ただいま魔法レンタル中!
岡山みこと
第1話 無謀な駆け出し冒険者01
これは三日間の記憶。
私の夢だった冒険者の、たった三日間の。
--------------------------------
朝なのに薄暗い室内。
ダンジョン都市アイギスの町外れにある冒険者御用達の店。
その一番奥で俺は本を読んでいた。
「ごっしゅじーーんさまーー」
長い尻尾をパタパタと揺らしながら元気に手を振る少女。
ひそひそ話さえ難しい狭い店。
カウンターの奥に座る俺と、背にある沢山の小棚。
あとは椅子が数脚あるばかり。
そんな店で大声で呼ぶ必要なんて無い。
だが、こいつはなぜか静かにしてほしいという願いを聞いてくれない。
「10秒後にお客様ですよ―」
メイド服を着た猫科獣人の娘。
年齢は人間で言うと14歳くらいと言っていたか。
茶色と白のふわふわの尻尾と、頭に生えた大きな耳。
顔の他の箇所は人と変わらないが、よく見ると両頬に細いヒゲが何本か生えている。
その獣人が、せっかく閉めていた分厚いカーテンを勝手に次々と開け、開店準備を進める。
彼女の敏感な耳は表通りから、この店がある脇道に入る足音を聞き分けられるのだ。
「足取りからして2人!若者ですね!」
「ということはルーキーか?」
てててと歩いてきた獣娘のエーリャ。
カウンターを飛び越え、主人である俺の左一歩奥にしゃんと立つ。
どうやらここが彼女なりの立ち位置らしい。
「今日のお客様はどんな方ですかね!」
「ルーキーは世間知らずで、よくわからん買い物をしていくからな」
「なら教えてあげればいいのに」
背中の少女は、きっと唇を尖らせて不満顔だろう。
俺はため息を深く一つして、何十回目かのルールを教える。
「店のルール第1は?」
「お客様に商品のおすすめはしてはいけません!」
腰に手を当て、胸を張っている。
「耳にタコさんとイカさんが行列でダンス踊ってるほど聞き飽きましたよ」
ならそれを守りなさい。
俺が少し頭痛を覚えたのと同時に、店のドアが静かに開いた。
チリンチリン、という軽やかな音。
「ようこそMagus Loan(マグズローン)へ!」
鈴の音と良く似たエーリャの声が冒険者を迎えた。
第1のお客様『無謀なルーキー』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます