お貴族サマが行く別世界

@fu-sor

第1話 『お貴族サマ』

何もない真っ白な空間に彼はいた。


 遡ること数分前、彼は自室で書類整理をしていた。だが、いつの間にか目の前が真っ白になっていた。

 彼の名はシャネロ・ラ・クチラス。クチラス王国の第4王子だ 王位継承権争いをしているかと言われれば、そんなことはない。シャネロ自身とっくに継承権を破棄している。

 シャネロは国に仕える騎士の指揮官を任されている。戦略を考えるのは彼の得意分野である。だが、シャネロ自身、指揮官をしたくてやっているわけではない。彼がいると勝手に場が盛り上がっていくので国王、もといい父が勝手に指揮官に任命したにすぎない。

 これは余談だが、シャネルという男は自分の父,兄や妹達,親戚,更には国民からも呆れられるほど人とコミュニケーションをとるのが苦手だ。知人ならまだしも話したことのない人と話すような行為を彼はしない。1対1になろうものなら逃げてしまう。

 先ほど指揮官を任されていると説明したが、彼はその場に出るだけで喋らない。それなのになぜか勝手に上がって行く勢いに彼はとてつもなく大きな疑問を抱いている。

 もう一つ付け加えるとするならば 表情を表に出すのも苦手なため、意図せずに無表情になっている彼についたあだ名は『お貴族サマ』。サマをどう言っているのかは分からないが親しみやすいと人気の名前だそうだ。


 そんなシャネロだが今は表情が顔に出てしまうほど驚いていた。なんせ服はそのままだが手に持っていたはずの書類がない。一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻した。不思議だ、と頭の端で考えつつこの空間を見回した。真っ白だ。この白い空間には本当に何も存在しなかった。上下左右 どこかに白い壁があるのかもしれないがそんなものは見えない。感じることもない。この空間に来た時、1番に魔術を試してみたが、使えなかった。

 だが、そんなことは関係ない。動かなければ始まらない。

 さて、さて、この白い空間には一体何があるのかと、この状況に釣り合わない少しぎこちない笑みを浮かべたシャネロは歩みを進めた。

 

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