ソシャゲマスター祖師谷 クソソシャゲ愛好家が流されるまま理想郷を目指す建国記
@kakushelter
第1話:ソシャゲ
「傾聴せよ! これより我らが王にお言葉を賜る!」
拡声器に乗せられた声が張り詰めた空気を裂くと、ガヤガヤと騒がしかった声がピタリと止んだ。普段は騒がしくとも、この瞬間だけは、数多の勇士が僕の号令を待つ。勇士……ん、まぁ勇士か。
「連合の興亡この一戦にあり。各員、奮起を期待する」
静寂。これだけの人数が、自分の指示を待っている。今このときより、戦場の主役は我々だ。
「これより戦闘を開始する!」
『うおおおお!』
口々に鬨の声を上げ、軍勢が号令一下……いや、割とバラバラと飛び出していく。個性の強い連中には集団行動に向かない奴も多い。この場合の個性ってのはテンプレだから逆に没個性なのだけど。どこかで見たような、似たような、似通ったキャラクター群。本当に個性のあるキャラクターなんて一握りだ。粗製濫造されているから仕方ない。
例えば僕の周りには、ナビゲーションキャラ……基本の操作方法を教えてくれたり、ストーリーの導入を促す主人公のパートナーポジションキャラ、不思議の国のアリスの時計うさぎとか、ドラゴンボーヤのパンティとか、長靴をはいた猫のポジションだ。そんな奴らが多数いる。
たくさんいる。
ほんとにたくさんいるのだ。
各作品に一人はいるからね。いない作品もあるけど。
そのうち、幼馴染みが4人。同級生が8人。姉が2人。妹が3人。スーツにメガネの秘書が25人、メガネ無しの秘書が14人。委員長が2人。先輩が34人。同期が9人。後輩は2人。上司が5人。軍の上官が4人。軍の部下が3人。マネージャーが2人。巫女が3人。師匠が4人。謎多き少女が43人。お姫様が13人。騎士が14人。魔法使いのお姉さんが8人。魔法使いのロリが3人。陰陽師が4人。サディスティックな女幹部が2人。妖精が22人。天使が8人。悪魔が9人。精霊が18人。神が6柱。魔物娘が6人。詳細不明の小動物が8匹。犬が2匹。猫が12匹。うさぎが2羽。げっ歯類が2匹。触手が一塊。アンドロイドが4人。サイボーグが3体、ロボが4体、AIが18体。古代文明の遺産が2体、魔法の本が4冊。魔法生物が3体。
これら全てが相棒かマスコットポジションである。被ってないのが触手しかいねえ。それぞれ仲が良かったり悪かったりするが、僕の下で戦う時に限り協力することができる。
こいつらの多くは後期にプレイアブルキャラになるため普通に強いのだが、基本的には戦わない。僕が指揮をする補佐だけだ。つまり、事務作業や伝令、作戦や計画立案などを担当している。
いや大事だよ、事務作業。仕入れや金稼ぎはキツネ目で関西弁の商人キャラが何人もいるので大丈夫だけど、作戦に合わせて部隊を割り振ったり、受けた連絡を適宜報告したり、資材や武器の管理をしたり。部隊運営で助けてもらっている。軍師や解説キャラも多いしね。
軍は一応、属性ごとに分かれている。なにせキャラ被りがひどいからね。似たようなキャラをひとまとめにして運用しているんだ。顔を見れば名前も能力もわかるが、個別に思い出すのは難しいくらいたくさんいる。
先頭を行くのはやはり光属性のキャラ達だ。ゲームによっては聖属性とも言う。白や金を基調とした服装や髪色が多い。飛行キャラが多いし一部は本当に光速を出せるので自ずと先頭になる。物理法則どうなってんだろう。ヒーラーやバッファーが多いので前線の補助と回復は任せられるし、守備的な能力も高い。8人いるジャンヌ・ダルクのうち5人が所属している。歴史系のゲームは多いから有名どころはめっちゃ被るんだ。もちろん後方支援の回復も得意だし、聖別が可能だから武具の祝福なども担当している。
次いで火属性。赤い髪や衣装のキャラはだいたい火属性だと思っていい。狐や不死鳥やドラゴン設定のキャラが多いが、炉のイメージからか鍛冶屋もいるので装備作成の要でもある。攻撃部隊は喧嘩っ早く前に行きたがる傾向にあり、高火力紙装甲が多い。赤ずきんちゃんや鬼も多いし、12人の織田信長のうち9人が火属性だ。火縄銃か焼き討ちか、じゃなけりゃ本能寺の変のイメージかな。
青や水色モチーフはだいたい水属性。氷も含む。ここは比較的動かない者が多い。3ダースもいるウンディーネ部隊は水の射出による遠距離攻撃か後方待機の回復部隊だし、人魚や海賊たちは陸では出番が無いからだ。ピサロやコロンブスは解き放つと戦後処理大変だから殲滅戦にしか使えない。東洋龍たちは元気に空から水鉄砲ブッパしているようで、ここまで水しぶきが飛んでくる。行軍の際に水の運搬が不要なのは彼らの力だ。これがぶっちゃけ超助かる。
雷属性は黄色と黒の衣装が多い。雷様のイメージなのだろう。あと発明家やメカキャラも多い。高速で動き回ったり広範囲を薙ぎ払うのが得意だ。電気はエネルギーになるし、ストーリー上の便利アイテムを作ってくれたり便利な機能を持っていたりするから重宝する。6人いるレオナルド・ダ・ヴィンチが雷属性に4人もいる。生活を豊かにするのはこいつらだ。なにせ現代どころか未来の知識まで駆使してくれる。ビバ似非SFとファンタジー理論。ご都合主義の塊だ。
土属性はデカい。デカくて硬くてパワフル。戦場では雑魚を蹴散らす吶喊役だし、ゴーレムとかドワーフとか多いので武器作りや採掘や工事も担当する。地形を変えることもできるし、土に力を注げば作物もよく育つ。地味だが軍事行動の全てに役立つ属性だ。女ドワーフがみんなロリなのは何故だろう……原典だと女でもずんぐりヒゲモジャなのにな。それじゃみんなガチャ回さないから仕方ないね。
緑色してたらだいたい自然属性だ。風属性、植物属性を包含する。ドリアードやトレント、いばら姫のような植物関連のキャラの他、風のイメージから妖精などの飛行キャラも多い。薬草とかの物資収集が得意だし、薬学や農業スキルも充実している。前述の水や土と合わせると兵站の概念が壊れる。なんと現地で補給できちまうンだ。
最後は闇属性なのだが、ここは今あまりいない。悪魔や死神、暗殺者のようなキャラが多く、サキュバスやアンデッドもここだ。彼らの多くは夜行性だし、僕がいれば喧嘩しないとはいえ光属性と対立しがちなので、昼間は光、夜は闇と交代制で使うことにしている。関係無く生活している普通の人間もいるけどね。呪いやデバフが得意なので、敵の面倒な相手を集団デバフで弱体化させたり、敵の中枢をピンポイントで暗殺できる。またニンジャやシャドウ系は諜報もお手の物で、敵の弱点を探ったり、潜伏しての情報収集も任せられる。彼らがいなければ普通に斥候を放つ必要があり、動くだけでも時間がかかるだろう。ぶっちゃけここに一番依存しているかもしれない。軍隊にとって情報は目であり耳である。一番大事と言っても過言ではない。百戦して危うからずのためには敵を知る必要があるのだ。
残りのどこにも属さない、普通の人間といったキャラは、一律で無属性に分類される。その他、使用武器による部隊分け、移動方法による部隊分けもある。光の槍飛行部隊や水の船部隊、ノーマル歩兵部隊とかね。世界観ごとに分けたりもする。ファンタジー部隊、現代兵器部隊、未来SF部隊みたいに。その他、軍隊として運用できない個人勢もたくさんいる。
「圧倒的ではないか、我が軍は!」
誰かが聞き覚えのある台詞で吠えている。無理も無い。あまりにも一方的な光景が広がっていた。
鎧袖一触。こちらの攻撃は敵の部隊を軽く蹴散らす。無理もない。あちらは人間。ソシャゲで言えば一般兵。レアリティで言えばコモンかノーマルか。仮にも課金ガチャで引けるキャラに勝てるわけがない。こちらは少数だが少数ではないのだ。
さて、もうやることないな。僕は戦いが好きじゃない。
「んじゃあと頼むよ。僕は休むから」
「はい、お疲れ様でした。後はお任せください」
「ミミも、頼んだよ」
「ん」
僕はリソースを使い果たして疲労困憊なので休憩に入る。通りざまに、デカい狼に跨った少女の頭を撫でていく。知らぬ間に成長したものだ。
軍師キャラは数多いし、相互に情報を伝え合って切磋琢磨しているから僕が考える隙間は無い。献策されたものから選び取るのが僕の仕事で、戦闘が始まれば本当にただのお飾りなのだ。旗印としての機能しかない。できることも一応あるけど、旗頭が前線に出る訳にもいかないし。
だからといって蔑ろにされることもない。これは僕の能力で、ここは僕の国で、これこそ僕の物語だ。僕は方針だけ示していればそれでいいのだ。今はやることは無いが、ここからのスケジュールも全て管理されている。
旗艦にある自室に戻ると、どでかいベッドに倒れ込む。疲れているわけではない。なにせ僕の身体は強い。強くなった。ただでさえ強いのに、僕を狙った暗殺は無意味だ。無数の騎士や忍者や暗殺者や幽霊や精霊がセキュリティとして護衛している。物理的にも魔法的にも盤石だ。
「ハアイ、団長」
「先生、もういいの? 休む?」
「休むのはまだ早いよぉ、指揮官」
「魔王様、魔力のチャージをお願いします……」
あ、まだ仕事あった。
何人も待機していた。ここは僕の部屋で、こいつらはR18、つまりエロゲのキャラだ。それ以外もいるが。ソシャゲの中にはそういう描写のある物も多い。一般ゲームでも絶対ヤッてるのも多いし、主人公にガチ恋してるキャラは枚挙に暇が無い。
魔力、精力、なんとかパワー、かんとかエネルギー。いろいろ名前はあるけど全部同じだ。とにかく僕が注入する設定なんだ。そうじゃなくてもコミュニケーションが必要だし。
僕はドリンク剤をがぶ飲みする。スタミナ回復薬とか言われるやつだ。ゲームに拠るが、だいたい滅茶苦茶余ってるかカツカツのどちらかだ。余るゲームでは万単位。
冷たい液体が喉を通ると、胃がカッと熱くなる。僕自身もまた人間離れした肉体だ。そこにこのドーピング。謎の無敵感に包まれる。
「……いくか」
「あん、素敵」
負けられない戦いが始まった。
いや、こっちは負けてもいいどね。だいたい多勢に無勢だし。
★★★★★
また1つ世界が消えた。1つの世界が、二度と帰らぬ電子の海に溶けていく。2年半も続いたぶん、物悲しさも一入だ。
水棲生物の擬人化というニッチなジャンルでは、これでも善戦したほうだろう。さよなら、癒やし系ナースのエンゼルフィッシュ、凛とした剣士のタチウオ、医者のドクターフィッシュ、悪食のブルーギル、ロリのフッコ、みんなのアイドルカクレクマノミ、全身鎧のグソクムシ、ダウナー低燃費系のチューブワーム。その他たくさんの人魚達。世間じゃ評価されなかったが、僕は君達が好きだった。
世界の終わりは呆気なく、そして寂しい。
通信が切れてサービスが提供されていませんと表示されると、アプリを落としてアンインストールする。SNSや公式掲示板では、共に最期を迎えたユーザーによるお疲れ様やまた会おうのやり取り。公式サイトにはメインキャラ達が笑顔で手を振る一枚絵が。ご愛顧ありがとうございました! いつかまたこの海で会いましょう、船長! のメッセージ。お前ら淡水のもいるだろうとかツッコミどころはあるけれど、わざわざ一枚絵を用意してくれただけ、この運営には好感が持てた。次回作もやろう。
少し前に完結したストーリーも悪くはなかった。わたしたちの冒険はこれからだエンド。探し求めた理想郷は見つかったが理想通りではなかった。ならば自分達で作ればいいという、希望に満ちた終わりだった。尻切れトンボで中途半端感は否めないけど、打ち切りの中では良くやったと思う。でもデウスエクスマキナはなぁ。最後にご都合主義なのは……まあ、愚痴っても仕方無い。
いつもハイテンションだった公式SNSのトーンダウン。返金手続などの淡々とした事務的な連絡。Reやデータ集の可能性も無さそうだ。僕は黙ってフォローを外す。
この寂しさの裏には、きっといくつもの悲喜こもごもがあるのだろう。責任を取る人もいる。職を失う人もいるかもしれない。僕はただの傍観者だ。
これでいったいいくつ目だろう。ソシャゲの終わりを見届けたのは。
ソシャゲには何千万ダウンロードを記録するようなビッグタイトルもあるが、すぐに終わる零細すぎる物もある。僕の好むソシャゲは、どうもパッとしないのが多いようなのだ。いや、大作は大作でやるんだけどね。
さっきサービス終了したばかりのアクアリウムガールズで言えば、UIは古臭くて使いづらいし、絵も主役級は気合が入っているが後続はそんなに上手くないし、低レアはその辺の素人同然だ。文字のフォントも見辛ければ、音楽はペラッペラでフリー音源のようだった。声優も素人臭い棒読みが目立つしストーリーは読み上げ無し、イベントの無い期間はやることなくてハムるだけの虚無だった。
ただ、水棲生物への愛だけはヒシヒシと感じられた。メインキャラからモブまで、様々な水の生き物を紹介していた。キャラ解説の半分以上はモチーフ生物の解説だった。このゲームをプレイしなければ、僕はチューブワームなんて一生知らなかっただろう。海底火山の周りに生息する、化学反応を食べて生きる生き物。キャラは低燃費系隠れ熱血ヒキニート。こんなマイナーな生き物を知れただけでも意義はあった。それこそ擬人化モノの華である。
本当はアクアリウムの名前の通りに飼える生き物だけでやっていく予定だったらしいが、バリエーションが少なすぎて止めたらしい。この改変は良かったと思うよ。キャッチーな生き物は野生のほうが多いから。結果には繋がらなかったけど。
僕はスタートダッシュでお布施をしたのと、周年ガチャに課金しただけだ。石油王でも課金兵でもない。だからあまり強い事は言えない。
でも寂しいのだ。せっかく育てたキャラクター達が、永遠に消えて無くなる瞬間。同時にこの寂しさが好きなのだ。この瞬間を看取る事こそ、醍醐味の一つと言ってもいい。
諸行無常。終わるからこそものぐるおしけれ。
スクショした立ち絵とスチルを見る。小さくて可愛いフッコ。姉のスズキや妹のセイゴとの絡みは良かった。普段あんまり感情を見せない子が、姉妹の前では素直に笑うんだ。同じ画像はネットにいくらでも転がっているが、僕のフッコはここにしかいない。もうこの子には永遠に会えない。電子の海に消えてった。
Re、つまり、作り直して再リリースする可能性は無いだろう。絵が良ければその可能性もあったが、彼女達に会うことは2度とない。1つの世界が消え去ったとはそういう意味だ。この先の展開は望めない。
世界の終わりは物悲しい。それでも僕はソシャゲを止めない。それでこそ僕はソシャゲを止めない。
ただのデータに、形に残らない物に金や労力を掛けるのはくだらないと、したり顔で言う奴もいる。掛けた金も時間も労力も消えると。
だから何だ。思い出は残る。
海外旅行に行ったりコンサートに参加するのと何が違う。あれだって形に残らない。移動だけで飛行機代が何十万も掛かるのは無駄じゃないのか? 家にいればタダなのに。そう言っている奴をどう思う? 高い店に行かなくても、ホテルなんて寝るだけだからカプセルホテルでいいじゃないか。食事なんてコンビニやチェーン店でいいだろう? ライブやコンサートなんて行かなくても、音楽なんて動画サイトで無料で聴けるだろ? それと同レベルのくだらない話だ。自分の尺度でしか物事を測れない愚者の戯言だ。何が楽しいかなんて人それぞれでしかない。
強いキャラクターを引けばゲームが快適になる。好きなキャラクターを引けばゲームがより楽しくなる。それはさすがに理解できるだろう。
ガチャを回す為に回してるんじゃない。ゲームを有利に進めるためにガチャを回すんだ。ゲームを楽しむために引くんだ。その後のゲーム体験を良くするための投資なのだ。
快適さや楽しい時間のために金を払う。クオリティの高い経験をする為に金を払う。旅行だろうと食事だろうとゲームだろうと、そこになんの違いもありゃしない。どれも同じだ。人生の余暇を楽しい思い出で埋める行為だ。そして僕は旅行よりも食事よりも、ソシャゲのほうが楽しいのだ。
そう思うから、僕はソシャゲを止めない。
ソーシャルゲーム。略してソシャゲ。ソーシャルとは社会のことで、交流要素のあるゲームという意味だ。ソロプレイ不可、故に通信環境が必要となり、スマホでプレイするのが基本だ。最近のゲームはマルチ対応もよくあるが、基本は一人プレイ。買い切りのゲームと違うのは金の払い方と、サービスが終了すると遊べなくなる点だ。
買い切りゲームは最初に代金を支払い、サービス終了後もマルチができなくなるだけでソロプレイは遊べることが多い。
ソーシャルゲームは基本プレイが無料で通信環境が必須となり、ガチャ(アイテムやキャラクターをランダムに手に入れるガチャポン。当然、良いものは排出率が低い)などの課金要素があるものが大半で、サービス終了後は何もできなくなる。イラストやオフライン版や素材集を売ることも稀にあるが、大半はスッパリと終わって二度とプレイできなくなる。
ジャンルは多種多様だ。オーソドックスなコマンドRPGから、シミュレーション、カードゲーム、パズル、アクション、リズム、クイズ、タワーディフェンス、テーブルゲーム、ローグライク、FPS、TPS、レース、箱庭、育成。他にも色々あるだろう。ゲームジャンルの数だけあると言っても過言ではない。いくつもの会社からいくつものタイトルが出ている。
総数なんてわからないが、ヒットして何年も続くのもあれば、ほんの数カ月でサービスが終了するのもある。ひどいと数日なんてのもあったが、あれは余所のゲームをシステムから素材までまるまるパクってきていたからだ。そんなのが極稀ではなくたまにあるのが、この界隈の怖いところ。大ヒットしてるゲームでも明らかに何かのパクりなんてよくあるけども。あれとかあれとか。
基本はガチャを引いてキャラクターや装備を当て、ミッションやクエストをクリアしてキャラクターを成長させ、他のユーザーと対戦したり、より上位のミッションをクリアするのが目的だ。そうじゃないゲームもあるが大半はそうだ。
僕はそんなソシャゲにどハマリしている。スマホは常に5台持ち。林檎が1つに泥4つ。仕事柄あまり外出はしないのだけど、外でもポータブルWiFiがあれば通信費はさほど掛からない。ソーラーのモバイルバッテリーも複数常備している。加えて、ブラウザやダウンロード版でできるのはパソコンでもプレイする。週回数が物を言うゲームならマクロの出番だ。規約違反? 駄目ならBANすればいい。されてないなら使っていいのだ。まあ最近のは自動周回も当たり前の機能だけどね。
手を出す基準も様々だ。設定、絵、話題性、ゲーム性。面白そうだと思ったらとりあえずプレイしてみて、好みじゃなければ辞めるなんてのも基本無料だからできることだ。だからこそハズレも数多いけど。
ゲームの外でもやることはある。普段過疎っている掲示板で急加速したゲームのスレがあれば通知が来るようにしている。恐らく祭だからだ。祭というのはインターネット用語で、基本的にはネガティブな意味で大きな話題になることだが、ソーシャルゲームの場合はバグや不具合などでユーザーに有益な事態が起きることを指す場合が多い。例えば、本来想定されていない手順で高難度クエストがクリアできてしまうだとか、課金要素が全員に適応されてしまうだとか、課金アイテムも含むアイテムが無限に手に入るようなものがある。
このうち、問題になりやすいのは3番目だ。1はバグ修正やロールバック(バグが起きる前までゲーム内時間を戻すこと)で対応できるし、2番目はある意味で公平。しかし3番目は致命的だ。不公平だし、課金する人の意欲も下がる。だから運営会社も重い処罰をすることがある。
運営会社次第だが、バグ利用は全力で、ただし課金周りのバグは手を出さない。これが最も得をしつつ生き残る傾向にある。BANされる時はされるけど、期限BANで済むことも多い。
僕はソシャゲのストーリーを飛ばす。新規シナリオが実装されたという事は、新規ステージも実装されたという事だ。早く進めたいから読んでいる時間が勿体無い。暇な時にでもまとめて一気見すれば、そのほうがブツ切りにならなくていい。
僕はキャラクターを基本的に性能で取る。イラストは重視しない。使い途と汎用性。合格点に届かないならスルーだ。あくまでガチャを回すかどうかの基準であり、手に入ったなら可能な限り全員育てるけれど。
廃課金もしない。スタートダッシュか、余程の人権キャラか、美味しい確定ガチャだけだ。経済事情もあるが、手を出す先が多いので仕方ない。トータルで見れば課金している方だけど。
フレンドとは交流しない。僕はソシャゲで交流したことがほぼ無い。チャットでの発言がミッションに含まれる時と、攻略に必須な場合だけだ。
だからフレンドとは武器である。始めたばかりの頃はフレンドを利用するのが鉄板だし、キャラクターを借りることで戦略が広がる。同キャラ編成できるゲームは尚更だ。フレンドとはデイリーミッションである。連れ回して挨拶を押してポイントを貯めるための装置だ。フレンドとはNPCである。硬いレイドボスを殴るためにある。フレンドとはATMである。ギルドアイテムの代金を払ってくれる。
交流必須のゲームはそもそもやらない。いちいち交流していたら時間がいくらあっても足りない。だからフレンドなど面倒なだけだ。そんな時間があれば育成するさ。
この僕、祖師谷升太は何が楽しくてゲームしているのかと、人に訊かれたことがある。
答えは二つ。シンプルな答えだ。
育成と終焉。
昔から何かを育てるのが好きだった。アサガオの鉢植え、ザリガニやオタマジャクシに始まり、魚や虫など色々飼ったし今も飼っている。何かを育てるというのは一種の娯楽である。そして、手間をかけた生き物が子を成し、死んでいく姿。そこには諸行無常の寂寥感と生命力の発露がある。僕はそれが好きだった。
だから何年も生きるやつは飼わない。長生きするのは基本的に大きな生き物だし、大きいのを少数飼うよりも、たくさんを育てるほうが好きだった。累代飼育も簡単だし、何代も続けて飼育をしていると、血統そのものに愛着も湧く。
買い切りのゲームも昔はよくやっていた。それもレベルを上げるのが一番楽しかった。キャラクターがモリモリ強化されていくのが楽しい。最初はズタボロにされたボスを、レベルで殴りつけるのは快感だった。そんなゲームが好きなのだ。僕にとってゲームの終わりとはエンディングを見ることではない。キャラクターのレベルやステータスをカンストさせることを言う。レベル上げが好きなのではなく、キャラクターを成長させるのが好きなのだ。似ているようで少し違う。
終焉。物語の最後の瞬間を見届けることが、物悲しさを感じて好きなのだ。積み上げたものが崩れ落ちる瞬間。世界の砕け散る瞬間。それを看取ることが最高のエンターテイメントだ。買い切りゲームにはそれが無い。強いて言えばローグライクか。でもあれは失敗したらロストするだけだ。
だから、キャラクターが随時追加されていき、タイトルすら粗造乱造されるソシャゲというのは相性が良かった。買い切りと違って、気に入らなければすぐにやめられることだし。
そして、強化したキャラクターの大暴れを眺めるのが趣味だった。
ソシャゲの極意は、如何に手間を掛けて手間を減らすかだと思っている。強化し、進化し、昇格し、合成し、スキルを上げて組み合わせて、少しでも楽にクリアするのが目的だ。キャラクターが育ち、強くなっていく姿。僕はそういうことに快感を覚える。
最終コンテンツまで行ったソシャゲはやることのない虚無か、同じことをやり続けるハムスターの回し車のどちらかになるので、如何に自動化するかが肝心だ。スタミナが回復したら指定のクエストを回るようにマクロを組む。やがてエンドコンテンツに辿り着き、そこすらも楽勝になり、成長要素も限界になる。すると別のゲームに注力するようになり……ダラダラと最新コンテンツだけこなして、やがて終わりを迎える時が来る。待ちに待った瞬間だ。これが意外と来ないことも多いのだけど。
終わりを見届けたゲームの数を数えると10や20ではない。100とか200でもきかない。もちろんいくつかは大ヒットした大作もあるが、ほとんどは3年ももたない短命のゲームだった。いや、3年ももてばいいほうだ。
全てが印象深い訳じゃない。駄作だってある。飽きてやらなくなったゲームもあるし、バグでやれなくなったゲームもあるし、BANされたゲームもある。特に育成が制限されるゲームは自ら止めた。
キャラクターには何の罪も無い。微課金の範囲だが、そのキャラクターの最大限を引き出してあげるのが僕の役目だ。その為ならwikiもバグも使う。掲示版も見る。
プレイしているゲームの数と、プレイ画面のスクショをSNSに上げたら謎にバズったこともあったっけ。ソシャゲに人生捧げてるとかなんとか。まあ、それで生きているのだからいいのだけど。
それでいい。いや、それがいい。無為に終わることを好むなら、自分もそうであるべきだ。でも、その為には積み上げなければ嘘になる。
今日も今日とて元気にハムる。ハムった素材でキャラを育てる。いつか来る終わりを見る為に。それが僕の生き甲斐なのだ。
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