【第三話】困った落下と怖い先生

 建物、石畳など灰色が目に入る。全体的に四角い感じで、非常にセンスのないデザインだ。もっとトゲトゲにしたほうがかっこいいと思う。


 ……なんてことはどうでもよくて。


 桃色の髪の少女フィリィを魔物から助け、落下した先はなんと人の街であった。


 これは不味い状況である。目立つのは困るのだ。いや、目立つことそれ自体は悪くない。しかしながらこれは悪目立ちというやつだ。


 こーいうのはちょっと、困る。


「あ……ありがとうメイト!」


「うわぁっ」


 吾輩が周りの目に慌てていると、フィリィが抱きついてきた。仕方ないだろう、巨鳥に連れ去られたと思えば今度は高度からの落下。怯えるのも当然のこと。ありがとうが言えるのもとっても偉い。


 しかし……


「なんだこの人集りは!オイ貴様ら吾輩は見世物ではないぞ!シッシッ!退け愚か者共!」


 叫んでも誰一人としてこの場を去ろうとする者はいない。全くどうなっているのだこの国の子らは、野次馬精神が強いのか!


 大抵の者が突然降ってきた二人組を訝しげに眺めているだけだが、中には吾輩に抱きつくフィリィを見て「ヒューヒュー」と囃し立てる者すらいるではないか!なんと下品な!


 いっそのこと焼き払ってしまおうか?


 ……と、考えると頭の中のグリアイズが「レイメルナングス様!」とめっちゃ怒ってきた。ほっぺたを膨らませている。彼女を怒らせるのはもっといけない。


 なぜならいつも論破されるから。彼女の怒りは常に正当なのだ。正当な理由で怒られると吾輩はシュンとしてしまう。


「どうしたものか……」


 困り果てていると、「なんの騒ぎだ!」と人混みをかき分けて男が現れた。


 黒い髪を腰まで伸ばした長身のこの男は上下の繋がった優雅な衣服に身を包んでいる。


 フン。なかなかかっこいいではないか。人の子にしてはやるな。毎年恒例のレイメルナングスコレクションに出してやってもいい。


 男は近くの若者の肩を掴む。


「貴様。これはどういう状況だ?なぜこの者を取り囲んでいる」


「えっ?」


「これはどういう状況だ。二度言わせるな」


「あっ、はい!なんかぁ、あの二人がぁ。落ちてきたんです」


「具体性がない!」


 男は叫んで腰の刀を抜いた。若者に突き立てる。


「オイなにをしているのだ!?」


 止めようと立ち上がると奴はこの我輩に刃を向けた。


「黙れミニマムホワイトヘアー!」


「それ吾輩のことか!?」


 変なあだ名をつけおって従者のみんながいなくて良かった!いたら絶対バトってた!


「さっさと答えろ!」


 若者は怯えきっている。涙目だ。


「へっへぁッ……」


「やめてください!」


 しなやかで力強い叫びが響く。声の主はフィリィだった。


「メイトは……この子は森でおっきな鳥に攫われた私を助けてくれたんです!」


「ほう……?ミニマムホワイトヘアーに抱きついたままにしては威勢が良いではないか」


「あっ……これは、その……」


 少女は顔を赤くして立ち上がった。


「森と言ったな。森はここから数km離れているはずだが?」


「えっ???」


 吾輩不覚にも滑稽な声を出してしまった。


 もしかして吾輩焦りすぎて瞬間移動魔法ミスったのだ?


「貴様まさか……」


 こやつに吾輩が魔王とバレてしまう!


「……かなり長い間鳥に捕まっていたな?」


 あっバレてないみたい!吾輩胸を撫で下ろしちゃう。


「その通り。そなたは素晴らしき観察眼の所持者であるな」


「フン。まあいい。とにかく職員室に来い。どうやら2人ともこの区に入る正式な手続きを踏めていないらしい」


「職員室……?」


「ここはガルイア王国、勇者学校区。つまり、この街の住人全て、勇者志望というわけだ」


「おお!」


 まさかこの広い街が勇者学校そのものだったのは!


 感嘆していると、先程涙目になっていた若者が言った。


「ショウ先生!教師陣はみんな既に現役勇者なので住人全員が勇者志望というのは誤りです!」


「黙れ!細かいことを言うな!」


「ヒィッ」


 ショウ先生がまた叫ぶ。自分が悪いのに怒鳴るなんて……なんて……身に覚えがないではない吾輩であった。


 すまぬ従者よ……。


 気を取り直して、


「フム。では吾輩たちは無事勇者学校に入れるというわけだな!よかったなフィリィ!」


「うん!」


「安心するな。貴様らが虚偽の申告をしてこの街に不法侵入した可能性はまだある」


 ショウ先生の腰で刀がキラリと輝く。


 吾輩の魔眼で見れば一目瞭然。あれは妖刀。吾輩とて気をつけねば痛い目を見るかもしれない。


「少しでもおかしな行動に出てみろ。容赦なく斬る」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る