愛おしい血

佐一 きち

第1話

寒くなってくると毎年同じニュースが流れる。


"今年も血抜きの死体が発見されました"


低く心地よい鼻濁音で男性キャスターが言う。

まだ11月も中盤というのに今月だけで4回目の報道だった。

あまりの多さに近年SNSでは"吸血鬼探し"をする執拗な若者で溢れいるが、誰もそのしっぽを掴めてない。


「あの子じゃない?」


そんな中、学校中の生徒から吸血鬼の疑いをかけられている少女がいる。


雲凪 茶南くもなぎ さなだ。

肩までのストレートな黒髪で、常に背筋はピンとしている。彼女は昔から美人だと有名だった。


だが、小さい頃は高嶺の花として扱われていた彼女は今や化け物扱い。


今日も放課後に1人、図書室で本を読んでいる彼女に、3名の女生徒がわざと聞こえるようにおしゃべりをしていた。


「ほら!今本読んでる子、吸血鬼って噂だよ」

「吸血鬼の話って本当なの?ガチでいるの?」


私はその言葉に対して、もっと火がつくよう木を焚べる。

「いるいる。しかも人間と思えないほどのビボーだよ」


「なんで知ってんの?」


「前見ちゃったんだよね」


「え!?それまじ?ヤバくない?」


興奮し、2人の声は段々と大きくなっていく。

そして私の思惑通りの言葉を言った。


「それってもしかして雲凪さんだったり?笑」


「あー…そうそう似てたかも。」


雲凪がその言葉に反応し、一瞬目が合った。


「ヤバ。」

仕掛けるくせに度胸のない2人は声を潜め、今度はヒソヒソと話し出した。


「今こっち見てきてたよね??」

「私ら殺されるんじゃね笑笑」

「雲凪さんガチの吸血鬼説やばい笑」

「ねぇ聞いてきなよ」と私は言った。

「いやあんたが聞いてきてよ!笑」


ドンッと背中を押され、私は雲凪の椅子にぶつかってしまう。

雲凪の肩に夕焼け色のさらりとした長い髪が触れた。


「…!」

雲凪は驚き、丸い目でこっちを見てきた。


…まさか押されるとは。

話したくはないんだけどなぁ。


「えーー…と…」


私は言葉に詰まってしまった。

横目で友達の方を見ると、笑いながらバタバタと図書館から出て行った。


はぁ……。


2人きりになってしまって、仕方なく私はハッキリとした声で話しかけた。


私「雲凪さんさ、吸血鬼って噂されてるよ。

美人だもんね〜」

雲凪「………」


嫌味を言ったというのに雲凪の私を見る目は柔らかかった。そして雲凪は言う。








「吸血鬼はあなたでしょ?」








続く

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