『アポロンとアスクレピオス』【カクヨムコン11短編】
クルス†
ー肉体の問いについてー
《旅人ロビンが舞台に上がり、一本の樹にもたれかかって休んでいた》
《アポロンが現れる》
アポロン「そこの旅人、何をしている?」
ロビン「はい旦那さん。私は歩き疲れた足を休ませております。ただのロビンと申します」
アポロン「そうか、私はアポロンだ。知っているか、旅人よ」
ロビン「ええ、ええ、なんと、そんな偉大な神様が、私のようなしがない旅人の前に姿を現されるとは。 ——失礼ながら、本物にございますか?」
アポロン「無論、本物である。証明してみせよう、私は神であるため女にもなれる」
《アポロンは女の姿に変身した》
ロビン「なんと、正しく貴方はアポロン様であらせられる。
見紛うなきその美しさを目の当たりに出来るとは。
何たる僥倖にございましょう。
輝かしき君が眩しきあまり直視できませぬ。
しかしながら、美しいという事実だけははっきりと感じております」
アポロン「美は理由を持たず、ままあるだけで完璧だろうからな」
ロビン「貴方様の権威と光の前では平伏するしかありません」
《そこにアスクレピオスが現れた》
アスクレピオス「私はアスクレピオスである。私は医神であるため女にもなれる」
ロビン「なんと!?それは如何にして?」
アスクレピオス「簡単な事。医術の技でもってすれば、身体を女に作り変える事が出来るのである」
ロビン「なんという事だ。乳房と、女特有の腰と臀部がある。もしや、服で見えざる中までお作りになられたのですか?」
アスクレピオス「勿論だ。骨も性器も内臓も何もかも。私の技術をもってすれば女になるなど、難しい事ではない」
ロビン「それは素晴らしい。まるで巧みなるヘパイストスが、最初の人間の女をお作りになったかの様な完璧な造形」
アスクレピオス「私の医術は肉体を超え、神と等しく作り変える事を人間は達したのだ。偉大にして完璧な父なるアポロンと同様に。いずれそれをも超える時が来るだろう」
ロビン「ところで、何故、アポロン様もアスクレピオス様も女の姿になられたのですか?」
アポロン「神ゆえに出来るからだ。 ——だが、本質は見えるとは限らない」
アスクレピオス「医神ゆえに出来るからだ。 ——だが、形だけが本質とは限らない」
《神々はそう言って去って行った》
ロビン「不思議な事もあるものだ。
女の体を使って、私に何が言いたかったのか? 神の権威?
それとも、技術を見せびらかしたかったのだろうか?」
《ロビンはもたれていた樹から起き上がり、固まった身体を伸ばした》
《体を覆い隠していたマントが落ちる》
ロビン「——そして女の私に何を言わせたかったのか?
実に不可解な事もあるものだ。
女である私を、この舞台に置き、神々と会わせたのは誰であろうか?
否、この夢を見ているのは誰なのであろうか?
私かあなたか——誰だったか忘れてしまった。
我々は男か女か、神か人か。
それとも、それに当てはまらない存在か。
私は何者なのだろう?
私は自身の肉体の主人たり得るだろうか?
そして、彼らは我々に何を問うているのであろうか?
神々が去った今、問いだけが残され——
答えも無く、横たわるまま受け入れるしかないのだろうか?」
《終幕》
『アポロンとアスクレピオス』【カクヨムコン11短編】 クルス† @TveracruzT
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