レベル0の俺、世界で唯一の『成長』と『夜の親愛(バフ)』で無双する 〜追放されたけど、隣にいる幼馴染(Lv.80)と結ばれるたびにステータスが万倍になる件〜

@gdragon24

第1話:世界で唯一のレベル0

「おい、見ろよ。また『無能のアルス』が溝さらえをしてるぜ」


「レベル0なんて、家畜以下だ。魔力値も筋力値も、生まれたばかりの赤ん坊にすら負けてるんだからな」


 石造りの街並みに、容赦のない嘲笑が響く。俺、アルスは深くフードを被り、黙々と泥を掻き出した。


 この世界では、生まれた瞬間に『ステータス』が固定される。

 一般的な成人男性の平均値は全項目で『20』前後。レベル10の兵士ともなれば『50』を超える。


 だが、俺のステータスウィンドウに並ぶ数字は、残酷だった。


【レベル:0】

【筋力:1 / 敏捷:1 / 耐久:1 / 魔力:0】


 魔力は存在せず、体力は赤子同然。重い荷物を持てば腰を砕き、数分走れば呼吸が止まりそうになる。十八年間、俺はただの「お荷物」として、誰からも必要とされずに生きてきた。


「アルス、もういい。今日で契約は打ち切りだ。……街からも出て行ってくれ」


 成人式の直後、雇い主から冷たく言い渡された。戦うどころか、日常の労働すら満足にこなせない「レベル0」を養う余裕は、この街にはない。


 すべてを諦め、ボロ布のような背負い袋を担いで街の門をくぐろうとした時だった。


「アルス! 待って!」


 背後から響いたのは、凛とした、だがどこか焦りの混じった声だった。振り返ると、銀髪の少女が息を切らして駆け寄ってくるところだった。


 リーシャ。幼い頃から一緒に育った、俺の唯一の友人だ。

 彼女のレベルは『80』。若くして王立騎士団への入団を約束された、この街の至宝である。


「リーシャ……どうして。君は今日、入団式だったはずじゃ」


「そんなの放っておけるわけないでしょ! アルスを追い出すなんて、この街の人はどうかしてるわ。……私も行く。あなたみたいな危なっかしいのを、一人で放っておけないもの」


 彼女は呆れたように笑いながら、俺の細い腕を掴んだ。その瞳には、不当な扱いを受ける親友への強い憤りと、放っておけないというお節介なほどの使命感が宿っている。


「ダメだよ、リーシャ。君には輝かしい未来がある。僕みたいな無能に付き合う必要なんてない」


「友達を見捨てる騎士なんて、こっちからお断りよ。それに……あんたが今まで、人知れずどれだけ努力してきたか、私は知ってるわ。その背中をずっと見てきたんだから」


 彼女はいつものように、悪友へ向けるような屈託のない笑顔を見せた。俺たちの間にあるのは、積み重ねてきた確かな友情――それだけのはずだった。


 ***


 街の外に出た俺たちは、森の街道を歩いていた。一刻も早く次の村へ着かなければ野宿になる。

 だが、運悪く茂みが大きく揺れた。


「キュイッ!」


 現れたのは『フェザーマウス』。体長十センチほどの、羽の生えたネズミだ。

 普通の大人なら一蹴りで終わる、世界最弱の魔物。しかし、レベル0の俺にとっては、命を脅かす天敵である。


「リーシャ、下がって……っ! ここは僕が!」


「何言ってるの!? 下がるのはアルスの方よ!」


「いやだ……! 追い出されて、ついてきてもらって……せめて一度くらい、自分の足で立ちたいんだ!」


 俺は震える手で、道端の鋭い石を拾い上げた。

 フェザーマウスが矢のように突っ込んでくる。速い。俺の『敏捷:1』では、動きが残像にしか見えない。


「ぐあぁっ!」


 鋭い前歯が腕をかすめ、血が吹き出す。視界が火花を散らすほどの激痛。膝が折れそうになるのを、親友の前で無様に果てたくないという意地だけで踏みとどまった。


「死んで、たまるか……っ!」


 三度目の突進。俺は避けるのを捨て、カウンターで石を叩きつけた。

 ぐしゃり、と鈍い感触が手に伝わる。ネズミは地面に転がり、動かなくなった。


「はぁ、はぁ……た、倒した……のか?」


 その瞬間、世界が静止した。

 脳内に、この世界の理を無視した無機質な声が響き渡る。


『――経験値を獲得しました。個体名:アルスの特性「空の器」により、成長ロックを解除します』


『レベルが上昇します。Lv0 → Lv1』


『全ステータスが上昇しました。筋力:1 → 10 / 敏捷:1 → 10 / 耐久:1 → 10 / 魔力:0 → 5』


「なっ……!?」


 全身の細胞が沸き立つような、凄まじい熱量。傷口が瞬時に塞がり、鉛のように重かった体が、驚くほど軽くなる。


「アルス……? 何よ、今の光……」


 リーシャが驚愕に目を見開く。彼女の視線の先、俺のステータスウィンドウが眩い光を放ちながら更新されていた。


「リーシャ、レベルが……上がった。僕のレベルが、上がったんだ!」


「……え!? 固定のはずでしょ……? 嘘、そんなことって……!」


 リーシャは驚きのあまり、俺の両手を強く握りしめた。その真っ直ぐな瞳が、至近距離で俺を射抜く。その瞬間、脳内に再び「声」が響いた。


『――個体名:リーシャとの「共鳴」を感知。特殊スキル【親愛の共鳴】を登録します』


『効果:対象との心の距離、および身体的接触に応じて、全ステータスに補正倍率が加算されます』

『現在の関係性:信頼(友情)……補正:1.1倍』


 握りしめた手から、微かな、だが確かな力が流れ込んでくる。

 レベルアップという未知の希望。そして、まだ本質に誰も気づいていない「共鳴」の力。


 絶望の底にいた「レベル0」の反撃が、ここから始まる。

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