我は呪いの書である
@Jbomadao
本編
我は呪いの書。中世ヨーロッパにて、魔女狩りを逃れたモノホンの魔女が、迫害をした人間どもへの憎悪から復讐のため、生涯をかけて様々な呪法を書き記した黒魔術書である。
使用すれ相手はもちろん、術者本人も破滅する。まさに禁忌の書物。
そんな我は今、巡り巡って現代日本のオカルト研究部なる連中の下に辿り着いた。
「ふふふ……ようやく手に入れたわ。本物の呪いの書! この本があれば、あの女に痛い目を見せることも不可能じゃないわ……」
そう言って不気味に笑うこの少女こそ、私の現在の主・時田天音(ときたあまね)である。
彼女はこのオカルト研究部の部長であるが、ある日、この高校の生徒会長である金宮瑞穂(かなみやみずほ)に実績がないことを理由に廃部を告げられた。
自身の城を壊された恨みに引き寄せられた我は、この愚かな主の下へ馳せ参じた。
呪う対象だけでなく、術師本人も破滅へ導くために……
「部長、やっぱり止めましょうよ」
「なんか、嫌な予感がしますし……」
「ホラー映画だとロクな末路になりませんって」
部長の暴挙を止めようと、部員たちが説得するが、天音は「黙りなさい!」と一喝。
「あのクソ女が私たちにした仕打ちを思えば、当然よ‼ むしろ天罰だわ‼」
ヒステリックに身勝手な持論を振り回す。
しかし、それに動じず、副部長の芳野陽一(よしのよういち)は説得を続ける。
「部長、やっぱり駄目ですって。人を呪わば穴二つって言うじゃないですか」
「うるさいわね‼ あんた、あの女の肩を持つつもり!?」
「普通のことを言っているだけですよ。大体、部長は生徒会長のことを目の敵にしているけど、なにが気に入らないんですか?」
「ふん、そんなの決まってるわ‼ 顔面偏差値があたしとそんなに変わらない癖に、いい子ちゃんぶって、みんなからチヤホヤされてるところよ‼」
実際には金宮瑞穂は普通に性格も良く、職務に誠実なために普通に人望があるだけである。対して天音は若干陰気でオカルト部と言うアレな部活の部長。
ぶっちゃけ単純な僻みである。
(だからこそ、我が目をつけたのだがな)
こう言う愚かな人間ほど扱いやすい者はいない。
このまま儀式を行えば、辺り一帯に呪詛を振りまくことが可能だ。
なので、さっさと話しを切り上げて、一人でもいいから儀式を強硬してほしいのだが……
すると、芳野は真剣な顔でこんなことを言い始めた。
「じゃあ、金宮先輩を慕う連中の100倍、僕が部長を想いますから、それじゃダメですか?」
『……………………』
……話の流れが変わってきたな。
「な、ななな、なに言ってんのよ⁉ バカじゃないの⁉ バッカじゃないの⁉」
突然の宣言にあたふたし出す天音。しかし、芳野は止まらない。
「じゃあ、ハッキリ言います。部長、いや時田先輩、好きです‼ つき合ってください‼」
「にゃ!?」
『………………』
……うん、これは呪いの儀式とかしてる場合じゃないな。
我は呪いの魔術書。すべてを破滅に導く存在。
だが、それはそれとして、こういう甘酸っぱいイチャラブ大好き侍で候。
と言うのも、我を作った魔女と言うのが「結婚するなら高学歴・高収入・高身長で年収1000万(現代換算)じゃないと~」とか抜かすような奴で、その性格の所為で生涯独身。
それで妬んで悪事を繰り返したのが魔女狩りに会った原因であった。
そのせいか我は、創造主と対照的に、こういう甘酸っぺぇ話に興味津々なのである。
もう、大好物なのである。
話を元に戻そう。当然、天音はテンパりながらもなんとか、話を逸らそうとしている。
「いや、だから、なんで⁉ む、ムードとか考えなさいよ⁉ 大体、他の連中も見てるのに!?」
「あ、白石さんなら、トイレに行きましたので」
「うそぉ!?」
その白石だが、今さっき、トイレから帰ってきたぞ?
両手を口に当てて顔真っ赤にしている。
今は息を潜めて、廊下から様子を伺っている。
「あ、新井は!?」
「新井はバイトの先輩が急病で休むことになって、ピンチヒッターとして抜けました」
「いつの間に!?」
「部長が延々、愚痴ってた間にです」
尚、新井だがバイトに向かったのは嘘である。
だって、窓からこっそり、こっちの様子を伺ってるもん。
サムズアップをカメラ目線で送ってるもん。うざいな、こいつ。
「話を元に戻しますが、時田先輩、僕と付き合ってください!」
「あ、あう……」
ずいっと壁ドンされ逃げ場を失った天音。
我は知っている。この女、顔面偏差値は高い割に恋愛偏差値は哀れなことになっているのを。
むしろ、彼氏いない歴=年齢の方程式を証明している。
このままでは将来は会社の嫌味なお局ルート一択だ。
(どうする? ここで断れば、こいつのようなもの好きは二度と現れんぞ?)
事の成り行きを見守る我。
天音は顔を赤らめながら「ど、どうして私なのよ……?」と芳野に問う。
「先輩、覚えてますか? 僕の前にいた映画研究部が、廃部になった時のこと」
「え? えぇ……」
芳野が以前所属していた映画研究部は質の悪い不良生徒に乗っ取られ、たまり場にされてしまい、タバコの不始末が原因でボヤ騒ぎが起き、廃部とされてしまったのだ。
「自分は悪くないのに、居場所を奪われ失い、途方に暮れていた僕を、先輩はオカルト研究部に誘ってくれましたよね」
「あ、あれは、部員がいなくなくて、このままだと廃部になっちゃうから、その……人数合わせで……」
「それでも僕は、新しい居場所をくれた先輩に感謝してるんです。そして、一緒にいるうちに、あなたのことが好きになったんです……」
ストレートに好意を伝えてくる芳野に天音は押される一方だ。
天音はツンデレ属性であると同時に、チョロイン属性を併せ持つ。故に、芳野の真っ直ぐな告白はこうかはばつぐんだ。
タイプ一致ダメージ倍率4倍。おまけにきゅうしょにあたっている。
これは落ちる。すると天音は少し恥じらいながら、芳野に尋ねる。
「わ……私でいいの? 私、重い女だよ?」
ふむ……せめてもの抵抗に、男子が躊躇しそうなセリフをセレクトしたか。
しかし、効果はなかったようだ。むしろ……
「軽い方が困ります。それに、僕も重い方だからお相子です」
カウンターが決まった。
天音は完全に墜ちた。
空いた部室で二人は抱きしめ合い、ここに二人の男女の愛の物語が始まるのだろう。
お幸せに。
……なので、白石よ。スタンディングオベーションはやめろ。
あと新井、後方理解者面すんな。なんかイラッとする。
……さて、いい物を見せてもらったついでに余談を語ろうか。
あの後、天音は結局呪術を行わず、代わりに芳野が企画したホラー映画の撮影を決行。
動画サイトに上げるとバズり、それなりに高評価を会得。
学校の宣伝にもなったためと、金宮生徒会長は廃部を撤回。晴れて部は存続を果たされた。
そして、現在。我は芳野と天音の家の神棚に飾られている。
……なんでこうなったかと言えば、一応は本物で希少価値もあるから、記念にと天音が飾ったのだ。
まぁ、別に推しカプを延々眺められるので構わないが、一応我、呪いの魔導書だから神棚に飾られると浄化されるからやめて欲しいなー。
そんなことを考えていた今日この頃、二人の娘と目が合った。
どうやら、霊感が強いのか、我が意思を持つ魔導書であることに気づいているようだ。
『ちょうどいい、娘よ。我を使い、この世界に破滅をもたらさぬか?』
「ひとをのろわばあなふたつ!」
『うむ、難しい言葉を知っておるな』
キチンと怪しい誘いを断るとは、教育が行き届いておるな。
こうして我は、日がな一日、この一家の生末を見届けるのであった。
「あんな、こないだ、おかあさんが」
『どうした娘よ?』
「夜に高校生の時着てた制服着ててん」
『……触れないでやってくれ』
……そのうち、二人目できるかも知れぬな。
◆登場人物◆
・時田天音 B99W56H100
オカルト研究部部長。普段は快活で面倒見がいいが、追い詰められると迷走するタイプ。ツンデレでチョロインで重い女。
結婚後も夫の希望で制服を着るくらいにはラブラブ。
ヒト〇ゲを選んで、2番目のジムで詰んでギャン泣きしたことがある。
芳野曰く「高火力ばっかの技構成じゃなくて、補助とサブウェポンも入れてください」
・芳野陽一
オカルト研究部副部長(元映研)
不良たちのやらかしで、廃部になりふてくされたところを天音に拾われ、彼女にホレる。で、今回晴れて願いが成就。最終的に結婚、一人娘を授かるなど順風満帆な人生を送る。なお、不良たちは後に筋トレしてシメた。
ゼニガ〇派で600族中心のガチパ。ピンチになるとベトベ〇ンのだいばくはつを使う。
・金宮瑞穂 B92・W61・H92
名前しか登場しない生徒会長。
オカルト研究部を廃部しようとしたが、実績を上げたら撤回する程度には話が分かるお方。
伝説パーティーで勝負を挑んだら、彼氏にフラれた過去を持つ。
オカルト研究部の作った自主制作映画を見て、失禁・嘔吐して、またフラれた。
もう泣きたい。
・白石&新井
推しカプのイチャラブを眺める人生であった。
・娘ちゃん
芳野と天音の娘。そのうちお姉ちゃんになる。
・呪いの魔導書
フシギ〇ネ派。サイコキネシスは反則だ。
モノホンの魔女に世界を破滅させるために生み出された存在だが「まぁ、世界なんていつでも破滅させられるし、とりあえず今をエンジョイしとくか」的思考で仕事しない魔導書。
結局、長い間神棚に飾られた所為で浄化『祝いの書』へ変化する。
カップルのイチャラブ大好き侍で候。
我は呪いの書である @Jbomadao
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