第1章-4 朝靄の渓谷
渓谷には朝霧が重く垂れ込めていた。
炭焼き職人の
黒く煤けた
そして足元には、粗末だが丈夫そうな仕立ての革サンダル。
なんの気なしに、ジャーピタは谷底を見下ろした。
川岸から川の流れに突き出している岩影に、見慣れないものが引っかかっているのを見つけた。
谷底に降りるための道などない。
ジャーピタは斜面を選び、木の根元を次々とS字旋回するようにして下っていった。
渓流の近くまで来ると、岩陰の異物がどうやら人間らしいことを認めた。
慌てて駆け寄り、川からその身体を引き上げた。
体は骨ばっていて軽い。
しかし、よく歩いて鍛えられた四肢を持つ苦行者のようだった。
その顔は、困惑した表情を浮かべ、すがるように助けを求める目をしていた。
ジャーピタは自分の丸太小屋へその行者を担ぎ込み、ジュートで編んだ自分の
そして炉に薪をくべた。
二昼夜の間、行者は一度も起きることはなかった。
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三日目の早朝。
森の中で、
けたたましく鳴いているミヤマカケスがいる。
その鳴き声に揺すられたのか、行者の身体がわずかに動いた。
まぶたが開く。
混濁した様子もなく、行者特有の刺すような鋭い警戒心も伺えない。
ただ、今の状況だけを把握しようと必死になっているように見えた。
(?)
(何語?)
Dv
慧は、上体をゆっくり起こす。
Uṭh
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【脚注】
◯Carpai
現代のパキスタン、インドのパンジャーブ州等の民家で、今も使われるベッド。
◯羊毛織の毛布
およそ2600年前の古代インドに、ウール・ブランケットが存在したのだろうか?
以下、そのプルーフ(Proof)。
話し手は、ブッダ。
【DN02 沙門果経 中戒 調度品】
Dīgha Nikāya 02
Sīlakkhandhavaggapāḷi
>Sāmaññaphalasuttaṃ
>Majjhimasīlaṃ
“yathā vā paneke bhonto samaṇabrāhmaṇā saddhādeyyāni bhojanāni bhuñjitvā te evarūpaṃ uccāsayanamahāsayanaṃ anuyuttā viharanti. seyyathidaṃ — āsandiṃ pallaṅkaṃ gonakaṃ cittakaṃ paṭikaṃ paṭalikaṃ tūlikaṃ vikatikaṃ uddalomiṃ ekantalomiṃ kaṭṭissaṃ koseyyaṃ kuttakaṃ hatthattharaṃ assattharaṃ rathattharaṃ ajinappaveṇiṃ kadalimigapavarapaccattharaṇaṃ sauttaracchadaṃ ubhatolohitakūpadhānaṃ iti vā iti evarūpā uccāsayanamahāsayanā paṭivirato hoti. idampissa hoti sīlasmiṃ.
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<和訳>
『比丘たちよ、沙門やバラモンたちの中には、信仰によって授かった食物を食べて生きながらえていながら、このような高くて豪華な調度品に夢中になっている者がいる。
すなわち、
高い寝床、寝椅子、長椅子、敷物、刺繍を施した毛布、羊毛の毛布、花柄の毛布、綿の掛け布団、絹の掛け布団、片側に毛のある毛布、両側に毛のある毛布、ラグ・敷物、絹のシーツ、絨毯、象の敷物、馬の敷物、戦車の敷物、カモシカの皮の敷物、最高級の鹿皮の敷物、上部に天蓋のあるソファ、上下に赤い枕のある寝床など。
しかし、彼はそのような高くて豪華な調度品を慎む。これもまた彼の美徳の一部である』
◯「立てっかや?」
この部分のみ、ガンダーラ山間部の僻地の飾らない素朴な雰囲気を出すため、ガンダーラ語(ガンダーラ地方、プラークリット音)を使用。パーリ語表現は以下。
“Uṭṭhātuṁ sakkosi?”
ガンダーラ語の語尾にある va の部分は親近感のある口語表現で、日本語では「立てる?大丈夫?」のような相手を気遣うときの感じ。
また、現インドネシア語の語尾 ya, nya に継承されている点も興味深い。
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