第3話 クーリングオフを要求する!

『伝説級の良い品が当たったの~』


「クーリングオフで、同等品男性物お願いします」


『ガチャにクーリングオフは無いのじゃよ』


「僕にこれを着ろと!?」


『旅の恥はかき捨てじゃよ』


 プププと笑うお爺さん。


「はぁ~。それで僕の貰えるスキルって何なんですか?」


 僕は防具のことは諦めて異世界スキルの確認をする。


『その画面を一度閉じて、ステータス画面を出すのじゃ』


 目の前の半透明ディスプレイを操作してステータス画面を表示させた。


 ソウマ カジヤマ

 種族:人属 年齢:16 職業:学生

 Lv:---

 HP:40

 MP:60

 STR:14

 DEX:20

 VIT:12

 AGI:18

 INT:26

 MND:22

 LUK:18

 スキル:---

 特殊スキル:複製Lv1

 称号:異世界転移者

 加護:異世界転移者の加護


 特殊スキル欄に複製とあった。複製となると色々思いつくが………。


「複製ってどんなスキルですか?」


『さて、それでは頑張って魔物を討伐してくれ。さらばじゃ!』


「あーッ! 待った、待った! 他にも確認したいことがあるんですよ!」


 僕が異世界で生きて行く上でのルール。お爺さんの声は僕に幾つか教えた後に『頑張りや~』とリフレインしながらフェードアウトして行った。


 真っ白な世界に色々な色が浮かんでくる。


 気付けば僕は広い草原に一人立っていた。





 草原の向こうに街が見える。


 ステータス画面を開いて再度確認する。ページをめくると持ち物欄が表示された。


 持ち物

 空間収納袋(小)、ブロードソード、皮の盾、普通のマント、銀貨37枚、お米一俵、4人用ドームテント、ブーツ(AGI+10%)、全回復ポーション5本、3泊4日どこでも泊まれ宿泊券、神装鎧月兎


 ……神装鎧月兎って……やはり鎧なのか?


 どう見てもバニーガールだろ!


 作った奴だれだ! 責任者呼んでこい!


 何はともあれ武具を装備する。いやいやバニーガールは着ないよ!


 学生服に剣と盾、ブーツを履き替え、マントを羽織る。ローファーは腰に結わいた見た目が布袋の、空間収納袋に入れた。


 ……うん。微妙に中二ってるな……。


 草原にいるのは僕一人だ。あの時クラスで何人か「異世界転移」と言っていた。他の人はもう街に行ってるのかな?


 ……まぁ仲のいい友達って訳ではないけどね。





 草原を歩き、街に向かう僕の足元からニュルッと何かが飛んでくる。慌てて避けたけど、足元がもつれて地面に尻餅をついた。


 何?


 何何?


 そちらを見ると大きさ50センチぐらいの半透明に透けて向こうの草原が見えるゲル状の生き物?


 更にソイツはその体からニュルッとゲル状の弾を僕の方に飛ばしてくる。


「ヒャッ!」


 お尻を浮かして右に避ける。


 慌てて立ち上がり逃げようとするが……。


 僕の周りには複数のゲル状生物に囲まれていた。そしてニュルニュルとゆっくり近付いてくる。


 もしかして、スライム?


 あの有名ゲームみたいに可愛い目も口も無いけど。


「……終わった」


 異世界に来てまだ数分……。


 戦闘経験どころか喧嘩もした事が無い僕が異世界の魔物に取り囲まれてしまったのだ……。


 いきなり終わった感満載だ!


 アレは使わないってついさっきまで思っていたのに……。


 異世界の現実は厳しい……。


「はぁ~」と僕は溜め息を吐く。命のためだ、やるしかない。


「着装、月兎!」


 僕の体が光輝く。


 あ~あ、やっちゃったよ。


 変態兎野郎確定の着装にガックシと肩を落とす。


 誰かに見られたら通報確実案件だ!


 可愛いウサギの長耳付きカチューシャ。


 白いモフモフを胸元に付けた赤いレオタードに白いニーソ。


 お尻の白いフワフワ尻尾がピクピク動く。


 踵の高い小さなリボンが付いたハイヒールは意外にも安定感がある。


 首元に付いた、青い宝石付きチョーカーの背中にある2本の長いリボンが風に靡く。


 異世界に来て変態男のレッテルを貼られちゃうの?


 赤いレオタードにモッコリした股間……ん?


 股間に……無いですよ?


 僕の息子は消えましたよ?


「無〜いーーッ! ーーッ!」


 僕の息子は無くなったけど、僕には大きな胸ができていた!


 な、何が……?

 

 心なしか、声も女の子?


 風に靡いたのは長い銀髪。


 異世界の草原に立っていたのは、銀髪美女のバニーガールだった?



 訳が分からなくパニックっていると、周囲にいるスライム達が無数のゲル状の弾を飛ばしてきた。


 不味い!


 絶対に当たる!


 僕は体を丸めて被弾に備える。


 ビュビュンビュン!


 背中のリボンが高速で動き全てのゲル弾を払い落とした。


 ……す、凄い……これがアクティブディフェンス?


 それに構わず無数のスライムが跳躍して僕に降り掛かってくる!


 ど、どうしよう!


 た、確か……。


「反重力磁場ッ!」


 両手のカフスに備わる反重力磁場。


 僕は両手を地面に向けて反重力磁場を展開した。


 ドグゥオン!!!


 スライム達も、草花も、大地も、僕も、反重力磁場の力により物凄い勢いで空高く舞い上がった。空へ空へと舞い上がった。


「ヒャ~~~~~~!」


 反重力磁場の力が消えフワッと浮いた無重力感。


 周りには花や草や土やスライム達が僕と同じくフワッと浮いている。下を見るとかなりの高度まで上がっていた。


 そして……落ちる?


 落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる!


 周りの花や草はふわふわ落ちるが、土やスライム達や僕は重力にひかれドンドン落ちる!


 ヒャ~~~ッ!


 え、ええとアレアレアレーーーッ!


「イ、イオンクラフトーーーッ!」


 ハイヒールに備わるイオンクラフト。


 ハイヒールからビーフェルドブラウン効果(魔力版?)によって発生するイオン風が生じて僕の体を浮かせようとするが、既に落下している自由落下運動のエネルギーに負けている。


「か、慣性制御!」


 更に僕は慣性制御システムを同時に使い、自由落下運動の慣性モーメントを打ち消す。


 何とか落下を中和して空に浮くが、ハイヒールのイオン風のみでは上半身が安定せず、腕を振ってバランスを取るがうまくいかない。


 微量な反重力磁場をスラスター代わりに展開し姿勢制御をして状態が漸く安定した。


「ふ~~ぅ」


 大きく息を吐いて辺りを見渡す。土やスライム達は地上に落ちていき、周りには風に舞う花や草が空に揺れていた。


 ピコピコピコピコ。


 何だ?


 異空間にあるステータスボードからだ?ステータス表示を出して見てみたらレベルが12まで上がっていた。


 スライム達が地面に落ちて死んだ為、僕の経験値になったみたいだった。





 空に浮かぶ花びらと赤いバニーガール。


 眼下には緑の森がどこまでも広がり、遠くには碧い氷河を湛えた神々の頂きが見える。


 空には黒い大きな月が妖しく光り、近代的な高層ビル等はどこにもない。


「ここが、異世界……」


 TS問題などはスッカリ忘れ、素晴らしく美しい世界に、僕は魅了されていた。


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異世界うさぎ紀行 異世界ウサギ紀行 ー 最強鎧は誰のモノ?君のモノ?僕のモノ?みんなモノだった? 花咲一樹 @k1sue3113214

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