二文字だけで、会いたいきみへ。
西奈 りゆ
1.嫌悪
文芸部というのはかたちだけで、それは部活に所属するのが必須だった俺たちの高校での、帰宅部員希望者の避難所だった。
実際、文学オタクの部長が受験を控えて姿を見せなくなると、活動の場である図書準備室の扉を開くものは、副部長も含めて、呆れるほどに減った。
一応、ごくごく一部の人間が、何かしらの作品を公募に出しているという噂は聞いていたが、それを確かめる程度にすら互いの面識がなくて、俺たちの世代で文芸部はすでに、有名無実の空中分解状態だった。
俺がその日、もはや部室といってもいいのかも怪しいそこにやってきたのは、健気に部活動にいそしむため、という理由じゃ、全然なかった。
なんとなく、すべてが面白くなかったのだ。
俺の通っている高校は特に進学に力を入れているわけでもなく、かといって商業や工業など、特定の分野に力を入れた学校でもなかった。ようは、文字通りの普通高校だった。在校生は、たぶん中学の成績は、下か、中の下あたりをうろついていたんじゃないかというやつらがほとんどで、真面目に授業を受けているのは、一握りだったんじゃないかと思う。けれど荒れているかというとそういうわけでもなくて、そういうやつらは時折派手なバイクで冷やかしには来るものの、基本的には学校にほとんど姿を見せなかった。
代わりに教室を埋めていたのは、能面を被ってきたかのように黙々と板書を書き写す、「その他大勢」と括りたくなる名無しの連中で、それはやたら長い板書を繰り返す教師も同様だった。今となってはぶん殴りたくなるくらい恥ずかしいことだが、俺はそいつらを内心見下していた。
俺は、こんなところにいるはずじゃなかったんだ。俺は、お前らとは違うんだと。
俺がそこに入学したのは、志望したからじゃなかったから。そのとき俺がいたのは、絶対に必要がないと思っていた、滑り止めの高校だったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます