受けたクエストは全て手早く完成、今回の件も不利な状況からちゃんと討伐を成し遂げたそうじゃないか」
このパーティーは三人組でそうとう手強い魔物を倒してきた。
その全ての作戦を立てたのはエイブだったらしい。
頭の回転が速いとパーティーメンバーに称えられている。
性格も真面目で、なんと田舎の両親に毎月そうとうな額を仕送りしているらしい。
しかもイケメンで人当たりが良いと来た。ギルドの受付嬢の間でもかなりの人気者じゃ。
「のぅ、エイブ、儂の仕事が何か分かるか?」
「ギ、ギルドマスターじゃないんですか?」
「おいおい、『ギルドマスター』は肩書きじゃろ。なら『ギルドマスター』とは何をする人かのぅ? ギルドをマスターするってのはどういう事じゃと思う? まさか儂がこの机の後ろで唯々偉そうにしているジジィだと思っとらんだろぅ?」
真面目なエイブは一度しっかりと考えてくれた。本当に素直でいい子じゃ。
「EからBランクまでのクエストはランクが合うメンバーなら誰でも受けていいですし、依頼者とのやりとりも細かい仕事はマスターよりも受付のお姉さん方が対応している様に見えます」
「そうじゃな。まとまった報告は聞いたりするが、その辺は任せてるのぅ」
「Aランクに上がってから、パーティー指名でクエストを依頼される様になりました。つまり、AランクとSランクのクエストの承諾と振り分けがギルドマスターの主な仕事ですか?」
「まぁ、そんなもんじゃ」
他にも色々あるが、儂が言いたい事は別じゃ。
儂は立ち上がってエイブの傍へ行き肩を組んだ。身長は儂よりかなり高くて、若くて引き締まった体をしておる。
「どうじゃエイブよ、君もギルドの仕事をやってみないか?」
儂はもうジジィと呼ばれてもおかしくない年じゃ。そろそろ次のギルドマスターを誰にするか決めないと死んだ時、心配で成仏できないじゃろう。
そして、エイブが怪我する前から彼を候補者として考えていた。
実績もあるし、社交的でギルド内外に友人が多い。
エイブなら誰も文句ないじゃろう。
そしてきっと彼なら、あの問題児のSランク共をなんとか手懐けられるに違いない。
でも流石に急に「ギルドマスターになってくれ」とは言えん。
まずはギルド職員として馴染んでもらって、そこから次期マスターとして必要な事を少しずつ教えていこう。
本人はまだ黙ったままじゃ。きっとまだ冒険者としての自分を諦めたくない気もあるのじゃろう。
「エイブ、君の本当の力はその鋭い頭脳じゃ。ギルドには君のその頭脳と経験が必要なんじゃ。どうかもう一度君の力を貸してくれないかのぅ?」
「ありがとうございます、ギルドマスター」
エイブと握手を交わした。
「気持ちはありがたいのですが、お断りします」
えー?
断る? ほぇ? なんでぇ?
なんで断るのに握手するんじゃ? なぜ儂に笑顔を向けてくる?
「大丈夫ですよ、ギルドマスター」
いや何が?
大丈夫じゃないが?
エイブが断ると、候補者かなりシビアなんじゃぞ?
「そんな顔しなくても、僕は大丈夫です。こんな体になった僕を気遣ってくれたのですよね? でも、無理に仕事を用意してもらわなくても――」
「無理にではないぞ? 儂は本当に君の能力を買っているんじゃ」
「いいんですよ、ギルドマスター。僕は怪我しなくても実家に帰るつもりだったのです」
エイブはポケットから一通の手紙を出して、儂に渡した。
開くと、エイブは重要な文を指してくれた。
父親が病にかかったと書かれていた。
「今回のクエスト報酬でかなり余裕ができましたし、両親が心配なので田舎に帰ろうと思ってたんです」
それを言われたら引き止められない。
儂は「そうかい…」と呟いた。
「今までありがとうございました!」
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