偽りの章②

 さかのぼること千年前、ある遺跡の発掘調査が行われていた。

 長期に亘る作業の結果、様々な遺物や美術品が出土した。

 しかし、中には持ち運び困難な石板に書かれた文字が大量に発見された。

 発掘調査に乗り出していた考古学者が見聞するも、全く未知な理解不能の文字や記号であった。

 現地住人に尋ねるも、彼らも扱わない文字があった。

 行き詰まる調査に光明こうみょうが差したのは、シャーマンの娘であるソーメには、全ての文字や記号の意味が理解でき、文書に記せることであった。

 しかし、ソーメは内容を理解するとかたくなに表記を拒んだ。

 父親の説得で嫌々ながら紙に内容を記したソーメだったが、やはりその量は膨大で100冊の書物に書き記された。

 しかし、後になって確認すると、石板の一つ一つの内容が僅かに違うだけで、大まかな記述は同じであった。

 それは、その昔、この地を治めていた王族の話だった。

 調査隊はソーメが書き記した書物を公文書館に寄贈したが、翌朝には100冊の書物全てが盗み出されていた。

 調査に加わった考古学者はソーメに再び記述を願うが、遺跡は何者かに爆破され、瓦礫の下に埋もれてしまっていた。

 その後、画力に長けていたソーメは記憶を頼りに100枚のキャンバスに、書物に書いた内容を描いてみせた。

 考古学者や歴史専門家は絵画の中から当時の様子を探り出そうとしたが、絵画が全て揃った翌日、またしても全て盗難に遭った。

 2度の窃盗の主犯はある親子であった。

 王族に仕えるシャーマンである父親とソーメは、盗み出した書物と絵画を各部族の長に受け渡した。

 ソーメは書物に書いたことは、ほとんどが偽りで1冊の本、1枚の絵では意味を成さないことを死ぬまで黙っていた。

 石板に彫られていた文章は、一族に伝承される言い伝えを根底から否定するものであり、あれを認めてしまうと現在シャーマンとして王家一族に仕える自分たち、国をひとつにまとめ上げた国王の存在が虚偽の上で成り立つ真実だと白日の下に晒されることとなる。

 偽の国王の真実は皮肉にも、その昔、石板に刻まれた真の国王の末裔まつえいであるソーメによって隠蔽いんぺいされ、さらにその子孫である染園ソメゾノが千年の時を超え、再び白日の下に晒し出した。


真実の章①へ続く……

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