乙女ゲームの攻略キャラになっていたので。

海原ねこ

第1話・乙女ゲームの攻略キャラになってしまった。

「雲雀の哭く頃にまたね」は、まぼろしの乙女ゲームである。

舞台は、現代日本の架空の町ひばりの町。

主役、春野冬黄は、ひばりの町の大学生。

趣味は、演劇、特技は、嘘という稀有な俳優志望の女子大生である。

物語は、夏の演劇祭のシナリオで「雲雀が泣いた」という曰く付きのシナリオを幼馴染の猪瀬夏生が持ってきたことから始まり、三ヶ月後の演劇祭で披露されるところまでの出来事を書いたものであった。

そこそこに面白そうと思うかもしれないが、このゲームはまぼろしであり、知っているものは数少ない。

何故なら、このゲームは未完であるためだ。

未完になった原因は、これを作っていたのが高校生だからである。製作チームの単純な資金不足というのもあるし、脚本家が家出したとかでシナリオを書けなくなってしまったということでお蔵入りになってしまった。

つまり、そのシナリオを知っている人物というのは関係者だけである。

だからこそ、主人公の彼は驚いた。

ある朝目覚めると、知らない天井が目に飛び込んできたことにまず驚いた。

知らない部屋だ、と分かると彼は飛び起きた。

だが、辺りを見渡して何処か見覚えがあることに彼は驚いて部屋の角に置かれていた姿見を見て立ちすくして彼はその顔に触れた。

彼は顔を見て確認できた。

「どうやら、乙女ゲームの攻略キャラになってしまった」ということを。

乙女ゲーム内での彼の立場は、主役の血の繋がらない弟である春野ひよりである。

攻略キャラ①、春野ひより。

姉の冬黄と同じ大学に通う大学生二年生。

趣味、物書き。特技、速読。成績優秀で、堅物なイケメン。

物語では、一番初めに登場するキャラであり、両親の再婚で小学生時代に冬黄に出会い一目惚れしてからずっと一人片想いを続けているという。立場上、他のキャラを攻略する際に必ずと言っていいほど邪魔に入ってくるお邪魔キャラである。

「なるのが、お邪魔キャラって現実と一緒じゃないか」と、彼は呟いた。

そこで、階段を上る何者かの足音が聞こえてきた。彼は、慌てた。きっと、この足音の正体は冬黄である。

ならば、ひよりはこの時、悪夢にうなされてベットで眠っているはずなのだ。

乙女ゲームの世界に入ってきて分からないことだらけの彼だったが、何故だかひよりを演じなくてはならないという気がして急いで彼はベットに滑り込んだ。

コンコンコンと、ドアをノックする音がして

「ひより〜、入るよ〜」と、どこかで聞いた鈴の音のような声がしてドアは開かれた。











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