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その後、櫂理君と雨宮君の話は瞬く間に広まり、まるでこれからイベントでも始まるかのように彼らの周りには沢山の野次馬が集まってきた。
先生達も生徒達を咎める気配はなく、この学校は本当に大丈夫なのかと今更ながら心配になる。
ヤンキー校至上最強クラスの櫂理君と、突然現れた謎の転校生。
二人の決闘は校内序列に影響する可能性もあり、周りのヤンキー達は固唾を飲んで見守る中、私と圭君も万が一に備え中庭の隅で待機した。
こうしてほぼ全生徒の注目を浴びているにも関わらず、全く気に留める様子がない櫂理君と雨宮君。
そして、ついに中庭の中心まで辿り着いた時だった。
不意打ちの如く、櫂理君は突然雨宮君に回し蹴りをして襲い掛かる。
けど、瞬時に反応した雨宮君は片腕で櫂理君の攻撃を防いだ。
「へえー。あんたの強度なかなかじゃん。大抵の奴らはこれで吹っ飛ぶのに」
それを物珍しそうな表情で眺める櫂理君。
すると、即座に雨宮君は櫂理君の間合いに入り、彼の頬に勢い良く拳を一発お見舞いさせる。
「お前の耐久性も悪くないな」
しかし、ビクとも動かない櫂理君に、今度は雨宮君が感心の目を向けた。
まるで品質検査をしているようなやり取りに、二人とも本気を出しているのかそうでないのかがよく分からない。
__そう思った次の瞬間。
今度は櫂理君の反撃で、雨宮君の胸ぐらを掴み自分の方へと引き寄せた途端、溝内に膝蹴りをくらわせる。
流石に衝撃が強かったのか。
雨宮君は短い唸り声をあげると、お腹を抑えながらその場でよろめき、一歩後退した。
しかし、弱っているように見せかけ、雨宮君は目にも止まらない早さで蹴りをかまし、直撃した櫂理君は地面に倒れ込んだ。
「櫂理君!」
圭君と美南には黙って見てろと言われたけど、やっぱり弟が傷付けられているところを黙認することなんて出来ず。
居た堪れなくなった私は、その場に割って入ろうと駆け出したけど、すぐさま圭君に止められてしまった。
地面に倒れたまま微動だにしない櫂理君。
そんな彼を警戒しながら、雨宮君が一歩近付いた時だ。
不意に櫂理君は倒れたままの状態で雨宮君を足払いし、よろけたタイミングで即座に起き上がると、間髪入れず彼の頬を思いっきり殴る。
続けて胸元目掛けて強く蹴り付けた瞬間、その足をタイミング良く掴んだ雨宮君はそのまま櫂理君を投げ飛ばす。
すると、上手く受け身を取った櫂理君はまるでバネのように地面を蹴り上げ、加速したまま雨宮君に強力なタックルをした。
「……ふーん。概ね互角か」
そんな二人の激しい衝突を冷静に分析する圭君。
「ね、ねえ圭君。そろそろ止めた方がいいんじゃない?」
未だ手を出そうとしない圭君に痺れを切らした私は彼を催促する。
櫂理君は顔に青あざが出来、雨宮君は口から血が流れていて、このまま二人を放置したらいつか大怪我に繋がりそうで。
まだ立っていられるうちに、何とかしてこの喧嘩を早く止めて欲しくて、必死に懇願する。
「大丈夫。長期戦になればなる程打撃力の強い方が有利だから。おそらく俺が止めずとも、もうすぐ勝負はつくと思うよ」
終始落ち着いた様子で圭君がそう断言したのとほぼ同時のタイミングだった。
櫂理君のアッパーパンチが雨宮君の頬に入り、後ろによろけた直後。
容赦なく胸ぐらを掴み、そのまま地面に体を強く叩きつける。
すると、頭の打ちどころが悪かったようで、雨宮君の意識がそこでプツリと途絶えた。
こうして、二人の激しい攻防戦はようやくここで終結し、私達は倒れた雨宮君を保健室に運ぶため、急いで彼等の元へと駆け寄った。
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