俺と幼馴染とクラスの女子 inファーストフード店【2000文字】

有梨束

俺、ここにいる意味あるかな?

「えっと、兵藤さん…だっけ?『私の幼馴染』の巴に告白したらしいじゃない。と、巴のどこが好きになったの?」

なんでただの幼馴染のお前が訊いてるんだよ、蘭奈。

「巴との大事な思い出だから教えない」

なにその含みのある言い方…、そんなものないだろ、兵藤。

放課後、蘭奈と兵藤の2人に引き摺り込まれて、俺は今仕方なくポテトを食べている。

なんの時間だこれ…。

「大体、俺好きな子いるから断ったし、この話終わったんじゃなかったっけ」

「「巴は黙ってて」」

なんでだ。

「巴のことを好きになるなんて、物珍しい子もいたものよね」

「それブーメラン」

「う、うるさいわね」

「私は、巴が好き。それだけ。田ノ岡さんに関係ない」

「うっ…」

俺は、ズズズーとコーラを啜った。

帰りたい。

というか、どうせ放課後を過ごすなら月野さんとがよかった。

今日は一回も話しかけられなかったし。

「巴のことを本当に好きな人じゃないと、幼馴染としては許可できないっていうか」

「本当に好きよ」

「だからどこが好きで、何で好きになったのよ」

「…パンツ見られたから」

「「はああ!?」」

蘭奈がテーブルの上をひっくり返しそうな勢いで立ち上がった。

俺もコーラが気管に入った。

ゴッホ、ごほ、…なんだって?

「巴のハレンチっ!馬鹿!アホ!最低っ!それって…まさかっ」

「冤罪すぎる!身に覚えがない!拳は下ろせ…!」

「何が違うって言うのよ!」

「何もかもだろ!」

「…初めてだった」

「兵藤もおかしなこと言うな!」

「おかしなことは言っていない。私にとって大事な思い出」

「…詳しく話しなさいよ、兵藤さん」

蘭奈は涙目になりながら、ストンと座り直した。

とりあえず殴られなかった、セーフ。

…いや全然セーフじゃねえ。

「あれは入学式の日だった。昇降口のところですごい風は吹いたの」

兵藤は少し頬を染めた。

「それで私のスカートが捲れちゃったの」

…あー、思い出した。

目の前で一気にスカートが捲れて、ビビったんだった。

パンツ全開で。

あれ、兵藤だったのか。

「私この見た目だから、下心で近づいてくる男ばっかりだったし、実際それを見ていた他の男の子たちもニヤニヤしてた」

まー、男の俺からは言いにくいが、いい体型されてらっしゃいますもんね。

そういや、ラッキーって言ってる奴いたな。

「でも、巴だけ違った」

目の前に座る兵藤は、俺の方を見た。

「巴は謝ってきたの。別に巴が悪かったわけじゃないのに」


『ごめん、悪気はなかったんだけど。女の先生呼んでくるか?』


「他の男の子にも牽制するように庇ってくれた。嬉しかった」

兵藤は無表情の顔から、少しだけ口元を緩めた。

そんなことあったなあ。

周りに男しかいなかったから、誰か呼んできた方が安心するかと思っただけなんだけど。

どうしていいかわかんなかったし。

実際わざとじゃないにしても、悪かったろ。

気まずいし。

そう言おうと思ったら、隣の蘭奈が前のめりになった。

「そうなのよ!巴ってたまにとんでもなく優しい時があるの!」

「うん、なんでもないみたいにしてくれた」

「私もスカートの後ろがパンツに入っちゃってた時があって、すぐにカーディガンを巻いてくれたことがあって!あれは嬉しかったなあ〜」

またパンツじゃねえか…。

間に入るとややこしさしかなくて、もそもそポテトを食べる。

「羨ましい。私ももっと巴に優しくされたい」

「たまに急に気遣いがカンストするのよねっ。普段全然なくせにっ」

「うん。教室で見ている巴、別に普通」

「いいとこあるんだからいつも見せなさいよね」

「うん。巴の実力あんなものじゃないはずなのに、残念」

「兵藤さん、あなたわかってるじゃない」

「田ノ岡さんもいいね」

後半は、悪口じゃない?

ポテトをまとめて3本口に入れながら、窓の方を見た。

なんか2人で盛り上がっているみたいだし、そもそも最初から俺いらなかったし。

帰っていいかな。

ぼんやり見ていると、窓の外に月野さんが歩いていくところが見えた。

ガタッ!

今度は、俺が立ち上がった。

間違いない、月野さんだ。

うわ、会えた!

追いかけていいか!?

駅まで少しだけだし、話しかけてもいいかな!?

…キモいな。

…キモいか。

いや、好意のない相手にアプローチされたらどうせキモいわ、行こう。

俺は鞄を手に取ったが、隣の蘭奈に制服をガシッと掴まれた。

「どこ行くのよ」

「俺、先帰るよ」

「なんでよ。あんたがいないと意味ないじゃない、いなさいよ」

「俺抜きで話せる、イケる、じゃあ!」

前から兵藤の手が伸びてきて、やっぱり制服を掴まれた。

「巴、まだいて。話終わってないの」

「いや、今もすでに俺会話に入ってなかったろ…」

「だめ。いてほしい」

「いや、でも俺ちょっと用事が…」

「あんたに用事なんてないでしょ。ほーら」

グイグイ引っ張られて、もう一度座る羽目になった。

月野さんの背中が、もう米粒ほどしか見えない。

「あああ〜、そんなあ〜」

結局後で蘭奈か兵藤に詰められることを考えて、俺は冷めたポテトを食べた。



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