第2話

 それはつまり、取材というよりお客様。少しだけ、少女の緊張が緩む。


「それなら……まぁ……いい、のかなぁ……」


 首を傾げなら自分自身に言い聞かせる。自問自答。結論は出ないけども。


「んじゃま。改めて、自己紹介お願いします」


 乗り気になったところをシャノンは見逃さない。最初から。張り切ってさぁ。いこうか。


 ふぅ、とひとつ少女は息を吐く。


「……はい、ベル・グランヴァルと申します。趣味は……ピアノとか。細かい作業とか」


 あとは散歩とか。カフェを巡ったりとか。ありすぎるので割愛。


 ひとまずは撮影が一歩進んでことにシャノンは安堵。


「ふむふむ。ピアノか。いいね、そういうとこ通ってるんだって?」


 そう、店主から話は受けている。夢のある若者。まだ自分もそう昔の話ではないはずなのに、リアルな学生を前にするとなんとも言えない感覚に陥る。羨ま。


 自身の通う音楽科のある学校。ベルはたくさんの友人の顔がふと思い浮かぶ。


「はい、まぁ。夢はフローリストとピアニスト……みたいな」


 どっちか、は選べない。選びたくない。未来の道を狭めたくないから。二兎を追って、二兎ともモフモフしたい。


 その欲張りなところ。シャノンとしても嫌いじゃない。


「贅沢だねぇ。いいじゃんいいじゃん。で、なんでここで働こうと思ったの? 他にも色々あるでしょ? パリには」


 ぐいぐいと距離を縮める。いい写真を撮るにはいい関係から。その構築段階。それに知らない世界は面白い。フォトグラファーとフローリスト。私も両方やっちゃおうかな。


 少しだけ、ベルは悩む。理由はたくさんある。その中でも強いていうなら。


「すごく、勉強になるというのが一番でしょうか。花もですけど、音楽……特に『音』というものについて」


「お店の名前でもあるからね。〈ソノラ〉はそういう意味だし」


 おもむろにシャノンは店の外を見る。路駐だらけの通り。そこを歩く人々。


 音、という店にしては外の音はほとんど聞こえない。切り離された世界。パリの一画に存在する異世界、のようなもの。彼女としても長らくパリで生活していて、こんな場所があるのかと躊躇ったくらいに。


 店に入った瞬間から、どこかに飛ばされたかのような。ドアベルの音だけが現実感を醸し出していて。

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