風呂の良さを語る日常
「いただきます」
「い…だ…ます」
お昼休みに美夜子さんと一緒にお弁当を食べる。とはいっても机を付けて仲良く一緒にという訳でも無いので、お互い縦に並んで黒板の方を向いてボッチ飯だ。
ずっとこのくらいの距離感でやってきた。
美香は女子グループと食べている。
背中に気配を感じながら俺は自分で作ったお弁当を食べていく。
美夜子さんがどんなお弁当かは知らない。
「ごちそうさまでした」
「ご…さま…した」
後ろから小さな声でごちそうさまが聞こえてくる。今日も同時に食べ終わったようだ。時間配分も完璧だな。
ここからがお昼休みの本番!楽しい時間だ!
最近では美夜子さんと美香くらいしか俺の風呂話を聞いてくれないんだよな。
よし!風呂の良さを語るとしよう!
椅子に横向きに座り半身で美夜子さんに話しかける。
「また話を聞いてくれるか?小説はまだ読み終わって無いから感想はまた後になるけど、今日もまた風呂の話になるんだけど…」
コクコクと頷いてくれたので話を続ける。
「コレを見てよ!写真撮ってきたんだ!お風呂の蓋を改造したブックスタンドなんだけどさ!あっ、先に失敗した方から見せるね」
スマホを操作して画像を見せる。
読書好きの美夜子さんなら興味を持ってくれるだろう。
「これ最初は木で作ったんだよ、そしたらカビるわ反り返るわで失敗だったの!それで百均のワイヤーネットとアクリル板を組み合わせてやっと出来たのがコレ!」
おおっ!と声には出さないが目を見開き驚いているようだ。
そうだろ、そうだろ。我ながら良い物が出来たと思っている。
「どう?いいでしょ?風呂に入りながら小説が読めるなんていいでしょ?ただ、ページをめくるのに手が濡れているのが最大の敵なんだよね。だから手を拭けるように乾いたタオルを置くスペースを作ったの」
パチパチと小さく拍手をしてくれて俺のテンションも爆上がりだ。
本当に話していて楽しい。
「長風呂になった時用にドリンクホルダーも付けてさ。これで完璧と思ったの、でも湿気には勝てなかったんだよね。何日かしたら本がシワシワになっちゃって…」
美夜子さんもショボンとするの可愛い。
「でもさ、読んでたのが海賊の船長が冒険をする本だったの!だからそのシワシワも船長と一緒に冒険をして、海風でシワシワになった感じがしてなんか嬉しかったんだよね」
ウンウンと頷いて、この気持ち分かってくれるか。
「たけど本が痛むのはやっぱり悲しいから、だからさ!お風呂専用の本を買ったんだ!凄いんだよコレ見て、ページが防水加工されていて濡れてもびくともしないんだよ!」
「風呂や温泉を題材にした短編集といった感じなんだけど、その中のデジール・ウォンセンの話が好きでね…」
「もっと買い集めて風呂場を水上図書館にしたいんだよね」
はい、プレゼン終わり。
「ん?どうした?」
美夜子さんが手をギュッと握るのは何か言いたい時だ。
入学当初はこんな内気な感じではなかったんだよな。
匂いをいじられてから、だよな?
それと猫背になったのも…
「ぁの、ぉふろに入れば、私もそれ読めるの?」
おぉ、風呂に入りたくなったか。
風呂で本が読めるとか本好きにはたまらないだろ!
「読めるぞ!ただ読み過ぎてのぼせないようにする事」
「ぅん」
キーン♪コーン♪カーン♪コーン♪
おい、もうお昼休み終わりかよ!
まだ話し足りない。
そうだ最後に聞いておくか。
「そうだ、昨日はラベンダーの入浴剤にしたんだよね。今日は何にしようか迷っているんだよ。美夜子さんが決めてくれないかな?」
「ぇっ、私?ぇと、石鹸の匂ぃとか、ぁる?」
「石鹸か、サボンやムスク系の入浴剤だな。そうだな、今日はそれにしようか」
「ぅん♡」
よし!今日は石鹸の匂いの入浴剤にしよう!
俺の入浴剤を選ぶのがそんなに楽しかったのだろうか?
美夜子さんの笑顔が見れて良かったよ。
過去一番の笑顔にドキッとしてしまったのは内緒だ。
俺の部屋の風呂に誰かの髪の毛がある日常~学年一の汚少女が美少女になって懐いて来たのだが俺何かしましたか? 優香猫 @kaneyu8313
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