独裁のアリエス

藤井悟将

始動編 第一話 力を授けし者

 ある寒い日の夜、アルバイトから帰った、この物語の主人公、神川和哉かみかわかずやは驚いた。ワンルームの殺風景な部屋の中央に置かれたテーブルの上に、自分が持っているスマートフォンのような携帯端末が置かれていた。疑いつつも端末の画面に触れると、「力を望む者か」という意味深なメッセージが表示された。和哉がメッセージに困惑していると、部屋のインターホンを鳴らす音が聞こえた。そこに現れたのは……


 黒髪のツインテールで、瞳の色は銀色。顔立ちは幼く見える。服装は黒のブレザーで、スカートの丈は膝下まで長くなっているようだ。この謎の少女、スピカ・ウォールズは開口一番にこう言った。

「今すぐに端末を持って、ここから離れましょう。でないと取り返しのつかないことになるわ」


「一体どういうことなんだ!?説明してくれ!!」

「ごめんなさい。説明している時間はないの!端末だけでも持って出てきて」

「端末っていうのはもしかしてあれのことか!」

 和哉はテーブルの中央に置かれた携帯端末を手に取り、無意識に起動しようとするが、今は反応が無い。上着を着てから、貴重品と端末を持ち、外に出たところでスピカが言った。

「向こうから人が来る。反対側の階段を使いましょう」

 築十数年の六階建てのマンションの五階に二人は居るのだが、確かに数人の足音が聞こえてくる。和哉はスピカの後に続いて階段を降りていく。一階まで降りたところで、五階のあたりを見ると、数人の戦闘服の様な服を着た、武装した集団がフロアの照明に照らされていた。

「アイツらは一体何者なんだ?」

「今は単なる敵だと理解していれば十分よ」


 しばらく進んだ二人がたどり着いたのは、テニスコート一面分ほどの広さがある公園だった。二人共ここまではほとんど走って来た為、息が少し切れていた。しばらく休んだ後、和哉がスピカに恐る恐る《おそるおそる》質問した。

「そろそろアイツらの正体とか、君の名前とかを教えて欲しいんだけど……」

「そうね。まず、私の名前は……」

 スピカが名乗ろうとした矢先、数メートル向こうから、四輪駆動の戦車の様な乗り物がやって来た。停止すると、スピーカーの様な部分から男の声が飛んで来た。


『今日の月は綺麗だな、スピカ・ウォールズ。そしてどこぞの馬の骨よ。例の端末を渡して貰おうか』


「それは出来ない相談ね。力づくでもということなんでしょうけど」

「こちらとしても穏便に済ませたいところだが、どうしてもと言うなら致し方あるまいよ」

「端末は渡さない!この人にも手出しはさせない!!」

「なら、二人共消え去るがいい!!!」

 戦車の上方のミサイルランチャーから、次々とミサイルが発射される。だがその時。


『ディープフリージング!!』


 スピカが魔法の様な名前を叫ぶと、発射されたミサイルが全て瞬時に凍りつき、地面に落下した。その光景を見ても、男は余裕の態度を崩さない。

「この程度なら想定の範囲内だ。だが、これならどうだ?」

 男が戦車の何らかの装置を作動させたようだが、特に変化は見られない。

「……?故障かしら?なら、反撃といきましょうか」


『サンダーストライク!!』


 スピカが叫ぶと、戦車の上空からゴオオオンという轟音ごうおんと共に巨大な雷が落下したかのように見えたのだが、戦車には傷一つ付いていなかった。さすがにスピカも驚いたようで……

「何故無傷なの!?まさかその機体には実験段階であるはずの……」

「そう、そのまさかだよ。この機体はな、先日ロールアウトしたばかりの、試作型エーテリウムジャマー搭載機なんだよ」

 そこで和哉は素朴な疑問をスピカにぶつけた。

「エーテリウムジャマーというのは一体なんなんだ?」

「簡単に言えば私が使った術……現代錬金術を無力化する技術よ」

「それじゃあ今は大ピンチ中の大ピンチってことじゃないか?」

「いえ、まだ策はあるわ」

 スピカが、持っていた携帯端末を起動すると、端末からなんと全身が黒い日本刀が

 現れた。

「錬金術が効かないのなら、剣術で勝負するだけよ!」

 黒い日本刀を手にしたスピカは猛然と距離を詰めていき、その刹那。


『軍式剣術 二式 落崩!!」


 戦車の上方へ飛び上がった後に叩きつける技を繰り出すが、あまり効果が無かったようだ。

 再び男の声が飛んでくる。

「どうした?もうネタ切れか?ならもう降参しちまえよ」

「錬金術も剣術も通用しないなんて……一体どうすれば……」

 その光景を見ていた和哉は、部屋にあったあの端末のことを思い出す。

「例の端末ってこれのことか?ならこの中に何かヒントは無いのか?」

 和哉は端末を操作しようとするが、何も反応が無い。

「クソッ、じゃああのメッセージは一体何だったんだ!?俺はこのまま何もできないのか!?」

 その時、端末にメッセージが表示された。

『力を望む者か?望むならば問いに答えよ』

「望むさ!力をくれるなら何だってやってやる!!」

『良かろう。ここに契約は果たされた。なんじの行く末に幸あらんことを……』



 端末のメッセージの表示が終わると、端末から、スピカの時と同様に武器が現れた。

 だが、スピカのものとは違う、白い日本刀だった。和哉がそれを手にすると、端末にまた意味深なメッセージが表示された。


『能力の第一封印解除。研鑽けんさんを積むことを推奨』



      始動編 第二話へ続く





 



 




















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