まぶしい笑顔

あ〜ちゃん

一番初めに教室に入る理由

 朝、俺はクラスに2番目に入る。


 ドアを空けたときにあの横顔が見たいから。

 スッキリとした鼻梁に涼やかな目元。肩までの黒髪の頭にはいつも天使の輪ができていた。    


 あぁ、今日も拝もう。


 この日も俺はどうやら2番目だったようだ。


 遠慮がちに1年2組のドアを開けた。


 一条さんが手帳を見ていた。


 こちらをゆっくりと振り向いたが、また手帳を見た。


 って俺に興味なさそう……。


 そりゃそうか。

  

 一条葵が俺にあいさつしたらおかしいよな。


 っていうか、なんで一条さんはいつもクラスで一番初めに来るのだろうか。


 朝来た時に、担任にクラスの鍵をもらうため?その時に担任の木崎と話すため?木崎はまだ20代のサッカー部の副顧問で見た目も結構良い。


 「一条さんてさ、なんでいつも一番初めに来るの?」


 気がつけば俺はそう言ってた。


 一条さんは驚いた顔をしてこちらを凝視している。


 そんなに驚くことだろうか。


 もしかしてそんなに言えない事情があるのか?  


 「えっ、どうしてだろ…なんとなく早く来てるだけだけど…」


 「あっ、そうなんだ…、」


 目が泳いでいる一条さんを見て、俺は他に理由があると思った。こんなこと詮索するから俺はモテナイ。自分でそう思った。俺ってキモい?


 なんとなく気まずくなった。


 一条さんも気まずそうだった。 


 一条さんと普段話さないから、なんとなくぎこちなくなる。

  

 俺は「じゃあ」と誤魔化し、「うん」と会釈する一条さん。


 俺は席につき、合皮製の鞄から一限の教科書を取り出し、それを眺めた。


 まだこのとき、俺は全然、一条さんの気持ちに気づけていなかった。


 あの頃を振り返ると、本当に人生は不思議に満ちているなと今は思う。

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まぶしい笑顔 あ〜ちゃん @mitsugashiwa

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