第4話:瓶底メガネと胸開きニットの不協和音

 週末の駅前広場。

 私は、リリム(偽名:リリ)は、コートの前を両手でギュッと掴んで、寒さと恥ずかしさに震えていた。


(だ、大丈夫……。まだコートを着てるから、誰にも見えてない……!)


 昨夜、私は一晩中考えた。

 なぜ前回、ケンジさんは私に手を出さなかったのか。

 答えは明白。「スウェットがダサすぎた」からだ。


 けれど、ケンジさんは私の顔(瓶底メガネ&三つ編み)を見て「写真通りだ」と安心し、デートに誘ってくれた。

 つまり、「地味な顔」は彼のストライクゾーンなのだ。


 結論――「顔はこのままで、服だけ限界まで露出する」。これこそが最適解!


 私は通販で届いたばかりの勝負服をコートの下に着込んでいる。

 胸元が大きくハート型にくり抜かれたニットと、歩くだけでお尻が見えそうな超ミニのタイトスカート。

 これなら、私の自慢のサキュバスボディをアピールしつつ、彼の好きな「地味子」のままでいられる。完璧だ。


「お待たせ、リリさん!」


 人混みからケンジさんが現れた。爽やかな笑顔だ。

 それを見て、私の罪悪感が少し疼く。

 ごめんなさい、ケンジさん。今日は貴方の理性を破壊して、ご飯(精気)をいただきます……!


「い、行きましょう。お店、予約してますから……」

「あ、うん。……なんか、顔赤くない? 大丈夫?」

「き、気のせいです!」


 ***


 予約していたのは、カーテンで仕切られた半個室のカフェダイニング。

 店員が去り、二人きりになった瞬間。

 ゴングは鳴った。


「ふぅ……部屋の中は暖かいですね」


 私は意を決して、立ち上がった。

 震える指でコートのボタンを外し、バサリと脱ぎ捨てる。


「あの、ケンジさん。今日の服……どう、ですか?」


 私は精一杯のキメ顔(ただし瓶底メガネ)で、胸を突き出した。


「――ッ!!?」


 ケンジさんが、息を呑む音が聞こえた。

 視線が私の胸元――ハート型に露出した谷間と、ムチムチの太ももに釘付けになる。

 やった。効いてる。

 地味な顔と、淫らな体のギャップ。これぞサキュバスの高等テクニック!


 さあ、理性を捨てて襲いかかってきて――!


「……着て」


「え?」


「リリさん、これ着て!!」


 ケンジさんは、脱いだばかりのコートをバッと拾い上げると、私に覆いかぶせてきた。

 その顔は、興奮ではなく、悲痛なほどに歪んでいた。


「ごめん……俺、プレッシャーかけてたかな……?」


「へ……?」


「俺に好かれようとして、こんな……君らしくない格好までさせて……!」


 ケンジさんの瞳が潤んでいる。

 え、なんで? 泣きそう?


「地味なリリさんが、こんなビッチ……いや、過激な服を着るなんて。無理してるに決まってる! こんなの君じゃない!」


「えっ、あ、いや、これは私の意思で……」


「いいんだ、何も言わなくていい! 行こう!」


「えっ、どこへ!?」


 ケンジさんは私の手を取り、強引に席を立たせた。

 会計を済ませ(ジュース一口も飲んでないのに!)、店を出る。


「ユニクロ……いや、もっと君に似合う服がある店に行こう。俺がプレゼントするから!」


「へぇぇぇっ!?」


 こうして私は、あろうことか「露出狂のような格好をしたまま、清楚服を買わされる」という、公開処刑のようなデートに連行されることになったのだった。


(ご飯……私のご飯がぁぁぁ……!!)


 空腹のサキュバスの悲鳴は、誰にも届かなかった。

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2026年1月4日 21:00

地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ @rikurina

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