祝い (カクヨムコンテスト11【短編】 お題『祝い』)

姑兎 -koto-

第1話 お祝いメッセージ

 その日、作家兼サイエンティスト(自称)の私は、ほぼ誰からも着信が無いスマホを手元に置き、ほぼ誰にも読まれない小説を執筆していた。

 それは、いつも通りの深夜……のはずだったのに。


 そんな深夜のひと時、突然、しじまを破るスマホの着信音が鳴った。

 鳴るはずのないスマホが鳴る、しかもこんな深夜に。

 若干、恐怖を覚えながら確認すると、それは、私を称する誰かからの『おめでとう』のお祝いメッセージだった。

 自慢じゃないけれど、私にそんなメッセージを送ってくるような友人は居ない。

 いや、友人が居ない訳では無い。

 こんな非常識な時刻にメッセージを送るような友人は居ないという意味だ。

 そもそも、私の電話番号を知ってる友人も居ない。

 しつこいようだが、別に、友人が一人も居ない訳では無い。

 ただ、作家兼サイエンティスト(自称)の私は、世俗にまみれる事が無いよう孤高を貫いているせいで、頻繁に連絡を取り合う関係にあるような友人が居ないだけだ。


 というか、何がのかさっぱりわからない。

 鳴かず飛ばずの私に対する新手の嫌がらせだろうか。

 だが、私のIDでメッセージを送るような手の込んだ嫌がらせをする人物の心当たりも無い。


 無い……無い……無い……、そんなこんなを考えていると、更なる着信が来た。

 今度は、『誤爆失礼。諦めずに頑張れ』と。

 誤爆?私のIDで?そして、何故か励ましの言葉。

 更に意味が解らない。


 そして、誰が何のためにこんなことをしたのか解らないまま月日は流れ……。



 10年後。

 とある科学者のすんごい発明の論文が有名な科学雑誌に載るとかでインタビューの依頼が来た。

 私がインタビューするのではない。

 インタビューされる側としての依頼だ。

 見ず知らずの科学者の発明に何ら関わっていないのにも関わらずだ。

 意味が解らない。


 で、よくよく聞けば、その科学者は、ほぼ誰にも読まれていないと思っていた小説に書いていた私の適当な理論にヒントを得て今回の発明をしたらしい。

 彼が私の小説を読んでくれていた事に驚きを隠せないけれど。

 多分、何かの言葉を検索した時、奇跡的にヒットしたとか、そんなところであろう。


 その発明内容は、時空を超えて過去にメッセージを送るロジック。

 私としては、何のこっちゃ?ではあるし、自分で考えておいて何だが、そんなことが実現したら、未来がどんどん書き変えられてカオスになると思うのだけれど。

 まあ、そんなことは、本物の科学者が考えればいい事。

 取り敢えずは、どこかの誰かの励まし通りに書き続けてきて良かったということだろう。


 インタビューの結果、私のインタビュー記事は見事に割愛され、有名な科学雑誌の片隅に私の名前と小説の作品名が小さく載っただけだったけれど、それだけでも、私にとっては快挙、報われたことに変わりはない。



 そして、その科学雑誌の発売日、また、スマホに見覚えのあるお祝いメッセージが来た。


 そうか!

 あの発明が実現したんだ。

 で、未来の私ってば、10年、間違えて送っちゃったんだ。

 な~んだ、そういうことか。


 そして、私は、10年越しの謎を解くに至ったのであった。

 めでたしめでたし?


ー完ー

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