もし俺の言葉がラブコメディであったなら

平針雲雀

第1話 運命

小さい頃、母親に読んでもらった『みにくいアヒルの子』

俺は子供ながらその絵本が嫌いだった。

みにくいアヒルの子が実はキレイな白鳥になってこの物語は終わる……けど一緒に産まれたアヒルはアヒルのままなのだ……そう、それは生まれた時に決まっている運命。

そして俺……麻倉鶩(あさくらあひる)の運命も決まっているのだ。


1

三月八日は俺の中学生最後の日、卒業式だ。

時間帯は午前十一時、もう卒業式は終わり大嫌いな先生とお別れし、いざ俺は三年間思いを寄せる美少女、襟川絵梨奈を呼び止め、愛の告白をしようとしていた。

……だが何故だ……今の状況は想定外だ。

なぜ俺と襟川を円で囲むように生徒達が群がっている。

「おい、アヒルの奴、襟川さんに告るらしいぞ」

「麻倉くん絵梨奈こと好きだったんだー」

ちらほら野次馬達が面白げに野次をとばしながら動画や写真を撮る生徒達。

「何これ公開処刑?」

「ウケるw」

とクスクスと円の野次馬の女子達が俺を見て笑っている。

ふんっ!笑いたければ笑えばいい……俺は玉砕する気なんて無いのだ!なにせ俺と襟川は運命的な縁で結ばれている。

それにこれは自慢じゃないが、なんと俺は襟川とはクラスの中では一番仲がいい、しかも、何回も遊びに行っているのだ……複数人でだが。

だがしかし!一回ニ人きりでデートもした事もある……ちょっと失敗したけど

だが、それを踏まえてもいける気がした。と言うか襟川は卒業して東京の高校に行く。だから思いを伝えるならこれが最後のチャンス。大丈夫だ麻倉鶩。

お前は変な名前でもそこそこ顔はいいし、襟川とお似合いだと親友は言ってくれた。

こんな野次馬に負けずに勇気を出すのだ‼︎

俺は自分にいい聞かせ、深く深呼吸をし、襟川をみて大きな声で

「襟川絵梨奈さん好きです‼︎僕と付き合って──

「ごめんなさい‼︎」

…………え、……え。

「ごめんなさい、麻倉くんは、友達としか見れないの……だからその……ごめんなさい。」

襟川の発言で一瞬周りが静かになっり数秒後ドッと笑が起きた。

「アヒルが振られたーw」

「しかもちょっと喰い気味にww」

野次馬どもが一斉に騒ぎ出す。

虚しくなるシャッター音と周りから爆笑の渦が

巻き込まれていく……俺はショック何も考えられずにいた。

俺……フラれたのか……

こうして俺、麻倉鶩の初めての告白は見事終わったのである。


麻倉鶩の告白が終わり野次馬達は満足して俺に励ましの言葉や面白かったと礼をいいバラけて行った。

襟川周りには友達が集まってきて、襟川を囲んで話をしていた……暫くして襟川達も学校を去って行った。

まだ呆然としていた俺の前に一人のクラスメイトが話しかけてきた。

「アヒル君大丈夫かぁ?」

そのクラスメイトは俺より少し背が高く好青年の彼は親友の渡和久人だった。

「おぉー和久人……見てたか……おれ襟川に振られたよ」

「いやー見てたよ、喰い気味にフラれてたな。なんか遠くからみたらサヨナラ満塁ホームランを打たれたピッチャー見たいに立ち尽くしてたね。」

「それならホームランバッターが良かったよ。──それより途中見ないと思ってたら何処にいたんだよー」

「ごめん、ごめん。さっき後輩の子に告白されちゃってて」

「おー良かったじゃん。で、返事はどうしたんよ?」

「勿論、キレイにお断りしたよ。俺は歳上好きだし。それに俺にはアヒルくんがいるしな‼︎」

と和久人は親指を立てながら笑顔で答える。

「……ホントお前が女だったら良かったのになぁ…」

と言うと和久人は嬉しそうに笑っていた。

「まぁー元気だせよ。愚痴を聞いてやるから一緒に帰ろうぜアヒル君。……そうだ帰りにコンビニよろう。俺が肉まん奢ってやるよ!」

そう和久人に言われ、俺は苦い思い出を残しながら学校を去るのであった。

2

学校から少し離れた所に公園がありその隣りにコンビニがあった。和久人は俺を公園に残し、コンビニに肉まんを買いに行ってくれた。

「はい肉まん。あとこれお茶。」

「ありがとう。すまんなお茶まで奢ってもらって。」

「なーに気にすんな!ほれほれ、ささと食べな。」

俺と和久人は公園のベンチに座り肉まんを食べる。

「しかし何でまたあんな大勢の前で告ってんの?」

和久人は肉まん食べながら聞いてきてた。

「俺にも訳わかんねーよ。襟川に告白をしようと彼女を呼び止めたら、襟川の友達がちょっと待ってろって、言われて暫く待っていたら。なんか襟川と数人友達が来て、ここで告白しろって言われて──それで、それに気がついた生徒達が面白半分で集まりだして、あれよあれよと気がついたらあんな事になってた。」

「うわーマジかよ。親達もいたのに、めちゃくちゃ最悪じゃん。」

「しかも襟川の友達一人と待ってるとき、その子に聞いたんだけど。なんか襟川の友達が言うには俺の前に三人。襟川に告白して全て振ったらしい。」

「つまりそれは、アヒル君は流れ作業で振られたってこと?」

「おい言い方気をつけて。」

「あ、ごめん。……しかもくい気味と公開処刑のおまけ付き」

「和久人くん⁈傷だらけの俺を海に沈める気?」

「ごめん今のは軽い冗談。──まぁしかし襟川も良く好かれますな。けど襟川って彼氏がいるって噂、聞かないよな?」

「そうだなーなんか親が厳しいから彼氏を作らないってのは聞いたかな……」

「え、そうなの?じゃぁ元々無理じゃね?」

「……そうなるな。でもいけると思ったんだよ異性で一番仲がいい自覚あったし……」

俺はそう言ったあと深いため息をついた。

「まーそんなに気を落とすなよアヒル君。女なんて星の数ほどいるさ。知ってるかい、愛知県は女性の方が多いらしいぜ。」

「女性率多くてもな。俺、和久人みたいにモテないしなー」

「僻むな僻むなアヒル君」

和久人は苦笑いをしながら励ました後、今度は空気を変えるためにゴホン‼︎とわざとらしく咳をする。

「とにかく、俺達は四月から高校生活が待っている。俺達が通う櫻原高校は制服がカワイイし、学生寮もあるから地方から可愛い子が沢山来るらしいぞ‼︎」

櫻原高校は俺たちの中学から割と近いからよく学生を見かける、確かに和久人言っていることも一理あった。

「アヒル君男前だから高校に入ったらモテるよ。

人には三回くらいモテ期が来るらしいから、もしかしたら、その日が近いかも。」

和久人がテンプレみたいなことを言いだした。

そんなもんあるなら来て欲しいよ。まぁー急にモテ出しても困るけどなぁ……

「それにアヒル君特殊能力あるだろう。あの、なんだけパ、パ、パラセーリング?」

「それはハワイとかで遊ぶやつ。俺のはパドリングだパドリング。」

「そうそうそれそれ。本当凄いよなその能力。その能力使えば上手く女の子と仲良くなれるだろうよ。

和久人が言う通り。俺には少し変わった能力と言うか特技がある。和久人には恥ずかしくて言えないが正式名称は【記憶を超越するパドリング(ドキュメンタリーフィルム)】だ。中二のとき俺が名付けた。我ながらいいセンスだ‼︎。

記憶を超越するパドリング。それは顔と声が確認出来れば、いつその人に出会ったとか、そのとき言った言葉やシュツエーションが鮮明に蘇る能力だ。

簡単な例を言えば俺が沖縄でコンビニに行き何気なく店員さんの声と顔を認識する。そして、五年後今度は北海道のコンビニに行き買い物をするとする。

そしてその店員さんの顔と声を確認したとき、俺の能力が発動する。五年前に沖縄で会った、コンビニの店員さん何だと知ることができる。それが俺の能力だ。

調べたら一種のフォトグラフィックメモリーみたいな物らしい。まー和久人は凄いと言ってくれるが、ただ会ったことがある人がわかるって言うだけの話だ。突然俺が店員さんに「沖縄のコンビニで働いてましたよね?」ってきいても気持ち悪いと思われるだけだしこの能力には問題点も多い。

まずテレビや映画などの映像系は適応されない。当然声がでない写真も然りだ。

あと直接会ったとしても帽子、サングラスなどを身に付けてるのもダメだった。帽子は髪が生えてるかわからないし、サングラスは瞳が見えないからコレもダメ。あと容姿の一番の天敵はマスクだ。

マスクは顔が半分隠れるし、声もこもるから認識ができなかった。

もう二、三点欠点をあげるなら、この能力は毎回接触している相手には能力が働かないこと、それと俺らの様な年代は声変わりや成長が早いから、これもあまり能力が働かない。

──つまりそれらを踏まえて、この能力は親しい人には全く効果は無いが初対面のとき顔と声とが確認できれば、初対面じゃないか判断できることしか、あんまり意味のない能力だ。

果たしてこの能力で俺は充実した高校生活してくれるのか疑問だ。


「よし、肉まん食べたしそろそろ帰るか、アヒル君、この後用事があるんだろう?」

「そうなんだよ、これから母さんの再婚相手とその家族に会ってくる。」

「うわーフラれて心が落ち込んでいるのに大変だねー」

「まーそうだけど、再婚相手の人、料理人で店持ってるから美味い物が食べれたらそれでいいよ。」

「……料理人ね。」

和久人の顔が少し暗くなるのがわかった。

「何だよそんな暗い顔するなよ、俺は大丈夫だから。」

俺は和久人の腕をポンと軽く叩き笑って見せた

「……じゃあそろそろ行くわ。肉まんとお茶ありがとな。──今度会う時は入学式だな。」

「いやアヒル君、入学式まで俺に会わない気かよ‼︎」

それを聞いて和久人がすかさずツッコミを入れる

「冗談だよ!じゃあな気をつけて帰れよー!」

そう言って公園を出た。

和久人は本当にいい奴だ。落ち込んいる俺を励ましてくれるし、こんな俺にさえ気にかけてくれる。その気遣いが出来るからこそ和久人はモテるのだろう。

俺は和久人と別れたあと最寄りの駅を目指す。さっきも言ったように母親の再婚相手とその家族が待つ店に行くためだ。電車に乗って名古屋駅に行きそこから少し外れの方に店があるらしい。

母さんが再婚する相手は東雲大輔(しののめ だいすけ)と言う人だ。母さんと同い年で大輔さんにもまた子供がいる。

大輔さんの子供は三人で、俺の一つ歳が上の東雲愛華(あいか)という女の子と。俺と同い年の女の子、東雲志帆(しほ)。そして一番下で今年から小学生の男の子、東雲以月(いつき)の四人が新しく家族になる。母さん話しを聞くと志帆の誕生日は二月六日だから。二月二日の俺の方が早いので俺は姉と妹と弟が一度にできるわけだ。

顔は写真で見たけど志帆が金髪でいかつかった記憶しかない。これが俺の妹になるのかと少し動揺した。ちなみに長女の愛華は写真に写るのが嫌いでその写真には写ってなかった。俺も写真に写るのは嫌いだから気持ちはわかる。

母さんの再婚についてだが別に不満はない、むしろ喜ばしいことだ、実にめでたい!

ただ俺は一人っ子で育ち、半分おばあちゃんに育てられたアヒルの子なので多少は不安があった。

3

ここで少し俺の話をしよう。

俺の名前は麻倉鶩。

鶩と言う名前は父親がつけた。なんでも産まれた時の泣き声がアヒルの鳴き声に似ていたらしく鶩と言う名前になったらしい。実にいい加減な名の付け方だ。安直すぎる。だがそんないい加減なオヤジに文句を言う前にオヤジは病気で亡くなった。俺が三歳の時だった。だから俺はオヤジとの思い出はほとんど憶えてない。

オヤジが亡くなって俺は母さんとオヤジの母親、つまり俺のおばあちゃんと三人で暮らすことになる。

母さんは雑誌の編集の仕事をしているので家にいることが少なかった。なので俺はおばあちゃんに育てられた。

『いいかい鶩ちゃんお母さんは忙しいけど、おばあちゃんがいるからね。』

いつも気にかけてくれるおばあちゃんは優しかった。だけど躾を怠ることもなかった。

躾と言うか、多分大人なることを教えてくれたのだ。おばあちゃんは、この先俺が困らないように掃除、洗濯、料理を小さいうち教えておきたかったのだろう。

そのおかげで俺は家事全般にはできるようになった。

ばあちゃんの料理はどれも美味しかった。

ある日俺は一人でばあちゃんにカレーを作って振る舞った。

『まぁ鶩ちゃんが一人で作ったの。』

『おいしいよ、鶩ちゃん』

その時のことは今でも忘れられない、凄く嬉しかった。

そう言った経験があって俺は中学一年生の頃本気で料理人を目指そうと思った。……だが、その夢は自分から諦めた。

料理人の夢を諦めた理由はいくつかある──話しは少しずれるが小さい頃から醜いアヒルの子の物語が嫌いだった。醜いアヒルの子が本当は綺麗な白鳥だったという物語。だけど俺はただアヒルだ、醜いくいアヒルではなくただのアヒル。白鳥になりもしないアヒルのままなのだ。

ある日一つのその現実を知る転機がきた。俺は中学生ながら自分より才能がある奴が白鳥に変わる姿を見たとき俺はアヒルだと気付かされた。

そしてそれがきっかけで俺はある事件が起こす。和久人にも迷惑をかけた事件だった。

そしてその事件の数日後におばあちゃんが病気で亡くなった。

その出来事で俺はあるトラウマを抱えるようになる

そんな事件やいろんな人に迷惑かけた俺は反省し、料理人の夢を諦めることにした。

しかし、料理人の夢は諦めたが今でも料理はする。だがそれは自分が生きるために作っている。あの事件を境に他人に料理振る舞うのを嫌うようになってしまった。

おばあちゃんが亡くなり、夢を捨てた俺はその一年間本当に辛かった。しかしある運命的な出逢いがおきた。襟川絵梨奈(えりかわ えりな)との出逢いだった。


中学一年のときの一月に東京から引越してきた襟川絵梨奈に生徒達は騒然とした。

学校中がどよめくのも無理もない、学校に女神様が降臨したのだ。

何処ぞのアイドルグループのセンターを張れるほどの可愛さ。しかも性格もすこぶる良い。もはやミスパーフェクト!

そんな襟川絵梨奈のパーフェクト超人ぷっりに男子どもは打ちのめされ、終いにはファンクラブができたほどだった。……俺もファンクラブに入ろうと思ったが和久人に入ったら友だちを辞めると言われ、入るのを辞めた。

襟川絵梨奈。そんな彼女を初めて見た時、俺は一目惚れをしてしまう。

だがしかし、それは皆んなと同じタイミングで一目惚れしたのではなかった。

なぜなら俺は東京で一度彼女と出逢っていたからだ。

それは襟川が転校してくる五ヶ月前、俺は母さんの仕事の付き添いで東京に来ていた。母さんが仕事中に俺は武道館が見たいと思い、一人で観光していたとき、完全に道に迷ってしまった。携帯で母さんに電話しようとしたが、昨日充電を忘れたのと、行きの新幹線でゲームのやりすぎで充電が切れていた。

そんな絶望のまま千代田区内をぐるぐる回っていると、後ろから一人の同い年の女子に声をかけられる。それが襟川だった。

「あのーすみません、もしかして道に迷いましたか?」

後ろを向いたらそこには絶世の美少女が心配そうにこっちを見ていた。

俺はそのときあんまりにも襟川の可愛さにパニックになり過ぎて「ふぇ?」と変な声で返事をしてしまった……不覚にもこれが俺が襟川に一目惚れした瞬間だった。

「なんか困ってそうだったので……何処か行きたい場所とかありますか?」

「あ、……はい〇〇出版のビルに行きたいです。……わかりますか?」

「はいわかります。あーそこだったら、えーとよかったらそこまで一緒に行きましょう。」

そうして俺は襟川に連れられ母親がいるビルへと向かった。本当に自分が情けなく恥ずかしかった。

例えるなら親鳥の後ろを歩くアヒルのように襟川について行く。

ビルにつき、ロビー前には母さんがいた。そこで母さんに襟川の前でめちゃくちゃ叱られた。

「助かりました。ありがとうございました。」

俺と母さんは感謝の気持ちで頭をさげると

「いえいえ、良かったですね。じゃあ私はこれで失礼します。」

「あの良かったらお名前と御住所をお聞きしたいのですが。」

と母さんが言うと

「いえ大丈夫です……名を名乗るようなことしてませんので。」

そう言って襟川は去っていた。

なんて素敵な子なんだ。そしてかわいい……

こうして俺は襟川のことを好きなってしまった──

余談だが襟川に助けてもらって以来俺は道で困っている人を助けるようになった。

むろん名を名乗るようなことしてないを言いたいためでは決して無い。……絶対にない。

俺は名古屋に帰っても助けてもらった子のことが頭から離れられなくなっていた。恋は病とはよくいったものだ。完全に襟川に恋をしていた。本気で逢える当てもないないのに東京に本気で行こうとさえ思った。

だが月日が経ち再び襟川と再開するのだった。

襟川を見て能力を発動する前にわかり、能力で確信した。間違いない彼女だ東京で助けてくれた恩人だ。

俺は驚きよりも嬉しさが勝っていた──これは運命だと思った。

襟川とは、一年生はクラスが違ったが二年になり同じクラスなる事ができた。

しかも最大のチャンスは麻倉と襟川で隣りの席になれたことが大分大きかった。隣り同士ってこともあり日直などの登板系は襟川と一緒になることが多かった。

俺は麻倉という苗字を凄く感謝した──ありがとうご先祖様。

襟川は多分あの東京の出来事を覚えて無いのだろう。話をしていても何処かで見たことがあるとは話は一切無かった。俺もそのことは気持ち悪いと思われるから黙っていた。

次第に襟川と打ち解けあい仲良くなり異性の中では俺が一番仲が良かったと自覚があった。

そんな月日を重ね、俺は卒業式の日に襟川に告白したのだった。

──それで知るとおり、結果は駄目だった。案外呆気ない終わりだったなぁー

……今になって襟川の事を思い返して考えるとアレは運命じゃなくて襟川に出会えたのは偶然で襟川の優しさにつけ込んで俺が勝手に恋をしてしまっただけの話だ。

まーしかたないさ、俺は頑張ったよ……それに襟川はまた東京に帰り、東京の高校にいく。だから……逆にこれでよかったのかも知れない……そうこれで良かったんだ……そう俺に言い聞かせ、涙を堪えた。──俺は駅へと向かった。

4

暫く歩くと神社があり、駅に行くにはこのまま神社を通って行く方が近かった。

それにまだ時間に余裕あるし、せっかくだから神社にお参りしようと思った。初詣になると沢山の人が集まる広い神社だがこの時間帯はチラホラ人がいる程度だった。

本殿に行ってみると前には参拝客がいた。

女子高生か。制服が俺が四月から通う櫻原高校の制服だった。

まー高校がすぐ近くだからおかしくはないか。俺はちょっと後ろで彼女の参拝が終わるのを待つことにした。

彼女はお札を入れ、二泊一礼をして願いごとを言う。──までは、よかった──

「神様‼︎今日私は失恋をしました。今は悲しいけど次の恋がしたいです。今年のこそ彼氏が欲しいです。なので神様。どうか、どうか私に運命の人と巡り合わせてください。──お願いします‼︎」と大きな声で、物凄く必死なお願いをしていた。

おい、マジかよ……なぜそんな大声で……

そんな欲まみれで、だだもれの願いを聞いてしまった俺の方が恥ずかしかった。

周りを見たが、どうやら運がいいのか悪いのか誰もいない。さっきまで人がいたのに……俺しか聞いてないようだ。

それに彼女は俺のことに気づいていない。これは非常にまずい。

俺が聞いていたとなれば彼女は恥ずかしめることになる。

なので此処は聞かなかったことにして俺はこの場から即座に離れようとした──が、彼女は参拝を終えると後ろを振り向く。

そしてやばいバレたっという顔をしている俺に気がつくのであった。

『あっ……』

と二人で同時に声がでた。

彼女はみるみるうちに顔が赤くなるのがわかる

「あ、あわわわーすみなせんデカい声でー。い、今のき、聞いてました?」

「……あ、いえ……」

俺はパニックって声が出なかった。

彼女も相当パニックっている

「な、なら良かった。あのもう私、参拝終わったので次どーぞ。──あははは」

と笑いながら俺に参拝を薦めながら後退りしながら逃げるように離れていくのだが。

「待って!そっちは危ない!」

「えっ……うわぁ‼︎」

彼女は本殿前の大きな窪みに気づかずに足をとられ、そのまま倒れそうになった。

だが、俺が咄嗟に彼女を掴みそのまま抱きしめて庇うように俺から先に窪みに落ちた。

「いてて……大丈夫ですか。」

「は、はい。大丈夫です。」

彼女は立ち上がり俺に手を差し伸べる。

俺は礼をいい彼女の手につかまり立ち上がる。どうやら二人とも怪我はしていないらしい。

「助けてくれて、ありがとうございます。私ちゃんと前見てなくって……」

「この窪み大晦日とかに火を焚く窪みで気をつけないと危ないんですよ。しかし良かったお互い怪我なくて。」

「でも、君の制服が……」

そう言われ自分の服を見てみると灰と落ち葉で汚れていた。

「ごめんなさい私のせいで、クリーニング代払います」

「あーいいですよ。もう着ないので。」

彼女の顔にハテナが書いてあったので俺は付け加える

「今日中学の卒業式だったんです。もう学ラン着ないのでだから気にしないでください。」

「そうなんですか……でも何かお礼を……」

なんか面倒くさいことになってきたな。彼女も何か誠意を見せたいのだろう。

「じゃあ、あそこの自販機でジュース奢ってください。それでこの件は終わりってことで。」

「そんなのでいいんですか?」

「はい大丈夫です。」と俺が頷くと

「じゃあそれで──ジュース奢らせてください」

と言って一緒に自販機に向かった。

自販機に向かう途中、俺は考えていた。

参拝で彼女が振り向いたとき、俺はパニックになって声が出なかったと言ったが。

それは俺の能力が発動して思い出したからだ。

俺は彼女にあったことがある。しかも二回もだ。──それは襟川見たいに助けもらったとかではなく間接的に何気なく出逢っている。そして彼女は泣いていた──

5

「はいこれ、ジュース」

「あ、ありがとうございます。」

本日二度目のゴチになる俺はベンチに座り彼女も隣りに座った。

チラッと彼女の方を見る。

襟川に負けず劣らずこの人も美人さんだ。しかもちょっと外国の雰囲気があるから、もしかしたらハーフかも知れない。櫻原高校の制服を着ているから歳上なのだろう。

……だけど、今思ったが能力意外で彼女のこと見たことあるぞ….…なんか最近みた気がするんだが………あ、思い出した!アレだ‼︎と俺がそんなことを考えていると。

「あのー改めて、さっきはありがとう。助かりました。良かったら名前を聞いても良いかな?」

と彼女が話しかけてきた。

キタ‼︎俺はその時を待っていた‼︎俺は満を是してあの言葉を言った。

「ふん。名を名乗るほど程ではありません。」

っとドヤ顔で俺は答えた。初めてこのセリフが言えた。

「えー何それwそれってマンガとか見るやつじゃんw

」彼女は笑いながら答える。

多分、と言うか絶対セリフを間違えた。彼女誠意で聞いているのに、俺の中二心が先走ってしまった。今の俺はめちゃくちゃ恥ずかしかった。

自分の顔が赤いのは見なくてもわかる。

「それで本当の名前は?」

「……小事情で言えないです。僕のことは例のあの人て呼んでください。ゼロでもいいですよ。」

俺は鶩と言う名前は嫌いだ。だから、あったばっかの女性に俺は名前を言いたくはなかった。

本名言うと大抵、バカにされるか、アヒルの由来で話しが長くなる。さっき恥かいたのに名前で上塗りをしたくは無かったから、まぁー結果オーライだ。

「ふふ何それ、君面白いね。教えてくれないなら…じゃあ君、私を助けてくれたからヒーロー君ね」

え、え……勝手に名前つけられてる……しかもヒーローって、ちょっとアレじゃない?

アヒルとヒーローを天秤に掛けたら恥ずかしさは若干ヒーローの方が勝ってないかぁ?いや平行かぁ?

……いやわからん。素直に名前を言っとけば良かったか──

「ヒーローくん。うん良い名前‼︎」

「はい…じゃあそれで…」

俺は彼女の可愛さに妥協した。

……しかし俺はただのアヒルなのに英雄って……大それた名前だ。まぁー彼女が満足ならそれでいいか。

「じゃあ次は私の名前だね。私の名前は……」

「俺知ってますよ。花井灯火(はない とうか)さんですよね、インフルエンサーの」

「え、私のこと知ってるの⁈」

「ええ、最近あなた動画観ました。バズったやつ。」

「へー観てくれたんだありがとう。」

花井灯火は動画配信で歌ってみたとか、コスプレをSNSに載せるとか色々やっているインフルエンサーだ。

その中で彼女の踊ってみたがバズりバズって、驚異の三百万再生されていた。

俺も最近、和久人に灯火が櫻原にいるからって見せてもらったのを思い出した。

その動画の反響で芸能事務所に所属しているってことも和久人に聞いていた。

「あの動画凄いですよね。キレキレのダンス。」

「そんなことないよー」

灯火さんはめちゃ嬉しそうだ。

「灯火さんて学生なのに芸能活動もしてるんですよね。」

「たまにねバイト感覚でやってるだけだよ。けどなんか知ってる人がいるって恥ずかしいなー」

「俺の中学でも有名人ですもん。でも芸能人が彼氏欲しいのか言って大丈夫だったんですか?」

……あ、しまった…

一瞬で二人の空間が凍りついた。彼女はビックリしている。

勢いでポロッと言ってしまった。

「……やっぱりさっきの聞こえてたんだね…。」

灯火さんは悲しそうにと恥ずかしそうに俺に聞いてきた。

「すいません偶然聞いてしまって…」

「き、気にしないでヒーロー君は全然悪くないよ。私があんな大きな声で願いごとを言ってるのが悪いから…」

「でも必死さは伝わりましたよ‼︎」

「全然フォローになってないよ!君。ちょくちょく心に塩塗るね。」

灯火さんはちょっと冗談ぽく怒って見せた。その後一呼吸おき彼女は話しを続ける。

「あのね…私さっき好きだった人に振られたんだ。」


「私ね、小さい頃ドイツに住んでいて、周りに馴染めなくて友達がいなかったの。でもある日、日本人の男の子がドイツで出逢って友達になってくれたんだ。」

彼女は何か思い出を噛みしめながら話を続ける。

「あの時は嬉しいかったな……同じ日本人だからってのもあるけど彼が救いだった。友達と言うか、歳が一つ上だからお兄ちゃん見たいな関係だったのかな……それくらい信頼してたの。それで何年かたって彼は日本に帰っていった。あの時はまだ、ちいちゃかったから凄く泣いておばあちゃんが困ってたなぁ……」

「……おばあちゃんと暮らしてたんですか?」

「そうだよ。おばあちゃんドイツ人でドイツ語しか話せないから最初は苦労したけど、逆に今は私のドイツ語より、おばあちゃんの日本語の方がうまいよ。」

すげーな。おばあちゃん。やはりおばあちゃんって偉大なんだなと俺は思った。

灯火さんの話しに戻す。

それで中学生になる前に日本に戻ってきて。

「高校に入ったら彼がいたの……背が大きくなってたけど、顔を見たら一目で彼だってわかった。

それは奇跡のような運命なんだって思った。」

俺は自分の過去に思い当たる節があったが黙って灯火さんの話しをきいた。

「運命だと思ったら私いってもたってもいれずに彼に声をかけたの。そした彼も覚えてた……私のこと覚えてくれてたんだって凄く嬉しいかった。

彼ね、日本にいても、成長していても何も変わらず私に優しかった……しだいに私は彼に惹かれて好きになっちゃたんだ…それで、この思いはもう止められなかったから今日告白したの。」

不意に俺の方を見る灯火さん

「結果はね、やっぱりダメだったんだ。彼、彼女がいたんだ。」

そう笑いながら俺に伝える彼女の顔は少し泣き顔になっていた。

マジか……彼女いんのかよと心の中で憤りを感じた。

「彼ね、彼女を大切にしたいんだって。それに私は友達にしか見えないって言われたよ。」

俺の心の奥の分部がキュッとなった…同じだ。俺が襟川に振られたように彼女は大好きな人に振られたんだ。

「それで落ち込みたくなかったから神社に言って神頼みしてたらヒーロー君に出会ったてわけ……」

「そうだたんですね。」

「ごめんね。暗い話しに付き合わせちゃって。」

「いえ、全然。むしろ辛い話しをさせてすいません。」

「……ありがとね。なんか君に話して良かった。もう彼のことなんか忘れて……次の……恋しなきゃ……」

彼女は言葉を詰まらせる。そして彼女の目から涙が流れた。

「あれ、何でだろう、大丈夫だど思ったのに、私……。」

「……あのこれ。使ってないんで良かったら使ってください……」

俺は卒業式だから泣くでしょって母さんに無理やり渡されたハンカチを渡す。

「ありがとう…ヒーロー君…」

そう言うって彼女はハンカチで涙を止めようとした。けどその好きな人との思い出はそれだけでは、涙が止まらなかった。

……その顔だ。あの時と同じだ……俺の能力で思いだした時と同じように彼女は泣いていた。


灯火さんを記憶したのは二回。

一回目は二年前の夏、和久人と常滑の海に行ったとき、すれ違ったときに記憶してる。誰かと会話していた。

「どうしよう……私のせいだ……」

記憶はこれだけだ。すれ違っただけだから無理もない。

俺の能力だと記憶したのは灯火さんとその話してる相手も記憶していると思うのだが、話し相手を思いだすなら顔と声の認証がないと、どうしても記憶がぼやけてしまう。だから灯火さんの話し相手の顔は思い出せなかった。

二回目は一年前、名古屋駅のカフェで記憶している。これも和久人とお茶をしている時に隣の席で灯花さんを記憶していた。──て言うか、どんだけ俺は和久人と一緒にいるんだ。

その記憶は灯火さんは誰かと電話で話していた。多分相手はお母さんだ。話の内容に

「いい加減にして……私はお母さんの道具じゃない。なんで……わかってくれないの……」

電話相手と喧嘩をしているのか、しだいに彼女は人の目を気にせずに今にみたいに泣いていた。

暫くたって通話が終わり彼女は涙をふいた後、店を出て行った。

以上。これが俺が能力でわかった灯火さんの記憶だ。記憶から憶測すると、何か凄く訳ありの彼女なのかもしれない。……と言うか俺は、女性の涙をみるのは苦手だ。どういった対応してら良いのか、わからないからだ。

モテる男はこういったシチュエーションが起きても、そつなくこなすのだろう。

そつなくこなせない俺は、灯火さんが泣き止むまで黙ってじっと待ていた。 

6

暫くして灯火さんは涙がおさまり、俺に話しかける

「ごめんね、泣いちゃって…」

「良いですよ。大丈夫ですか?」

うん、もう大丈夫、泣いてスッキリした。

「もうあの人ことは忘れる。それで次の恋をみつける。彼氏としたいこといっぱいあるしね。」

一瞬エロいことかな?と思ってしまったが、心に留めておく。けど何か面白そうだから話しを振ってみることにした。

「彼氏ができたらなんか、やってみたいこととかあるんですか?」

「あるよ!いっぱい。ねぇ君って二十四の願い事て知ってる?」

「いや、初耳です。なんすかそれ。」

「今ね、うちの高校で流行ってるおまじないみたいなもので、付き合い出したカップルが、お互いが二人で叶えたいお願いを二十三個考えて二十三ヶ月以内に全部達成するの。それで二十四個目は二人で自分達がまだ足らない物を書いてカップルになって二十四ヶ月の記念日にその願い達成するとそのカップル永遠に結ばれてるって言うおまじないがあるの。」

何だその陽キャラ全開のおまじないわ……

俺には眩ししすぎて回答に困る

「へーそんなおまじないがあるんですねー」

と曖昧な返事をし、続けて思ったことを言ってみる。

「でも二年も時間があるから簡単そうじゃないですか?」

「それがね、途中で願いごとで喧嘩したり、願いの条件が厳しくって別れちゃうってことがあって、わりと難しいんだって。」

まーお互いの願いを聞き入れないと先に進まないからどっちかが妥協しないと無理なんだろうな。

そう考えごとをしていると、灯火さんは俺に尋ねてきた。

「ねぇ、ヒーロー君は彼女はいるの?」

「え…急になんですか?」

「彼女いるなら君も彼女とやってみたら良いのかなって思って。」

「そんなの。いませんよ」

「へーモテそうなのに意外だね、好きな人はいないの?」

「………いました。」

「ん?いました?」

「はい。さっきまで好きな人いました。でも今日、僕も告白して振られたので、今はいません。」

そう言った後、俺は灯火さんに数時間前の話と襟川絵梨奈が好きだったことを打ち明けるのであった。


「じゃあなに?ヒーロー君も私と同じ日に振られたの?」

「そうなりますね。失恋したから神社に神頼みも一緒です。」

俺がそう答えたら灯火さんは笑っていた。

「なんだーヒーロー君も同じ失恋仲間かぁー早く言ってくれれば良かったのに」

「あなたが大泣きするからタイミングなくしたんっすよ。」

「ごめん、ごめん。でも大好きなのに恋が実らないのは悲しいね……」

「いや、なに灯火さんが落ち込んでるですか、また泣かないでくださいよ。」

「もう泣かないよ…。」

「まーこれは勘違いなんすよ。彼女と会ったのは運命とかじゃなく偶然で俺がそれを俺が運命って勘違いして好きになって振られただけなんですよ。」

俺はちょっと、つよがりながらちゃかした。

「……ヒーロー君。」

彼女は真剣な眼差しで俺の方を見る。

「これは私が思うことだけど君が彼女と最初に出会ったことや再会したのは偶然じゃないよ。」

「え……」

「ヒーロー君はきっと自分でその子と縁がなかったと決め付けてない?結果として失恋したとしても、彼女と過ごした楽しい思い出や彼女の好きって気持ちを全て偶然で片付けちゃ駄目だよ。あなたの思い出は運命にしてあげて。」

言葉が出なかった……それと同時に確信をつかれたた気がする。さっき留めた襟川への感情が一気に押し寄せてきた。

凄いな、この人…さっきまで泣いてたのに……

「………ありがとうございます。……そうします。」

そう言って俺は彼女に見えないように少し泣いた。

それを見た彼女は「はい」って言って、自分のハンカチをだし、俺に渡した。

なんだよ……ハンカチ持ってんのかよ……


「すいません…もう大丈夫です。」

今度は俺が泣いてしまった。女性の前で泣くなんて初めてだ。

「いいよ、スッキリした?」

「はいおかげさまで、次の、恋に行けそうです。」

「なら良かった。そうだね、次の恋探さなきゃだね。ヒーロー君は高校はどこにいくの?」

「櫻原です。」

「え、じゃぁ私と一緒じゃん、ならヒーロー君は私の後輩君になるってわけだ。」

「そうなりますね、よろしくです先輩。」

「こちらこそ。よろしくね、後輩君」

と灯火さんはさっきまで泣いていたとは思えないほどの笑顔をみせる。

「よし、ヒーロー君も泣き止んだし、じゃあ私そろそろ帰るね。ハンカチは学校同じなら、今度学校で返すよ。」

「はい。俺も洗って返します。」

灯火さんはベンチから立ち上がり、俺を見た。

「ヒーロー君。助けてくれてありがとう、そして話を聞いてくれてありがとう……じゃあまた学校でね‼︎」

「はいまた……」

彼女は俺に別れを告げ、歩き出したが、少し歩いて降り返って俺を見る。

「ヒーロー君元気だしなよ‼︎」

笑顔で手を振り、また前を向き歩き出した。

変わった人だったな……けどそれ以上に真っ直ぐな人だった。

『どうか私に運命の人と巡り合わせてください。』

彼女の願い事を思い出す。彼女は……灯火さんは優しい人だ。あんな願いまでして、好きな人のことを忘れようとしている。失恋してもまた次の恋に思いこがれている。そんな灯火さんの幸せを俺は……

「あの‼︎灯火さん!」

俺の声が届き彼女はふりむく

「俺じゃあ駄目ですか‼︎」

「え……」

「灯火さんがさっきの願い事……運命の人に出会いたいって願い事、俺じゃあ駄目ですか。」

驚く彼女。俺は灯火さんに近づきながら想いを伝える。

「初対面で何言ってんだって思うかもしれませんけど、俺、今灯火さんに出会えたことも運命だって思うんです。あったばかりの俺をあなたは傷ついているのに励ましてくれた。」

灯火さんの前に立ち全て思いをぶつける。

「そんな灯火さんの願いを全て叶えてやりたいって思ってしまたんです。この出会いも、たんなる偶然で片付けたくない。だから、俺が灯火さんの運命の人になります。灯火さん好きです。俺と付き合ってください。」

今度は途切れることなく、思いを伝えられた。

『また振られるのか?』……そんなのどうでも良かった。そのくらい後悔のない告白だった。


灯火さんはじっと俺の方を見ていた。

そして彼女は今の思いを俺に伝える。

「……いいよ。」

灯火さんはそう伝えると俺に笑顔を見せる

「ほ、ほんとですか?」

「うん。私もヒーロー君と出会いは偶然じゃなくて運命だって思いたい。話すにつれて、あなたのこともっと知りたいって思ってた。…だから私の願い叶えてくれる?」

「はい。もちろんです。」

「うん。じゃあ…改めてよろしくねヒーロー君。」

灯火さんはそう言って俺の手を握る。

やったー彼女ができた。数時間前に振られたばかりなのに本日二回目だけど告白して良かった。

歳上のしかも美人の彼女ができた。しかも同じ高校の先輩だぞ。これは俺の高校生活はいい生活になるじゃないか?

「ねーヒーロー君。」

浮かれる俺に灯火さんは話しかける。

「なんですか」

「これで彼氏になったんだから、そろそれ名前教えてくれない?」

「あ、すいません、俺自分の名前が嫌いなんです。」

「え、何で?」

「所謂キラキラネームってやつでして、名前にコンプレックスがあるのでヒーローのままでいいのかなって…。」

「そんな珍しい名前なの?」

「はい鶩っていいます。麻倉鶩です。」

名前を告げると灯火さんは驚いていた。

「麻倉鶩…。鶩君ってお母さんって麻倉朝美さん?」

「ええ。そうですげど…母さん知ってるですか?」

「私……愛華です。あなたのお母さんの再婚相手。東雲大輔の娘の東雲愛華です。」


7

運命とは残酷なのか……それとも、俺のはやとちりなのか、とにかく俺は………電車に乗っていた。

『次は名古屋、名古屋……』とアナウンスがなる。

あの告白のあと、俺は隣りにいる灯火さんこと東雲愛華と家族が待つレストランに向かっていた。

数分前…

「東雲愛華⁈??だって名前花井灯火じゃないんですか?」

「花井灯火は芸名。…本名だと何かと危ないし、お父さんがお店やってて、迷惑かかるから芸名にしてるんだ。」

「なぜ花井灯火?」

「花井は芸能仕事するときに事務所の社長が付けてくれて灯花は東雲の東と愛華の華をくっつけて、灯火。私が考えたの良い名前でしょ?」

「良い名前ですけど。何であった時本名言わなかったんですか?」

「言おうとしたよ。でも君が先に灯火って言われちゃったし、君も名前教えてくれなかったから、じゃあそれで良いかなって。」

それはそうだ……俺が『花井灯火さんですよね、インフルエンサーの』って言っちゃたのがダメだったな。

人の話を遮るのよく無かった……反省。

しかし、これから新しく家族になるお姉ちゃんに告白をしてしまったのだが、どうしたら良いんだ?

頭の中でこの告白は未確定、不成立、よってノーカウント、ノーカウントなんだーノーカン、ノーカンと聞こえるような気がした。

これは本当にノーカンなのか。俺は、彼女は俺のことを今どう思っているか素直に知りたかった。

そんなことを考えているまに目的地についてしまった。

「ここがお父さんのお店、もうみんな集まってる見たい。」

電車では一言も喋らなかった愛華がやっと喋ってくれた。

大輔さんの店は駅の居酒屋が並ぶ北東側にあるスペイン料理屋で、店の名前は【クレオメ セニョリータ ロザリータ】。オシャレな雰囲気のよいお店だった。

「ねぇ、鶩。さっきの出来事はお父さん達には内緒にしといてくれない。」

「わかった。俺と灯…愛華のことは内緒にしよう。じゃあ二人で入るのおかしいから、先に行ってくれ。後から俺も行く。」

「うん。わかった……ごめんね。」

そう言って愛華は店に入っていった。

俺は店を横切り路地を真っ直ぐいき、ぐるっと一周するような感じで五分後に店に入った。

店に入ると、母さんと大輔さんが話していて、その奥のテーブルに愛華がいた。

「こんにちわ、遅くなりました麻倉鶩です。」

と俺が挨拶すると、大柄の男性が迎えてくれた。東雲大輔さんである。

「おー鶩くん久しぶり、道に迷わなかったかい。ここの店ちょっとわかりにくい所にあるからごめんね。」

「いいえ、道には迷わなかったです。」

当然だが、あなたの娘さんに連れて来てもらいましたとは、言わなかった。

大輔さんとは母さんと大輔さんが結婚するにあたって、一度会ったことがある。

その時は三人とも緊張していて、変な食事会だった。

だが大輔さんはとても優しく俺を息子のように気にかけくれた。俺は父親を知らないから、たぶんいたらこんな感じなんだろうと思った。

そして、俺は母さんが幸せになるのならと、結婚を認めた。

大輔さんと話していると、後ろから母さんが話に入ってきた。

「鶩遅かったじゃない。みんな待ってたのよ……ってなにその制服‼︎真っ白じゃない‼︎」

「あーこれ……神社で転んで灰まみれになった。」

まー事実は事実だ。

「何やってんのもう。大事な日に。」

「まあまあ。朝美さん落ち着いて。鶩君怪我はない?」

「それなら大丈夫です。」

「なら良かった。……ほら鶩くんお腹空いたでしょ。料理だすから向こうの席に着いて。」

大輔さんまず愛華ちゃん達紹介しないと。

「あ、そうだった。じゃあ鶩くん娘達を紹介するね。」

大輔さんは俺を奥の広いテーブルに案内する。そこには愛華とおとなしそうな女の子、小さな男の子が席に座っていた。

「鶩君紹介するね。僕の子供達で、前にいるのが長女の愛華。鶩君の一つ上で、櫻原高校の今年二年生になるよ。」

「初めまして、長女の愛華です。よろしくお願いします。」

愛華は俺に向かってにこやかに笑顔を見せて挨拶をしてきた。

さすが芸能人、演技はお手のものかよ。

「それでテーブルに座っている子が次女の志帆。鶩君と同い年なんだけど誕生日的に鶩君の方がお兄さんになるんだ。あと志帆も今年櫻原高校に通うからよろしくね。」

東雲志帆。あの金髪ロングのイカつい写真の子……と思ったが今の志帆は髪は黒く短かった。

「志帆です。……よろしくお願いします。」

志帆は俺の方をじっとみて挨拶をした。

「そして一番下で今年小学生になる以月だ。」

以月は名前を呼ばれてちょっと高いテーブルから乗り出すように手を出して俺に挨拶をしてくれる。

「東雲以月です‼︎よろしくお願いします。アヒルにいちゃん。」

この子が一番かわいい。俺をもうお兄ちゃんって呼んでくれるなんて、なんていい弟なんだ。

東雲家が終わると今度は麻倉家の番だったが、麻倉鶩です。今年から高校生です。よろしくお願いします。と簡単に済ませた。

余談だが、俺の能力だと大輔さんは初対面の一回だけで、志帆、以月ともに初めて会う人達だったことを言っておく。だから愛華の一回目会った時の相手はこの三人では無かった。


「じゃあ紹介も終わったし、乾杯をしようかその前に

オードブル持ってくるね。」

大輔さんが厨房にいき食事の支度をしに行った。

スペイン料理になんて食べたこと無かったから俺はワクワクしていた。

「ねーアヒルにいちゃん。」

向かいの席の以月が話しかけてきた

「どうした?」

「何でアヒルにいちゃん服汚れてるの?」

「あーこれわねー魔物をやっつけて、泣き虫のお姫様を助けてこうなったんだよー」

「えーすげーアヒルにいちゃん。ヒーローだぁー」

我ながらいいスキンシップだと思っていたら、隣にいた愛華に左腹を思いきりつねられた。

声を上げそうだったが、何とか我慢した。

「凄いよねー以月。でも服汚して朝美さんに怒られたんだよーそれでちょっと泣いてたかもねー。」

「えーそうなの?アヒルにいちゃんダセー。」

と言いながら以月は笑っていた。

「いてーよお姉ちゃん。」

ボソッと皆んなに聞こえない声で愛華に文句を言う。

「お互い様よ。」

愛華は愛想笑いして誤魔化した。

「……あの鶩さん、」

今度は以月の隣りの志帆が話しかけてきた。

「はい何でしょう。」

「鶩さんはお…」

「はい皆んなお待たせ、まだ料理でてくるから焦らず食べてね。」

志帆の話しの途中に、大輔さんがオードブルを持ってきた。大輔さんがテーブルに何種類か軽めな物をテーブルに置いた。

「ごめん志帆ちゃん。なんだったかな。」

俺は志帆に悪いと思ってもう一度聞き直した。

「いえ、何でもないです。……良かったら、料理よそいます。」

「じゃぁお願いします。」

志帆のことは気になったが本人がいいなら、深追いはしなかった。

それより今は飯だ。いろいろありすぎて、腹がペコペコだ。だがまだ料理は、おわずけだった。

上座に母さんと大輔さんが並び乾杯のあいさつを始める。……はやく食べたい。

「じゃあ皆んな飲み物持って。」

大輔さんの合図で全員飲み物を持つ。

「皆んな今日はありがとう。ようやくこの日を迎えることができました。

子供達には僕達の結婚を受け入れてくれて感謝しかありません。お互い不慣れはあると思うけど、精一杯頑張っていきますので、宜しくお願いします。」

母さんと大輔さんが深く頭を下げ、俺達は小さく拍手をし、そして家族の幸せを願って皆んなで乾杯をした。

人生において、幸せなる瞬間はいくつも巡ってくるものだ。今母さんは大輔さんと結婚をすることで幸せのなのだろう。それは、まるで醜いアヒルの子が自分が白鳥だったと知った時のように幸せの瞬間を観ているかのようだった。


料理は大体食べ終わり、俺は大輔さんとの会話が弾んでいた。

「大輔さんの料理どれも美味しかったです。」

「なら良かった。スペイン料理ってあんまり馴染みのない料理だから、そう言ってもらえると嬉しいよ。」

ちょっと照れる大輔さん。

「鶩君って料理するんでしょ。いつでもレシピ教えるよ。」

「あ、はいありがとうございます。」

「へー鶩君って料理できるんだ。」

二人で話していると愛華が話しに割り込んできた。

「まーそれなりに」

「じゃあ新しく住む家に引っ越したら料理食べてみたいなー。」

「俺は味覚おかしいから辞めといた方が良いですよ。」

と露骨に嫌な顔をした。それを聞いた母さんが、

「こら鶩、引っ越したら一緒に住むだから愛華ちゃん達に料理作ってあげなさい。」

母さんが入ってきたらぶが悪るすぎる……

「……わかったよ、今度作るよ。」

「本当に⁈ありがとう。」

「……じゃあちょっとトイレ行ってくるわ。」

「あートイレなら奥行って右だよ。」

と大輔さんが教えくれた。


……俺はようをたしながら今日の出来事を思い出していた。襟川に振られ、愛華に告白をしたが、新しく家族になる相手が愛華だった……『俺が灯火さんの運命の人になります。灯火さん好きです。俺と付き合ってください』あの告白は紛れもない俺が愛華への好きな気持ちだ。だが「家族になる」となると話は別だ。俺達はこのまま親に黙って付き合っていいのか悩む。

トイレが出ると愛華が待っていた。

「こっち男子トイレだぞ。」

「知ってる。鶩を待ってたの。……ねー鶩。明日時間ある?」

「……あるよ、俺も話したいことがある。」

「じゃあ明日、あの話した場所で、十時に待ってる。」

「……わかった。」

俺の返事を聞くと何事も無かったように皆んなの所に戻って行った。

今、愛華は俺のことをどう思っているのだろう。俺は愛華の気持ちを知りたかった。


食事会が終わり東雲家と別れ俺と母さんは自宅に着いた。

俺はベッドに横たわり、今も悩んでいた。

……ちょっと愚痴を言わしてくれ。

せっかく彼女ができたのにこの仕打ちは堪えるわ。

そのまま愛華に出逢わなければ、弟を受け入れたのに、神様は残酷だな。

それで明日、俺は愛華の彼氏になるか、それとも愛華と家族になるか決めなければならない。

と言うか……もう結果はでているのかもな。

俺は人の優しさに慣れ慣れていない。人の優しさに気づいてようやく自分がちっぽけなんだと思う。

大輔さんは優しい人だ……出される料理を見ればわかる。事前に母さんに聞いていたんだろう俺が鶏肉を食べれないことを。

鶏肉の料理が全くなかったから多分鶏肉が食えなくなった経緯も知ってるんだろう。

でも彼は決して俺に言わないんだ。それが優しさだから。

そんな優しい人が母さんと結婚するなら、本当に良かったと思う。

そしてそれは、その幸せを俺なんかが壊しては駄目だと言うこと。

愛華を諦めろと頭をよぎる。

人の幸せを壊してまでの恋なのか……まだ間に合う、愛華を一人の姉として受けいれることが運命なのかも知れ……

『彼女と過ごした楽しい思い出や彼女の好きって気持ちを全て偶然で片付けちゃ駄目だよ。』

今度は愛華の言葉が脳内に浸入する。

『あなたの思い出は運命にしてあげて。』

…俺は考えるのやめてふて寝した。


8

次の日、俺は約束通り、昨日の場所に来た。

結論から言うともう結果は決めた。愛華にその思いを打ち明けようと思う。

ベンチの方に行くと愛華が立って待っていた。

「あ、きた。おはよう鶩。」

「おう。おはよう。ごめん待たせたな。」

「ううん。今きたとこだから大丈夫。」

その後ちょっと会話をし、一度お互い無言になったあと、愛華が本題を切り出した。

「ねー鶩。正直な気持ち鶩はどう思ってる?

二人のこれからのこと、鶩と考えたいんだ。

だから君の気持ちを教えて。」

俺の気持ち……俺は自分の今を伝える…

「俺な、昨日東雲家の皆んなに会って、皆んなの優しさに触れて、暖かさを知ったんだ。この人達だったら俺や母さんを受け入れてくれて、本当の家族になれるかもしれないって思ったんだ……

俺小さい頃から父親いなくて、ばあちゃんと三人で暮らしてたんだ。でも二年前にばあちゃんが死んで、母さんがより頑張ってる姿を俺は見てきたんだ。だから俺は母さんには幸せになって欲しい。

だから愛華──昨日告白は、無かったことにするなんてできる訳ない‼︎‼︎」

唐突な否定に驚く愛華。

けどそれが俺の答えだった。俺は続けて思いをぶち撒ける。

「愛華の好きって気持ちを無かった事にするなんて、できる訳ねーよ。親の幸せを願うことは良いことだ。けど、だからと言って、俺達が不幸せになるの絶対違う。昨日愛華に会って感じたんだ、あの少しの時間が愛おしいって、愛華の願いを叶えてやりたいって、だから告白したんだ。愛華、言ったよな、好きって気持ちを全て偶然で片付けちゃ駄目だって、だから俺は運命を受け入れる。人の幸せを観て、我慢してまで愛華を手放したくない。

だから…愛華。俺の彼女になってくれ。一緒に幸せになろう。」

昨日、今日で告白は三回目だがやっぱなれない。もっと言いたいことがあったけど、これが俺の本心だった。

愛華は俺の告白を聞いて顔を真っ赤にして、涙ぐんでいた。

そしてそのまま俺の方へと近づいて……いや、違う。猪のように俺目掛けて突っ込み抱きしめてきた。

「ぐふぇ」

「ごめん大丈夫?」

「大丈夫だけど、急にどうした?」

「だって嬉しいかったの。同じ気持ちだったから、鶩と一緒にいたいって思ってたから…」

ついに泣き出す愛華。

「また泣いてるのかよ」

と言って俺はまたハンカチを愛華に渡す。

「ありがとう。…ってこれ私のじゃん。」

「昨日家帰って速攻で洗濯したからな。」

「何だ私とおんなじじゃん今日返そうと思って。」

泣きながらポケットからハンカチを取り出す愛華。

「いいよ、それは持ってろよ。今度俺が泣いたら返してくれ。」

「うん、わかった。持ってる。」

そう言って愛華は泣きながら笑顔をみせてくれた。


「でもさぁ私最初振られたと思ったんだけど。怖かったんだけど?」

抱きしめている愛華が顔を上げ、ちょっとムスとして俺にキレきた。

「ごめんもっとストレートに言った方が良かったな。でも自分の気持ちちゃんと伝えたかったんだ。」

「ビックリしたけど、アヒルの気持ちちゃんと伝わったよ。なってくれるんでしょ彼氏に。」

「なるよ。そんで、カップルになって二十四の願いごとってやつやろうぜ!」

「うん!ありがとう。鶩、大好きだよ。」

こうしてめでたく、バカップルの誕生である。

周りに人はいないが、人がいたら朝っぱらからイチャイチャしやがってと思うのだろう。初彼女だからゆるしてくれ。

……そう言う会話のやりとりが数分続いて、ふと愛華はあること思いつく。

「あっそうだ、せっかくだから神様に報告しにい行こうよ。」

俺は頷いて、愛華の手を握り本殿へと向かった。

──「神様ありがとうございます。願いが叶いました。

これから大変だけど、二人で幸せになります。だから見守ってください。」

愛華と付き合った報告とは別に俺は神様に今の思い打ち明けてみる…

神様、両親は再婚して俺と愛華は姉弟になります。それはもう決められたことだけど、そんなの関係ない、姉だろうがなんだろが、俺は愛華を彼氏なることを決めました。

偶然じゃなく、勘違いでも無い紛れも無い運命を愛華と一緒に受け入れることを見守ってください。

……報告が終わり、俺と愛華は本殿をでて、お互いの顔をみる。

「よし…これで神様の報告も終わったね」

「そうだな。これからよろしくな愛華。」

「うん!改めてよろしくね。鶩。……そして、出会ってくれてありがとう運命の人。」

そう言って愛華は笑った。


第一話「運命」終わり。

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もし俺の言葉がラブコメディであったなら 平針雲雀 @Mirror0308nico0308

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