君が黙った日、僕は世界と話し始めた
雪島健太
第1章未読
画面を伏せたまま、テーブルに置いた。
通知音が鳴る気配はなく、部屋には時計の秒針の音だけが残っている。
もう何度目かわからない。
スマートフォンを手に取って、ロックを解除して、何も変わっていない画面を確認するのは。
既読もつかない。
未読のまま、時間だけが進んでいる。
送った言葉を思い返す。
どれも間違っていた気がするし、どれも本心だった気もする。
消せばよかった文章も、消さなければよかった文章も、今となっては区別がつかない。
「待ってる」という言葉は、
いつからこんなに重たいものになったんだろう。
最初は、ただ話したかっただけだった。
声を聞いて、顔を見て、
いつもみたいに、何気ない話をしたかっただけだ。
それがいつの間にか、
返事が来るかどうかで一日が決まるようになっていた。
仕事をしていても、
人と話していても、
頭の片隅にはずっと、あの画面があった。
通知が来ない理由を、何通りも考えた。
忙しいのかもしれない。
疲れているのかもしれない。
それとも、もう——。
そこまで考えて、思考を止める。
考えたところで、答えは来ない。
画面を閉じて、深く息を吸う。
胸の奥が、じんわりと痛む。
嫌いになったわけじゃない。
それだけは、なぜかはっきりわかっていた。
ただ、
好きなまま終わることもあるんだ、という事実が、
まだうまく飲み込めないだけだった。
スマートフォンを裏返して、今度こそ置く。
鳴らなくても、今日はもう見ない。
そう決めたはずなのに、
数分後にはまた手が伸びていた。
未読のままの画面を見つめながら、
自分がどこに向かっているのか、わからなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます