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一体何があったのか気になるところだけど、それよりも、家に帰って何をされるのかそっちの方が気になり過ぎて、今でも鼓動が鳴り止まない。
ただでさえ頭がパンクしそうなのに、これ以上櫂理君に触れたら、私はもう抗えないかもしれない。
そんな不安に駆られていると、次の授業が始まる予鈴が鳴り、ふと部屋の隅にある壁掛け時計に目を向けた。
結局サボったのは一限分だけだったようで。これ以上一人で居ることも嫌になり、私は大人しく部屋を後にする。
それから美南にメッセージを送って、教室に戻ろうと足早に廊下の突き当たりを曲がった時だった。
「いた!」
丁度向かいから来た男子生徒の肩にぶつかり、私は慌てて頭を下げる。
「すみません、私の不注意で」
「……いや。俺の方こそ」
特に文句を言うことなく、男子生徒は軽く会釈してからこの場を去って行った直後。
足元に転がっている茶封筒がふと視界に入り、拾おうと手を伸ばす。
すると、突然スマホの着信音が鳴り出し、急いでポケットから取り出すと、画面には美南の名前が表示されていた。
「もしもし。……うん、もう大丈夫。ごめんね、迷惑かけて。今から戻るから」
どうやら私のメッセージに直ぐ反応してくれたようで、申し訳ないと思いながらこれまでの経緯を話し、通話を終了させてからポケットにスマホをしまう。
そして、改めて床に落ちていた封筒を拾い、来た道を駆け足で引き返した。
「……やっぱり、もういないよね……」
案の定。通路には男子生徒の姿は見当たらず、私は小さく息を吐いて肩を落とす。
おそらく、この茶封筒の落とし主はあの人で間違いないと思うけど、生憎どこの誰なのかまったく分からない。
このまま持っていても仕方ないので、後で先生に落とし物として届けることにして。
私は茶封筒を一旦自分のポケットにしまい、教室へと戻っていった。
◇◇◇
「…………宇佐美、これどんな生徒が落としたんだ?」
「え?」
授業が終わり早速拾った茶封筒を担任の先生に届けると、中を確認された後、何やら神妙な顔で尋ねられ、私は一瞬目が点になる。
「……あ、えっと……確か髪は黒色で身長は平均的で、目が細かったような気がします」
一先ず、一時間前の記憶を掘り起こしてみるもこれといった印象がなく。
黒髪男子はこの学校では珍しい方なので特徴になるかもしれないけど、それ以外はあまりパッとせず、先生は再び渋い顔をしてしまった。
「あの、それってそんなにまずいものなんですか?」
「いや、何でもない。お前は気にするな。もし落とした生徒が分かったら直ぐに教えてくれ」
まさかこの茶封筒一つでここまで深刻な雰囲気になるとは思いもよらず。
恐る恐る尋ねてみても、先生は私の質問に答えようとせず、そう言い残すと足早に職員室の奥へと行ってしまった。
一体あの封筒の中には何が入っていたのか。
こんなことになるなら中身を確認すればよかったかな……。
そんな考えがふと過ったけど、このまま何も知らない方がいいような気がして。
とりあえず目的は果たしたので、私は職員室を出てから教室に戻ろうと踵を返した時だった。
「あっ!」
目の前にはあの男子生徒が立っていて、思わず声をあげてしまった。
__その次の瞬間。
突如腕を掴まれ、そのまま教室とは反対方向に無理矢理引き摺られる。
「ちょっと何なんですか!?離してください!てか、あなたが落とした封筒さっき先生に届けましたけど!?」
何故急に連行されているのか意味が分からず抵抗を試みるも、男子生徒の手はびくともせず、どんどんと人気がない通路へと引き連れていく。
一体私が何をしたというのだろう。
いくら問いかけてみても男子生徒は一向に口を開こうとせず、状況が全く理解出来ないまま恐怖心がどんどんと募り始めていく。
そして、誰もいない空き教室に押し込められた途端、背後から何者かに口を塞がれ、激しく抵抗する。
けど、強い力で体を押さえつけられてしまい、徐々に体力が消耗していく中、段々と意識が朦朧とし始め、いつの間にか記憶がプツリと途絶えてしまったのだった。
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