第14話 影
次の日も、その次の日も、リルはザダの顔を見に、ロイの目を盗んではあのお屋敷へと足を運んだ。
外から中を覗くと、老夫婦とザダとヨアが四人でお茶をしていることが多かった。
どことなく、いつも冷たいような雰囲気が漂っているのを感じた。
リルは、なかなかザダと話ができずにいた。
ある日、不思議な出来事があった。
日が一番上に上るまで、町中で芸をし、日が下り始めると芸を終えて、ロイは得た銭で町中に必要なものなどを買いに行く。
一方のリルは、広場に残ってお客様たちと談笑したり、時々ロイの買い物に付き合ったりしていた。
その日は、昼過ぎから雨が降り出した。
お客様とお話を終えて、町中の、パン屋や装飾品などの店の立ち並ぶ通りへと足を運んでいるロイを探しに後を追った。
途中、犬のモチーフのアクセサリーを扱う店の中に入り、思わず物色をした。
ブローチを一つ眺めた後、店外の狭い通りに出ると、黒い傘を差した、濃ゆい茶色のコートの背の高い男の人とぶつかった。
横顔を見て、ザダだと思った。
リルは、大きな声で名前を呼んだ。
「ザダさん!」
しかし、彼はこちらをちらりとも見ないで冷たい表情でその場から去って行った。
(どうして一言も挨拶がないのかしら。ついこの間話をしたばかりなのに……まるで全く見知らぬ赤の他人みたい。……別の人だったのかしら?でもあの顔は……)
可愛いお店の連なる狭い石畳の通りを、人込みをかき分けながら歩いていると、ふと雨が顔に当たらなくなった。
顔を上げると、そこにはロイがいた。
「リル。探しに来てたの?テントに帰ろう」
その次の日、またリルは一人ザダの家へと赴いた。
芸を終え、買い物に行くロイには、お客さんといつものようにお話をしてからテントに帰る……と嘘をついた。
リルは、そのお屋敷の窓の外から中を覗いていた。
今日は、老夫婦は外出中なのだろうか?……中には、ザダ一人だけがいた。
彼はわりとすぐ、外にいるリルの視線に気づいた。
リルは、扉を開いて中に入っていった。
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